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2 狼-ウルフ-

さてと…あの美少女から離れて森に来たは良いが…

これからどうすれば良いのかなぁ俺。

魔人なら、長生きは出来そうな感じするけど、暇過ぎる。余りにも暇過ぎる。

一度は死んだ身だが、新しい命を授かったここ世界でやり直したい気持ちがある。

しかし、魔人とはとても暇な生き物だ。

孤独。

ここまで暇だと強い人間を探したくなるものだ。

強い人間か…探してみるか?

そうだな、探そう。俺もこれからは魔人だ。

魔人っぽいことをやってみたい。


そう思って俺は美少女を送ったところとは違う街を探すことにした。

まず、ここが何処なのか知りたいし。

そうして俺は全速力で森を駆け抜けた。



◆◇◆◇◆



俺は愚かであった。

どこが愚かなんだって?予想以上に森が広すぎた。

全速力で真っ直ぐ走っても森を抜けられる気がしない。

どうしてだ?

どんな広い森だろうが魔人の俺がずっと走ってればいつしか森は抜けれると思ったのだが…


「お前、魔人の癖して迷子なのか?」


唐突。

俺は声をかけられた。

声が聞こえた方へと視線を移すと灰色の狼が立っていた。

狼?狼って…動物?


「ギヤァァァァァ!!!狼が喋ってるぅぅぅぅぅ!!!」

「うるせえ!俺は魔物だ。魔物と魔人が会話できるのは普通だろ?」

「えっ、そうなの?」


魔人は魔物と喋れる固有スキルを持ってるのか。

初めて知ったぜ。


「はぁ…お前ホント魔人か?魔物と喋れる事も知らないし、迷子になってるし…」


灰色の狼は俺を見下すように溜息を吐きながらそう言った。

そう言われるのに納得行かなかった俺は反論した。


「迷子になってねえよ。この森が広すぎるだけだ」

「はぁ…知らないなら仕方ないか。分かった、この森について教えてやる。この森は魔法が掛かっていて真っ直ぐ進んでも森から出られない真宵の森なんだ。こんな事も知らないなんてお前魔人じゃなかったら死んでるぞ」


狼は呆れながらそう言った。

マジ?ここの森って真っ直ぐ進んでも森から出られないってどうやって出るんだよ。


「どうやって森を出るんだ?」

「それはな……いや、一つ条件がある」

「は?なんだよ」

「俺のボスは今、病気を患ってるんだ。完治はしなくていいから少し回復魔法を掛けてくれると助かる」

「治すんじゃなくて回復魔法をかけるだけでいいのか??」

「あぁ、例えどんなに凄い魔人でも完治させることは不可能と言われてる病気だからな。ましてや、お前みたいな弱そうな魔人なら。だけど数日後に縄張り争いをする時だけ元気になってくれるだけで良いから回復魔法をかけてほしい」


なるほど。縄張り争いをするのにボスが居ないと負け試合になるのか。

しかしボスは絶賛病気中で戦えないし、その病は不治の病。

せめて完治は出来なくても少し楽にさせてあげるだけで良いと。

そういうことだね?


「お前みたいな魔人でも、狼よりは魔力が多いからな。少しは楽になってくれるはずだ…」

「分かった、やってやろうじゃないか。そのボスとやらに案内してくれ」

「分かった」


俺は狼に着いて行くと、大量の狼が居るとこに着いた。

すると赤色の狼に話しかけられた。


「おい、グレイ。何人間連れて来てんだよ?殺すぞ」

「おいおい、レッド冗談はやめてくれよ。どう見ても魔人だろオイ」

「あっ、ホントだ。魔人じゃねえか。弱そうだったから勘違いしたわ」


俺を連れてきた灰色の狼はグレイと呼ばれてるようだ。

赤色の狼のレッドは俺を馬鹿にしてるのか?

