序章
私はオタクである。とは断言できない。
始まりから、「なに言ってんだこいつ」と思われるだろうか?
これは私の単なる思い込みでしかないことだけど、私はオタク以下趣味以上にマンガやアニメや小説などが好きである。もっと簡単に面倒に言うと、私は物語が好きなのである。
まずは、オタクな友達とつるむようになって、自分もそういったものがあればどっぷり読みふけったりしていたので、私もオタクなのかもと思った。
そして「私もオタクなんだー」と軽く友達に言ったら、「その程度でオタク?」と言われた。
…………めっちゃ怖かった。
確かに、私はキャラクターのタオルだの抱き枕だのストラップはあまり好きではなかった。そういった日用品は自分の好みで揃えたかったし、それらに興味もなかった。マンガ本や小説くらいなら買うこともあるけど、DVDはレンタルや録画で十分。同人誌は原作にもっと浸りたい延長で数えるほど買ったことがあったけど、そんな様子はオタクを自負する彼女らの熱意とは比べるべくもなかった。
ではオタクではない?と思ったが、社会人になってアニメ好きな人と話すと、「めっちゃ詳しいねー私はちょっと知ってる程度だから」とか「もしかして秋葉原とか行っちゃってる?」とかそれとなく「お前オタクだろ?」感を仄めかされる。
…………これはこれで怖いと思った。
最近では「私は物語が好きなんだ」という自分なりの答えを見つけることができた。
でも、私はそう思いながら、密かに思ってる。……「私は物語が好き」と言われても、真に意味は伝わりづらいだろうなあと。
とても前置きが長いことをお詫びしつつ、話を進めようと思う。まだ核心には程遠いとだけ言っておこう。
私は物語が好きである。そこから。
物語が好きな私は高校に入った時から、携帯電話をもつようになり、ネットの世界を知った。
物語を求める私にとって、ネットという世界は夢のような場所だ。ただで読める小説や漫画が多いこと多いこと!
それまでは近所の市立図書館や学校の図書室の小説、そして友達から借りるマンガなどしかなかったのに、世界が一気に広がる思いであった。余談だが、私の家は貧乏であった上、家での私のスペースはかなり狭い。よってマンガや小説を買うなんて、よっぽど気に入ったものでもない限りはありえないことだ。
それは数年たち社会人になったころにも断続的に続いていた。社会人になって3年以上経過したころだろうか。
そのころ、小説サイトを中心にとある設定のブームが定着しつつあった。
転生モノである。自分なりの解釈で説明すると、だ。前世の記憶を持ったまま、新たに生まれた世界に生まれ変わる話のことだ。少し違ったパターンとして、後天的に前世の記憶を思い出す話もある。私が好きないくつかの小説に多いのが、転生ともうひとつスパイスが加わるお話。ゲームやマンガ、小説の世界に生まれ変わってしまうというものだ。
私はそんな設定の小説を手当たり次第に読み漁った。そしてたまに考えるのだ。もし自分が主人公(転生者)だったら、どう行動するだろうか……と。
チート知識使って勉強頑張っちゃうだろうか? あえてルートに従うだろうか? わが道を突き進んで、本編スルーとか?大好きな登場キャラたちのために一肌脱いだり? 逆ハーは……性格上ありえないと考え始める前に却下。
しかし、現実は時として残酷なものである。夢見がちに考えていた私は気付かなかった。
そう、自分に言ってやるのだ。そんな風に考えていた自分がどれほど理想論者であったかと。語るだけなら誰でもできるんだよっぺっぺっ!
大人っぽく笑うこともできない未熟な表情筋で自嘲する。
現実には「ふにゃぁ」としか言ってない無邪気<にみえる>な乳幼児である。
「ふにゃにゃあぁぁ……にょおっ……(これが……げんじっ……)」
痛っちょ、噛んだ!転生者だって新生児なら、そりゃ噛むよねー。
ということで、転生したけどこれが現実です。始まりまーす。