三章の二
「はい」
二人はゆっくりと唇を重ねた。なぜだろう。この安心した気持ち。
怖い気持ちなど微塵もない。深兄様の体温がとても心地よい。
二人とも自然と息があがる。部屋中に熱気が籠ったように思った。
「大丈夫か。結子」
抱き合いながら深が聞いてくる。
「ええ。幸せすぎて。兄様のお嫁さんになったのね」
「そうだな、俺も幸せすぎて」
そっと唇を重ねてきた深に結子はまた胸が熱くなった。
こんなに幸せでいいのかしら。今までの祓い巫女の人達は皆悲しい恋をしてきている。
私だけこんな幸せで。
「どうした」
急に暗い顔をした結子を心配した深が顔を覗きこむ。
結子は今までの祓い巫女のこと、母の悲恋を話して聞かせた。
「じゃあ、結子は今までの巫女のことを想って舞えばいいだろう。多分みんな自分の子供は幸せになってほしかったはずなんだ。私は幸せになりましたって教えてあげたらいいよ」
「私だけ幸せになってと思わないかしら」
「そんなことはないさ、皆喜んでくれるよ」
「兄様に言われたらそんな気がしてきたわ」
「そうだよ。それと、もう俺のお嫁さんになったんだから兄様はもうなし」
「え、じゃあどう呼べばいいの?」
「深、でいいだろ」
結子の頬が一気に朱に染まる。深は可愛くて可愛くてまた唇を重ねた。




