正攻法
短編です
「だからぁ!裏口から入らせてほしいって言ってるんですよ!」
大学に限らず、受付という場所には、いわゆるクレーマーと呼ばれる人間が度々訪れる。受付と言う場所の特性上、仕方のないことだと私もわかってはいるんだけど、今回のクレーマーは、一味違う、と長年の勘がそう告げていた。
「ですから、そう言う要望に我々がお答えすることはできないんですよ」
「電話で何度もうちの子の体質の話はしたじゃないですか!虚弱体質で、日光に当たれないので、夜に、一時間でいいからうちの子に授業を受けさせてほしいって!それなのにあんたたちが特別扱いはできないって言うから!」
「こちらとしても、何度もお伝えしました通り、一人の生徒だけを特別扱いはできないんです!それに・・・裏口だなんて!」
「良いじゃないですか!裏口!使う人間はほとんどいないんですから!」
「そもそも裏口なんて、使ってはいけないんですよ!正攻法ではないので!」
こんな人の目も耳も沢山ある場所で、大声で“裏口”から入りたいなんて、よくそんなことが言えるものだ。
「あなたじゃ埒が明かない!校長、いや、理事長を呼んでください!私、知り合いなので!」
でたー!権力をちらつかせるやり方!私こういう人大っ嫌い。そもそも、虚弱体質なら、通信などで自宅で授業を受ければ良いのだから、何もここまで突っかかってくる必要はない。
そもそも裏口入学を予告するなんて、バカすぎる。親バカであり、バカ親だ。
「あなたが理事長と知り合いだろうと何だろうと、ここでそんなことを、あなたが大声で言うと、誰に迷惑がかかるかわかりますか!?お子さん自身ですよ!」
「なんで裏口から入ると息子に迷惑がかかるんですか!?そもそも裏口から入ったって、誰にも迷惑はかけないでしょう!?うちの息子はずっとこの学校に入学することを夢見ていたんです!去年の文化祭が曇り空で、私達が付き添ってやっと来られたんです!あの時この学校の演劇部の発表を見て、絶対この学校に入るんだと、頑張って勉強していたんですよ!?」
「何の騒ぎですか?」
騒ぎを聞きつけた理事長が来てしまった。事情を話そうと立ち上がると、理事長はクレーマーに笑顔を向けた。
「やぁやぁどうも!息子さん、入学が決まったって連絡いただいて、ご挨拶もろくにできませんですみませんでした!」
「理事長!」
まさか、理事長自ら“裏口”を堂々と!?もしかして私がおかしいの!?裏口って今は正攻法なの!?
「この受付の方が、裏口を使わせないって言うんです!あそこは日当たりが悪いから、私達が息子を車で連れてくれば、昼間に学校に通えるのに!夜の授業が難しいというから、苦肉の策として考えたんですよ!!」
「・・・・へ?」
「あれ、私言いませんでしたっけ?裏口通って良いですよって。事務長にも伝えていたんだけれど」
「・・・え?」
報告書の山を漁ると、確かに事務長の受領印が押されていた。
「裏口って・・・」
「だから、学校の裏口ですよ!」
確かに学校の裏口は、森が隣接していて薄暗い・・・けど・・・なんて紛らわしい。
——大変申し訳ありませんでしたっ!——
そもそも事務長が前もって伝えてくれてれば・・・




