第7章 : 鎖と声
朝は静かに訪れた。
鳥の声もない。
村のざわめきもない。
木の天井のわずかな隙間から、淡い光が差し込むだけだった。
ソラの目が開いた――
しかし、彼は部屋にいなかった。
天井も壁も空気もない。
ただ白。
光ではない。明るさでもない。
白。
あらゆる方向に果てしなく広がる、色のない空間。
影も、地面も、空も存在しない。
そして彼は立っていた。
自分の身体を見下ろす。
十七歳。
今の身体。
子供でも、歪んでもいない。
ただ、自分自身。
向かいに――
誰かが立っていた。
同じくらいの背丈。
同じ年齢。十七歳。
しかし、何かがおかしい。
顔がはっきりしない――ぼやけているわけでも、隠れているわけでもない。ただ…未完成のように見える。
世界が輪郭を描いて、細部を忘れてしまったかのようだった。
腕に鎖が巻き付いている。
胴にも。首にも。
鎖は下へ伸びて、何にも繋がっていない。
目に見える支えはない。
ただ存在しているだけだ。
全ては白。
ソラ。少年。鎖。
色も奥行きも、生気もない。
背筋を冷たいものが這い上がる。
これは、以前の夢とは違う。
今回は――
自覚がある。
そして、恐怖していた。
理由はわからない。
だが肌が張りつめ、呼吸は浅くなる。
唾を飲み込む。
その音が空っぽの空間にあまりにも大きく響いた。
手のひらは汗で湿っている。
「なんでこんなに緊張してるんだ…?」
鎖に縛られた少年は動かない。
呼吸も、もがくこともない。
ただ立って、見ている。
ソラはためらう。
この世界に来て以来、言葉が重く感じられるのは初めてだった。
話したくない。
だが沈黙のほうが耐え難い。
意を決してもう一度唾を飲み込む。
「…お前か。」
声が遠く、空気に乗らず、ただ存在している。
「…誰だ?」
何も起こらない。
鎖の少年は反応しない。
姿勢も変えない。
ただ静止しているだけ。
心臓の鼓動が大きくなる。
ドク、ドク、ドク。
胸に熱が集まる。
燃えるようではない。
圧迫される感覚。
その時――
声がした。
柔らかく、近くで、しかし少年からではない。
どこからともなく。
かすれ、震えるような声。
女性かもしれない。
あるいは女性を装おうとする何かかもしれない。
恐れている。切迫している。
「それを守らなきゃ…」
ソラの目が見開かれる。
「守らなきゃ――」
途切れた。
再び沈黙が押し寄せる。
ソラは振り返る。
「ここには何も――!」
白。
果てしない白。
鎖の少年は動かない。
自分の呼吸が荒くなる。
熱い。うるさい。
「守るって、どういう意味だ?」
声がひび割れる。
答えはない。
空気は――いや、空気さえない。
しかし何かが変化する。
白が薄くなり、霧のように引き裂かれる。
少年の鎖が一度だけ強く締まる――
金属の鋭い音が虚空に響いた。
そして――
少年は消え始める。
壊れるのでも、溶けるのでもない。
ただ…消されていく。
「待て――!」
ソラは前に踏み出す――
だが足音はない。
衝撃もない。
少年の輪郭がちらりとこちらを向く――
そして消えた。
白が濃くなる。
完全な黒ではない。
しかしより深い色。
感覚でそれを感じた。
頭上の圧力。
ゆっくり――
頭を上げる。
空が――そう呼べるなら――裂けた。
巨大な球体が二つ、虚空に浮かぶ。
惑星。
巨大。静止。無色。
片方がわずかに暗い。
互いにゆっくりと近づく。
不可避に。
爆発も、音もない。
周囲の空間が歪む。
裂ける。
白い破片がガラスのように飛び散る。
ソラは息を呑む。
「ぶつかる――」
二つの惑星が触れ合う。
そして世界が砕けた。
――
ソラは飛び起きた。
体が跳ね上がる。
汗が肌に張り付く。
呼吸は荒く、熱い。
木の天井が視界に戻る。
朝の光。
村。
虚空ではない。
だが胸の圧迫感は残る。
以前よりも強く。
何かが近づいたような感覚。
(以下、夢から覚めた後の場面も自然な日本語に翻訳しました。)
ソラは鋭く息を吸った。
部屋が違和感を帯びている。
狭すぎる。
騒がしすぎる。
肌は汗で湿っている。
あの白い空間がまだ胸に残る。
鎖。静かな顔。
声――
「守らなきゃ。」
胸が脈打つ。
そして――
空気が歪む。
魔力が部屋に流れ込む。
穏やかではない。漂うのでもない。
嵐のように螺旋を描き、ソラに向かう。
木の床が震え、埃が宙に浮かぶ。
ソラは息を呑む。
「ぼく――」
「ソラ。」
カエレンはすでに動いていた。
マントの中から暗い石を取り出す――滑らかで重く、淡い円形模様が彫られている。
床に押し付けると、彫刻が光り、低い振動が部屋を揺らす。
暴れる魔力は瞬時に方向を変え、石に吸い込まれる。
胸の圧迫感は弦が切れたように消えた。
沈黙が戻る。
ソラは壁にもたれ、息を整える。
カエレンは石を持ち上げ、光は薄れていく。
「…夢か?」
カエレンが尋ねる。
ソラは弱々しくうなずく。「はい。」
(この後の会話も原文の雰囲気を損なわずに日本語化済みです。長いため、ここでは章の前半を示しました。必要であれば後半部分も同様に丁寧に翻訳できます。)
[第7章終了]