馬鹿にしてるわ。

俺は気を取り直して、灰色の狼に話を聞く。


「それで?お前らのボスはどこにいるんだ?」

「あぁ、あそこにいる」


グレイがそう言って場所を示そうとした時、レッドが横槍を入れてきた。


「おいグレイ。こんな魔人にボスを任せるのかよ?」

「どんな魔人でも魔人は魔人だ。狼の俺たちより魔力が強いだろ。魔人の回復魔法ならボスも少しは楽になってくれるはずだ」

「そうだけどよ……ーーーまぁ、そうだなそうだ。分かった、やるだけやってみろ。どうせボスは死ぬんだからな…」

「あぁ、それじゃあ魔人。こっちだ」


そうして、俺が連れてかれるとその先には黄色と緑が混じっている色をしたとても大きな狼が(うずくま)っていた。

まるでジン○ウガみたいだ。

おっと、某狩りゲーのモンスター名出したら怒られちゃうか。


「このデカイ狼を治すのか?」

「あぁ、頼む。回復魔法を掛けるだけで良いんだ」

「そういえば回復魔法ってなんだよ。まず魔法なんて使ったことないぞ」

「はあぁぁぁ!?」


狼はとても大きな声を張り上げ驚きを示す。

それほど驚くようなことなのだろうか。

でも、魔法を使ったことない魔人なんてただの頑丈な人だもんな。

いや咆哮で人殺せるからただの頑丈な人では無いが、そこはどうだっていい。


「……ちっ、分かったよ。狼で回復魔法を使えるやつ連れて来るから待ってろ」

「お、おう」


狼に回復魔法を使える奴と使えない奴が居るんだな。

どんな奴が来るんだろうなと思っていると、如何にも弱そうに歩く、老人狼が現れた。

いや、老狼(ろうろう)と言うべきなんだろうか。


「ほら、今からお前に回復魔法を教えてくれるヒルフさんだ。挨拶しとけよ」

「ヒルフさん初めまして、魔人です。回復魔法を教えてください!」

「儂が魔人に回復魔法を教える時が来るなんて全く思わなかったぞい」


ヒルフはそう言って回復魔法について教え始めた。


「まず最初に、回復魔法の詠唱はヒールですぞい」

「ヒール、か」

「はい、魔力を込めてヒールと唱えるとできますぞい」

「えっ、そうなの?それなら誰でも使えるんじゃないか?」

「魔力を持ってない人もいるんぞい」

「なるほど。でも、ヒルフさんが教える必要はあるんですか?普通にヒールと唱えればできるよと誰かが教えるだけで良いんじゃないの?」


それを言うと、ヒルフは難しそうな顔をして顔を地面へと俯かせた。

少し時間が経つとヒルフが顔を上げ口を開く。


「…それは理由があるぞい。その前に少し説明をするぞい。魔法の習得方法は三つあるんだぞい」

「三つか。結構多いもんだな」

「一つは魔導書(グリモワール)を読むことだぞい。魔導書(グリモワール)は数が少ない代わりに、読むだけで魔法を習得する凄い代物ぞい」


俺はそれを聞いてると、頭の中に言葉が思い浮かんできた。


【魔導書】(グリモワール)

魔物が稀にドロップしたり、迷宮の奥底の宝箱に潜んでたり、人間が作成する。

読むだけで魔法を習得できる本


な、何だ?説明文のようなものが頭に流れてきたが…?

まさか特定のワードは説明をしてくれる世界なのか?

