表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の舞姫  作者: 藤宮 蒼
10/19

二章の五

きりっとしたお顔だが、優しい笑みを浮かべる帝を見て結子はほっとした。

「そなたが結子か」

「はい。依子の娘の結子と申します」

「依子、やはり似ているものだな。若い頃のお前に」

「そうでしょうか。ようやく大人になったばかりでございます」

「何を言う。おぬしを初めてみたのは五つくらいだっただろう。まあ、私もまだ子供だったな」

母と帝はそんなに前から会っていたのかと結子は驚いた。祖母のあとについて都によく来ていたのだろうか?

「早速本題にはいる。祓いの舞は踊れるのか?」

帝は苦渋の顔をして母に問うた。

「申し訳ございません。私は怪我でもう舞うことができないかもしれません」

「そうではないかと思っていたところだった」

「そこで相談なのですが、結子の初めての舞を今回お願いしたいと思っております」

「しかしまだ依子の舞を見たこともないであろう?」

「そうなのですが、もうやるしかありません。時間がないと深から聞きましたので」

「確かにその通りなのだが。心配ではないのか?」

「心配です。しかしもう舞えるのは結子だけです」

母と帝の間に緊迫した空気が流れる。

「榊の話しだと昔は何姉妹もいて交互に舞をしていたそうだが。いつのころからか子宝に恵まれない家系になってしまったからな。何が原因だったのか」

「私も詳しくは知らないのです。本当に残念でなりません」

帝が結子を見つめた。険しい表情に結子は背筋を伸ばす。

「結子。舞えそうか?」

「自信はありませんが、三歳から舞っている舞です。舞えると思います」

「そうか。三歳から舞うものなのだな。うむ。そなたに任せる。分からないことは母や深、榊から聞きなさい。段取りもあるしな」

「はい」

私に任せると言ってくれた帝を見つめる。

すっと襖が開かれ、湯あみの準備ができたと知らせがきて、結子は侍女に連れられ部屋を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