さいしょのさいしょの
「最初の最初の第一歩!だーるまさんがーこーろんだ、っていう遊びあるじゃない?え?だるまさんがころんだだけでいいって?そりゃそうだけど思い出したそのままを言ってるのよ。いいでしょ別に。」
気だるそうに話すこの女をなんとかして追い出したい。でも僕が大事な話をしようとするといつもはぐらかされる。そうやってもう三ヶ月もこの女は僕の家に住み着いている。
「なにが言いたいかって言うとー、もうちょっと忘れちゃった、あ、思い出した、私この遊び好きじゃなかったのよー。あれやってると客観的になっちゃうのよ。やってる自分たちを俯瞰で思い浮かべちゃって。みんなして止まってるのが、どーも好きになれなくて。そういうのあるでしょ秋土くんも?」
「僕は…」僕は女の問いかけにまんまと答えそうになった。今はだるまさんの話なんてするつもりないんだ。いつ出てってくれるのか聞いているんだ。
「僕は…貴女がいつ出てってくれるのか聞いてるんです。いい加減きちんと話したらどうですか。」
女は僕を睨むように見て、頬を膨らまし口を尖らせて言った。
「なによー。私真剣な話苦手なのよー。ちゃんと聞いててよー。」
何をちゃんと聞けというのか。きっと今日もはぐらかされて終わる、諦めの念が僕を包みだし、ウイスキーのロックを握りしめた、いつものように。