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人ではないが言葉を操るもの
どうも人間というのは生きるだの死ぬだの、そんなことをしょっちゅう考えているようだ。大半のやつは結局のところ何も分からないなんて言っている。たまに、これがこたえだ、とかなんとか言って騒ぐのもいるが。
アパートの屋根裏は広い。そこには誰かの失くしものたくさん。それでいて何も無い空間が広がっている。おれはしょっちゅうこの屋根裏にいた。そのへんに転がっていた漫画もよく読んだ。擬音がいくつかあるとき、たとえば戸を叩くドンドンドンという擬音。大きい文字でドン、その少し下に中くらいの文字でドン、さらにその下に小さい文字でドン。あれは一体なぜああなのか。最初に叩いた音がいちばん大きい文字のドンだとすると、最初のドンは最後のドンが聞こえる頃にはかなり薄い存在になっているはずなので、文字の大きさが逆ではないのか。人間とはどうも解せん。でもあれだな。そのためにおれはあまり退屈はしていないのかもな。
女の声がした。「何か屋根裏にいる気がしない?ねえ、そう思わない?」男の声もした。「そんな気は別に…それよりも早く出てって下さいよ…」




