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二章の十
結子の攻防は続いていた。
無駄かもしれないが桶で相手の頭を叩いたり、足をじたばたとさせたりして何とか逃れようとしていた。
しかし男の力には敵わないと思いもうだめかと思ったとき複数の足跡が聞こえてきた。
「結子」
深兄様の声が聞こえる。心の中で何度も呼んだから、幻聴が聞こえてきたのかと思った。だが本物だ。
行兼が男を蹴り風呂に落とした。そのあと縄で縛り上げた。見事な早業だった。
深から羽織りをかけてもらい結子は深に抱きついた。
震える結子の背中を深はゆっくり撫でてくれた。
「無事でよかった」
深の掠れたような声に結子は安心して意識を手放した。




