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仮面公爵と赤髪の魔女  作者: 森林 浴


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EP.11


「くそっ!何なんだっ!?お前はっ!」


私の電撃魔法を喰らい、ボロボロになった野盗達が悔しげに宙に浮かぶ私を睨んできた。


「何なんだとはご挨拶じゃな。

私は赤髪の魔女。世界最強の魔女じゃっ!」


胸を逸らしてそう言い切ると、野党達はポカンとして口を開き、ややしてザワザワと囁き合った。


「は?赤髪の魔女?世界最強?お前、聞いたことあるか?」


「いや、聞いた事ねぇな。そもそも魔女なんて魔法の無い国の想像上の存在だろ?」


「魔法が当たり前のこの国で、魔女とか言われてもな……そんなん言ったら、女は皆魔女になっちまう」


「……ちょっと、頭がアレな、可哀想な子かもな……優しくしてやろうぜ」


一気に憐憫の目を私に向けてくれる野党共に、私は髪を逆立て、怒りにブルブルと震えた。


「き〜さ〜ま〜ら〜っ!この史上最強、無敵の赤髪の魔女に言うに事欠いて頭がアレな、とは………。

良い度胸じゃっ!消し炭にしてくれるわっ!

サンダースプラッシュッ!」


私の魔法の雷による大爆発により、野党共は一気に吹っ飛んで、真っ黒に焼け焦げアフロになった頭からプスプスと煙を出している。


「安心せいっ!峰打ちじゃっ!命だけは助けてやるわいっ!カッカッカッカッ!」


愉快に笑う私にまだ意識のある野党が何人か、力無く呟いた。


「………峰打ち………とは……?」


「命は無事でも、頭が……俺の頭が……」


「なんじゃ、まだ喋れる奴がいたか、サンダーショックッ!」


そ奴らに向かって軽めの電撃を流してやると、ビクビクと体を震わせ、泡を吹いて白目になってやっと気を失った。


「カッカッカッ!悪は倒されたっ!

やはり私は最強じゃっ!愉快愉快っ!」


腰に手を当て胸を逸らして高らかに笑う私の笑い声が山の中に響き渡った。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆



私は赤髪の魔女。

この世界、最強の魔女じゃ。

んっ?中身はエブァリーナじゃないのかって?

そうじゃが、どうかしたかの?

話し方?キャラ崩壊?

カッカッカッ!

なんじゃ、そんな事か。

そうじゃ、話し方もキャラも、エブァリーナとは変えておる。

なんせあのままのですわますわご令嬢口調では魔女らしくないのでな。

それにしては年寄り臭いって?