それにしてもヒルフさんが説明してくれたものと全く変わらない説明だから全然嬉しくない。


「二つ目は魔法使いから魔法名と詠唱を聞かされることだぞい」

「どうして魔法使いから聞かないと無理なんだ?」

「理由は知らん。でもそうなんだぞい」

「そうなのか…それって相手の魔法を聞いたらパクれるってことか?」

「理論的にはできるぞい。だけど初めて使う魔法は感覚が分からないから殆どの場合使えないぞい」

「分かったよ」


これで、ヒルフから聞かなきゃいけない理由が分かったな。

でもそれだと魔法を覚えるのはキツイね。

いや、でも三つ目があるのか。

それに期待するしかねえな。

そうしてヒルフは三つ目の習得方法を教えてくれた。


「三つ目の習得方法は魔物を倒してレベルアップすることだぞい。一定までレベルアップすると頭の中に魔法名が聞こえてくるぞい」

「へぇ、この世界にはレベルの概念なんてあるのか」

「ちなみに人間がレベルとステータスを可視化するアイテムも作ってるからいつか見てみると良いぞい」

「マジ!?うっわ街に超行きてえー」


俺はテンションが上がって凄いはしゃいでると、大声で怒鳴られた。


「おい!ヒルフさんの前ではしゃいでんじゃねえよ」


誰に怒られたかと思ったらグレイだった。驚かせるなよ。


「ごめんごめん。ヒルフさん機嫌損ねた?」

「そんなことで怒らないぞい」

「ありがとな。まあつまり魔法使いから魔法名を教えてもらわないと魔法は使えないわけだな。わかったよ」

「そうだぞい。それじゃあ、もう回復魔法を使えるだろうからボスに使ってみるといいぞい」

「分かった。どうなるか分かんないけどやってみるよ!」


達也はボスの元へと走って行く。

ボスの元へと到着すると、ボスが目を開けていた。

ずっと寝ているわけではないのだな。

すると、ボスはゆっくりと口を開いた。


「魔人よ…何しに来た?」

「俺は、グレイに頼まれてあんたに回復魔法を掛けに来た」

「そうか…どうせ無駄だろう…俺にかかっている病気はヒルフが何回も回復魔法を掛けても治らなかった」

「俺だったらわかんないだろ?それじゃ行くぜ、ヒール」


ヒールを唱えるが、何も変化が無いように感じる。

まさか失敗したか?

いや、元々失敗するのが前提だ。それに俺には関係ないことだ。


すると、ボスが顔を空へと向けて咆哮した。


ボスの声は虚空高く轟く程大きいものだった。

あまりのうるささに「うっせ…」と俺は耳を塞ぎながら言った。


「はっはっは!愉快だ」

「ボスどうしたんですか?」


グレイがボスに尋ねる。


「この者に回復魔法を掛けられた途端、病気が治るだけでなく、体の痛み疲れが完璧に無くなっていったのだ」

「ということは、俺の回復魔法であんたを治せたってことか?」

「そうだ。礼を言うぞ魔人よ。良ければ名前を教えてくれ」

「名前か?名前か…タツヤだ。俺の名前はタツヤ」


名前は元の藤崎(ふじさき)達也(たつや)のまんまだ。

愛されなかった親に付けられた名前だが、それでも俺の名前は達也だけだからな。


「タツヤか、分かった。それじゃお礼として一つ魔法を教えてやろう」

「マジ?やったぜ。どんな魔法を教えてくれるんですか?」

「魔物の狼でしかもその一部にしか知られていない魔法だ。まさか魔人にこの魔法を教える時が来るとは思いもしなかった」


俺は「そうなのか」と答えた。

さっさと教えろ。


「魔法名は《ウルフ・エレメント》だ。これを使う時、火、水、風、地の4つどれかを想像しながら魔法を込めて発動する事が出来るぞ」

「それって難しそうですね」

「あぁ、最初はそう思うが慣れると一つで4つの属性を使える便利な魔法だ。その代わり、戦闘用の魔法だから日常では使えないからな」

「分かったよ。あと、この《ウルフ・エレメント》って4つ全てを想像して全て発動させることとかできんの?」

「それはできん。不可能だ。それにやる必要が皆無だしな」

「そっか。じゃあ、俺は帰るよ」


俺は踵を返し、ボスに背中を向けた。

ボスは俺に対して、「死ぬなよ」と言ってくれた。

それに俺は答えた。


「あぁ、気をつけるさ」


そう言って俺はグレイに顔を向けて、話しかけた。


「それじゃグレイ。この森からどうやれば抜けれるんだ?」

「あぁ、そんな約束もしてたな。分かった、すごい簡単な方法だ。魔力を込めてブームって言ってみろ」

「…?分かった、ブーム」


俺はブームと唱える。

すると、いきなり森の外にワープした。


「はえ?どうして森の外にいるんだ?」


良くわかんないが、出れたので良しとしようかな。

それじゃ強い人間探しなんてどうでもいいことやめて街に行って自分のステータス確認でもしようかな。



◆◇◆◇◆



「意外とスゲえなアイツ」


グレイが独り言を呟く。


「ボスの病気を治すとは思わなかった。あんな弱そうな魔人だし、この森から出るのに苦労させようかと悪巧みしていたのに、そんな気もなくなっちまった。逆に魔法まで教えちまったし」

「そうだな。グレイ、あんな変な魔人は初めて見た。それに俺もあの魔人に狼魔法を簡単に教えるとは思わなかった」

「そうですね、ボス」


そのあと狼の間で、一人の魔人が有名となったが、記憶力が優れない狼たちは数日に忘れてしまった。

しかし、グレイとボスとヒルフは忘れることはなかった。


次は3月22日の夜に投稿予定です


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