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何センチメンタル  作者: 蟹海老フラッシュ
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3号室

 3号室の住人は自称・思考屋だ。思考することを生業としている、らしい。実際何で飯を食っているのかといえば実家の経済力におんぶに抱っこ、そんな人間の思考を価値は無いとは言わないが尊敬できそうにはない。3号室の人曰く、資源のないこの国に残された唯一の産業開発の道は新しい薬を産み出すことだけだそうだ。「その薬を使えば幸福感でいっぱいになるから世界中の皆が欲しがる、そんな薬を作れれば」と、すでに何らかの薬物使用を感じさせる思考屋の思考は他の住人たちにとってちょっとした脅威だったが、生粋のボンボン育ちの思考屋は基本的には人にとても親切で物腰の柔らかい好青年だった。「人を幸せにする薬」も彼にとっては皆に幸せになって欲しいという純粋な思考から生まれたのだろうし、思考屋という自称も物事を考えることが好きだからという明快な理由から来たものだろう。

 現に、3号室の住人は他の住人たちから好かれていた。時折リビングで語られる前述のような思考発表も住人たちをギョッとはさせたが、それで彼が嫌われることはなかった。直接彼に会ったことがない人間にとっては彼の発言によって彼自身が好かれることは多くないかもしれないが、幸い彼はSNSなどはやらずに家族や友人知人に面と向かって思考発表するだけだった。自称・思考屋は今日も朗らかに生きている。

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