そりゃ、前世では年寄りじゃったからな〜〜。

いや歳取ってもこんな喋り方はしておらなんだが、どっちかっていうと、エブァリーナと変わらん喋り方に所作をしておったな。


じゃあ何故赤髪の魔女だとこんなキャラなのかというと、まずは見た目と中身のギャップにより年齢不詳である事を強調する為じゃな。

それにこの姿の時は、この先多少の荒事もあろうから、それに合わせて偉そうにしておる。

まぁ単純に、諸々の鬱憤を発散させる為でもあるな。

この姿で傍若無人、最強で最恐の魔女として生きるつもりじゃから、エブァリーナの方のストレスなんかも発散出来るだろーて。

口調もその一つじゃ。

エブァリーナはこの帝国随一の貴族家の令嬢。

口調や所作一つとっても不自由な身。

このような喋り方など決して許されん。

そこで赤髪の魔女の姿の時は好きな口調や行動で好き勝手にやると決めたのじゃ。

前(前世)から長老っぽい喋り方に興味があったからな〜〜。

正直、今楽しくて仕方ない。


とりあえず赤髪の魔女としてどれだけの活動が出来るものか、それを確かめる為にこの姿で邸を飛び出してきたものの、やはり魔力を使ってみねば実のところは分からん。

そこで近頃問題になっていた峠の野党団とやらを壊滅させてみたのだが、うむ、これしきの事では変身魔法も邸に置いてきたコピーの方も揺らぎはないようじゃ。

魔力の使い過ぎでエブァリーナの姿に変わってしまっては、もう赤髪の魔女という姿が使えなくなってしまう恐れがあるからの。

それは本当に困るからな、慎重に見定めねばならん。


元の年齢がまだ10歳ゆえ、体力や体の未熟さがどう影響するかは未知数。

慢心せずこの姿でいる事も制限せねばならん。

まぁ、ウォーミングアップは上手くいったので、野党団程度を壊滅させるくらいならどうという事は無いと分かったな。


さて、次はこの姿の時の活動拠点じゃが、流石にアルムヘイム領の中ではよろしくない。

帝国の東端に未開拓の大森林があって、私はそこに目をつけておった。

あそこならおいそれと人も踏み込んで来んしな、拠点を作るに丁度良いじゃろう。


私は早速転移魔法を展開して、事前に地図で調べておいたその場所に照準を合わせ、一気に瞬間移動した。



人の手の全く入っていないその場所は、自然そのままの姿でそこにあった。

木々が生い茂り、人の通れそうな道は無い。

あるのは獣道だけという、正に私に理想的な場所じゃった。


「うむ、この辺りかの」


空中から大森林を観察して、自然に開けた草原の広がる場所に目をつけると、その草原に降り立ち、辺りをゆっくり見渡した。

高い山々が遠くに眺めるその場所を気に入った私は、地面に手を置き、土属性魔法で何体もの巨大なゴーレムを作り出した。


「お前さん達、ちょいと木を切り倒して私の為の小屋を作っておくれ」


命令を出すとゴーレム達は直ぐに小屋作りに取り掛かった。

あっという間に私の頭の中にあったそのままの小屋が出来上がっていった。

こじんまりとしたログハウス。

中の広さは邸の私の自室より少し狭いくらいだが、本来ならこれくらいで十分なのじゃ。

ちょっとした客が来てもこれなら十分に対応可能じゃろう。

狭ければ空間魔法でいかようにも広げられるしの。


うむうむ。良いな。

正真正銘、私の城じゃ。

何不自由ない生活を与えられておいて我儘が過ぎるかもしれんが、やはりあそこは私にはちと窮屈でかなわん。

制約が多すぎてな、自由とは程遠い。

やはり赤髪の魔女という別の生活を用意せねば、私の野望は叶えられんという事じゃな。


なにせエブァリーナには高位貴族としての責務が多過ぎる。

成長する毎にそれは更に増えていく事じゃろう。

そして、エブァリーナの最大の責務は、いずれ身分に合った相手に嫁入りする事じゃ。

運の悪い事に、皇家には歳の近い皇太子がいるからの、まぁ順当にいけば、相手はそ奴じゃろうな。

皇太子妃になり、いずれは皇后となる事を強いられることじゃろう。


しかしいかんせん。

私には既に将来を誓い合ったカインという相手がおるからして、皇太子妃も皇后も真っ平ごめんじゃわい。

エブァリーナとしては派手に動けんが、この姿なら何でも出来る。

いよいよの時はこの姿でこの帝国を乗っ取ってやれば良い。

皇帝となった私がエブァリーナとカインの婚姻を認めてやれば万事解決じゃの、カッカッカッカッ!


むっ、いかんいかん。

どうにもこの姿になると、何事も荒事で納めてしまえという思考になって、いかんの。

何でも出来る力を持ちながら、それを隠さねばならぬエブァリーナの反動だろうか?

とにかく、カインも私達の未来の為に頑張ってくれているのじゃから、私が短気を起こすのは良くないの。


さて、我がログハウスも築城出来た事じゃし、ここを拠点に本格的に赤髪の魔女としての活動を始めようとしようかの。

まずは魔物や魔獣から肩慣らしといこうか。

のちのち魔族も倒さねばならんな。

同じ闇属性持ち同士、奴らを滅するのは私の仕事じゃろうて。

しかしあまり派手に聖魔法を使う訳にもいかんし、今はまだ魔族には手出し出来んのが歯がゆいところじゃが。

まぁ、そのうち好機が訪れるじゃろう。


それに戦いばかりが赤髪の魔女の役目では無い。

研究や開発、発明などもやっていきたいからの。

まずは獣人族の番への衝動を抑える薬。

それが先決じゃな。

それさえあれば、人々の獣人への恐怖も薄れる事じゃろう。


獣人にとっては稀にしか起こらない、番との出会いによる衝動をわざわざ抑える薬など、迷惑以外の何ものでもないじゃろうが、それで人族との円滑な交流が図れるなら気の良い彼らなら受け入れてくれるじゃろう。

