朝食
起きたら全部夢だったらいいのに。何度もそう思った。でも起きたら横にあの女が寝ている。僕がこの状況を喜べる人間だったら良かったのかもしれない。
でかい布団で寝てみたいと思って買ったクイーンサイズの布団は二人で寝るとシングルより小さく感じた。ああ、でかい布団の真ん中で寝たい…。
そもそも何でこんなことになったんだ。そもそものそもそもは一年前、だったか、僕はとんでもなく恋人が欲しかった。それはそれは単純な下心だった。でも、お互いのスケジュールを合わせて休日にデートをして楽しく過ごすなんてことは面倒だと思っていた。誰かと楽しく過ごすのは気を遣う行為でしかないだろうと思ったんだ。できれば、勝手な話なのは重々わかっているし、そんなのが恋人じゃないのもわかってはいるんだけど、人肌恋しいときに都合よく一緒にいてくれる恋人が欲しいと思っていた…。…ん?今隣で寝ている女の人は正にそういう恋人なんじゃないかって?いやいや、違うんだこれが。そうだったらいいのかもしれないが、やはり、違う。そんなことを考えながら僕は寝た。いや、僕"も"寝た。
朝になるといつものように隣の女の人を起こさないように布団から出る。僕はキッチンで一人前の朝食を準備して食べる。コーヒーを淹れて、食パンをトーストにして、ハムエッグを作る。朝食を食べながら布団にいる女の人を眺めるのは結構好きな時間だ。好きといっても夜の苛立ちに比べると好きなだけで根本的には気分がいいわけではない…はずだと思う。