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4話 改めて、初めまして

 

 胸に魔力が込み上げてくる中、明確な意志を持って魔物たちに吐き出されたレイミアの言葉は、魔物たちの動きをピタリと止めた。

 そして次の瞬間、まるで操られているようにレイミアとヒュースの前から居なくなっていく魔物たちに、レイミアは心底安堵したのかほっと胸を撫で下ろした。


「良かった……出来た……っ」


 とりあえず目の前の危機は去ったが、ここは魔物の巣窟だ。

 驚き瞠目するヒュースに見つめられながら、レイミアは集中したまま気を張っていると、遠くから聞こえてくる声に耳を傾けた。


「ヒュース様……!! いらっしゃいますか、ヒュース様……!!」

「……! この声って……」

「ああ、私の部下、たちだ」


(良かった……助けが来てくれた……これでもう、大丈夫……)


 そう思うと、プツン、と張り詰めていた糸が切れたのか、レイミアのヒュースを支えていた腕の力が抜け、ズルリと地面に倒れ込み、目を閉じた。


「レイミア嬢大丈夫か……!」と、心配そうなヒュースの声に、内心で大丈夫だと囁きながら。



 ◇◇◇



「……ん……ここは……」


 身体に気怠さを感じながらも、レイミアは重たい瞼をそろりと開いた。


 見慣れない柄が刻まれた天井に、人生で味わったことがないような柔らかくて寝心地の良いベッド。ローブは脱いであるようで身体がごわつくことはなかった。


(あれ……? 私、自分で脱いだんだっけ? というか、ここ……どこだろう?)


 ぼんやりとした状態でレイミアは上半身を起こすと、辺りを見渡す。

 シンプルだが清掃の行き届いた清潔な部屋は、やはり見覚えがなかった。


「……ああ、起きたのか」

「えっ、公爵様……!」


 ──キィ、と扉が開き、ヒュースに声を掛けられたレイミアは姿勢を正す。

「楽にしてくれ」と言われても、立場上それを甘んじて受け入れることは些か困難だった。


 レイミアが何やら動揺している姿に、ヒュースはあまり表情を変えずにベッドまで近づいていくと、じっと彼女を見下ろした。


「まずは楽にしてくれ。それと、ここは公爵領の私の屋敷だ。部下たちが救出に来てくれたため、君も屋敷に連れてきた。ローブは汚れていたため脱がせて、メイドに洗わせているところだ。君が眠っていたのは二、三時間だろうか。医者にも見てもらったが、おそらく心身の過労だろうと」

「な、なるほど……詳しくありがとうございます……って、公爵様……! もう痺れは取れたのですか?」

「ああ。部下が持っていたものを飲んだから平気だ。と、今は私のことはどうでも良くてだな」


 ヒュースはそう言うと、深く腰を折った。


 いきなりのことにレイミアが「……へ!?」と素っ頓狂な声を上げると、ヒュースがそれに続くように聞き心地の良い低い声を漏らした。


「レイミア嬢、私のことを助けてくれて本当にありがとう」

「な、何を仰るのですか!! 私の方こそ助けていただいてありがとうございます……! どうか頭を上げてください……!!」

「……君は、優しい女性だな」

「普通です! どこにでもいるただの女です! お願いですから頭を上げてください……!!」


 あまりにも必死な声色に、ヒュースは少しだけ笑みを零す。

 それからスムーズな動きでベッドの近くの椅子に腰を下ろしたヒュースは、そろりと視線をレイミアへ向けた。


「……それなら、とりあえず自己紹介をしようか。先程はバタバタしていたからな。公爵家当主、ヒュース・メクレンブルクだ。歳は二十六になる。知っているとは思うが半分魔族の血が入っている。よろしく頼む」

「私はポルゴア神殿から参りました、レイミア・パーシーと申します。生家は子爵家で……一応、その、()()と言っても良いのかあれなのですが……王命で公爵様のもとに嫁ぐためやって参りました。こちらこそよろしくお願いします……」


 レイミアの煮え切らない挨拶に、ヒュースは怪訝そうな顔を見せる。

 先程力強い言葉で魔物を引かせたレイミアと、今のレイミアがまるで別人のようだったからだ。


「どうしてそんなに自信がないんだ。先程の君は凄かった。言葉だけで魔物を退かせるなど、まるで神の力だ。流石は『言霊聖女』だな」

「言霊……聖女……?」


 聖女にはいくつか種類がある。いくら神殿では酷い扱いを受けていようと、レイミアもそれくらいのことは知っているのだけれど。


(言霊聖女なんて、聞いたことあったっけ……あっ)


 そこでレイミアは、神殿長が神官たちと話していたときに聞いたことがあるものだということを思い出した。


「言霊って……確か、もう数百年は目覚めていないっていう加護(ギフト)では……」

「そうだ。結界や治癒などの加護は現時点でも複数確認出来ているはずだし、今までその数に変動はあれど途絶えたことはなかったが……おそらく言霊の加護は世界で唯一、レイミア嬢だけだ」

「…………!?」

読了ありがとうございました! 


◆お願い◆


楽しかった、面白かった、続きを読んでみたい!!! 

と思っていただけたら、読了のしるしに

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なにとぞよろしくお願いします……!

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