それに、番への衝動が抑えられるなら、理性を持って番と対話出来る手段が生まれる。

何も獣人族とて理性を失って番を追いかけ回したい訳でもなし。

普通、よりは情熱的になるだろうが、それでも理性を保ったまま番を口説けるならそちらの方が良いだろう。


一生のうちに番と出会える獣人など殆どおらんが、保険として薬を飲むのも悪い事ではない。

特に既に世帯を持っている獣人などは、未婚の獣人のように番への憧れなど持っていられんからな。

もし万が一番と出会ってしまったら、伴侶や子供を捨ててでもそちらを追いかけてしまうのじゃから、ある意味恐怖でしか無いかもしれぬ。


薬では面倒になってきたら、予防接種のようにしても良いかもしれん。

出来れば一生に一度打てば事足りるものが良いな。

獣人の本能を抑えつけるようで忍びないが、全ての獣人が番を心から求めている訳でも無い。

この世界にはまだ注射が無いので、まずはそちらを発明してから、番への欲求を抑える予防接種じゃな。

段階を踏まねばならんから、それはまだまだ先の話になりそうじゃ。


やはり今はまず、飲み薬という形が手っ取り早いじゃろ。

それが完成すれば、獣人に無料で配れば良い。

飲む飲まないは個人の自由じゃが、人族側はそれで一応は納得するじゃろうて。


獣人研究家らの書籍のお陰で、今は獣人達への偏見もだいぶ薄まり、獣人が番を見つける事の確率の低さも広まっておる。

ほぼあり得ない確率であるというのに、自分達を安心させる為だけに獣人が薬を飲めば、人々の意識も変わるざるを得んじゃろうな。


何にしても、人族と獣人族が今よりもっと理解し合って、お互いの存在が異質で無くなる世の中を早急に作らねばならん。

私とカインの為に。


ふむ、私利私欲上等じゃ。

私の都合の為に世の中を変えて、何が悪い?

いつか人族と獣人が愛し合う未来がきても、それに何の問題が?

確かに種族が違うゆえ子は出来ぬだろうが、どちらの種族からも養子を得る事は出来るのでな、家族を築く事は夢では無いぞ?

それに子を持つ事だけがカップルの幸せとは言い切れんしの。

お互いが幸せであれば、何でも良いのよ、実際。


出来たばかりの自分だけの家でのんびりお茶を飲みながら、私はふふふ〜んと鼻歌まじりに部屋の中を見渡した。

水回りは水魔法で整えたし、調理場には火魔法を、空調は風魔法で完璧じゃ。

本当に魔法というのは便利なものじゃな。

帝国以外の国にもこの魔法の恩恵があれば良いのに。


しかし、そう考えると前世での暮らしは魔法のようなものだったのかもしれない。

捻れば水が出て、お湯にも変えられる。

ピッと押せばコンロが温まり、料理が出来る。

便利な家電に囲まれて、便利な暮らしに慣れていたが、あれはこちらでは魔法のようなものだったのじゃな。

そのような便利な暮らしが当たり前なのは、この帝国くらいなもので、他国では日常のあらゆる事がアナログで時間がかかってしまう。

魔法は無理でも、せめて前世のような便利な家電があれば、これはもしかしたらバカ売れするかもしれん。


自分個人の資産を持っておくのも悪くない。

獣人の薬が出来たら、便利家電をこの世界で再現するのも悪くないの。


またワクワクする事を考えついてしまい、私はバタバタと足をばたつかせて、浮かれ気分で茶を啜った。


うむ、やはり赤髪の魔女は良い。

楽しい事を実現出来るのじゃからな。

不自由な身の上のエブァリーナではこうはいかんじゃろう。

さぁ、やる事は山盛りじゃからして、だが時間は有限じゃ。

このお茶を飲み切ったら、とっとと動き出す事にするかのう。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆



先程は失礼致しました。

エブァリーナでございます。

うふふ、赤髪の魔女の姿になると、あんなにも人格が変わってしまうだなんて、私にも誤算でしたのよ。

でも、良い気分です。

彼女でいる間、私は今までに無い解放感に包まれていました。

最初から彼女に生まれ変わっていれば良かったのに、と思える程に。


ですが神様が私をこの身分に生まれ変わらせたのも、何か意味があるのでしょう。

いえ、生まれ変わる姿や環境は神様にも左右出来ない筈ですから、意味を求めるなら私がエブァリーナとしてどう生きるかによるのでしょうね。


どちらにしても、私は赤髪の魔女という人生も手に入れたのですから、その二つの人生を大事に全うせねばなりません。


いつかエブァリーナとして赤髪の魔女の友人になり、一緒に色々な事を成し遂げたいと思っています。

あら、何だかややこしいですが、完全に二つを切り離す必要も無いと思いますの。

お互いの持てるものを共有する為、表向き友人として協力し合っていきたいと思います。


さて、赤髪の魔女の薬作りの為、もっと獣人の番について調べねばなりませんね。

私にとっても、番は他人事ではありませんから。

しっかり研究し尽くして、より安全な薬を開発しなければいけません。


私とカインのより良い未来の為に。


あら?私利私欲でございますか?

私達カップルの為に獣人が巻き込まれている?


あらあら、うふふ。

嫌ですわ。

それが何か問題が?(キョトン)


私、この姿であっても、やりたいようにやりますわよ。

存外何とでもやりようがありますから……ね?





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