二章の八
かたっ。
湯殿の入口付近で物音がした。
木葉が戻ったと思い入口を見たが、知らない男が立っていた。
誰と考えるまでもなくすぐに変だと感じた。手には何か刃物を持っている。
結子は刃物といえば包丁くらいしかまともに見たことがないので、その男が持っているものがどんな用途に使うものは分からない。
しかしこの状況ではやはり警戒した方がいいだろうと瞬時に察知し、結子は後ろに後ずさった。
しかし男の殺気をはらんだ目つきは急に別のものに変わった。
結子の体を上から下へ。下から上にと、舐め回すように見たあと嫌な笑みを唇に宿す。
結子自身も自分の着ている薄手の着物が湯あみでぴったりと肌に張り付いていることに気が付いた。
殺される前に辱めをうける。咄嗟に湯船のお湯を男に浴びせる。
男が怯んだ隙にと入口に走ったが、濡れた湯殿は走りにくく、前のめりに転んでしまった。
すぐに立ち上がろうと思ったが足首を掴まれ、男が覆いかぶさってくる。
自分の顔に男の荒い息がかかって肌が粟立った。
嫌だと、体全体に広がる。ぴったりと張り付いた着物の上から結子の乳房を揉む。
なんとかして逃れたいともがくも、男性の重みに結子の体は少しも動かない。
ぐいと、胸元が開かれ最近大きくなったばかりの乳房が露わになって結子は唇を噛んだ。
兄様に想いを伝えようと思った矢先にこんなことに。兄様にだけ見せるつもりだった体を
こんな男にいいようにされようとしていることに悲愴な心もちが胸いっぱいに広がった。




