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安堵


ルーファス様に背景が見える薬について話した。


「ごめんなさい……。自分の心の中を見られているようで気持ち悪かったですよね。」


ルーファス様は唖然としていた。ちなみに背景は真っ黒のようだ。夜だからパッと見分からなかった。


「いや、私こそすまない。ティターニアに合わせる顔がない…。いつも私の考えていることが見られているとは知らずに変なことばかり考えていて気持ち悪いよな…。

決してティターニアとあの様なことをしたいわけではなく、いや少しはしたいかも…あ、でもティターニアが嫌なら私は別にいいんだ。ティターニアが私と結婚してくれるというだけで

「あのっ!ルーファス様っ背景とはオーラのようなもので考えていること全て分かるわけではなくてですね……。」


ルーファス様は固まってしまった。


「本当にすまない……頭を冷やしてくる。」


そしてとぼとぼと歩き出してしまった。

きっとこのままではルーファス様は塞ぎ込んでしまう。


そう思った私はルーファス様に後ろから抱きついた。


「ルーファス様ごめんなさい。嫌いにならないで。

ルーファス様に好きにってもらいたくてこの薬を飲んだの。

少しでもルーファス様の感情を知りたかっただけなの。」


「……………。


きっと私は君が思っていた人間とは違うというのはバレているんだろうけど、君には格好悪いところは見せたくなかった。


頭であれこれ考えるくせに口では何も言えず君にそんな薬を使わせてしまうような男だ。


口では何も言えないくせに先程言ったよう妄想をしているしょうもないやつなんだ。


それでも君は好きだと言えるのか?」


ルーファス様の傷は思っている以上に深いのだろう。

こんなことをした自分を後悔してもしきれない。


「ルーファス様を傷付けてしまうなんて本当に私は駄目ですね。


ルーファス様、私だってこの間着たドレスはルーファス様にそういう目で見て欲しくて着たんですよ?


私の幼稚な知識ですが考えを振り絞って偽の胸まで作ったんですから。必死だったんです。」


ルーファス様はゆっくりと振り返ってこちらを見てくれた。


「それは本当か?」


「…はい。


………不安なら触ってみますか?」



背景がピンクになった。


「いやそこまで君にさせるわけにはいかない。」


まだピンクが収まらない。


ピンクのままルーファス様は私の手を握ってきた。


「……キスしてもいいだろうか。」


返事をする代わりにそっと目を瞑った。


すると柔らかな唇がおちてきた。


唇が離れ目を開けるといつもとは比べ物にならないくらいの満開のお花がルーファス様の背景として舞っていた。


「好きだ、ティターニア。私と結婚してくれないか?」


「はいっ」


嬉しすぎて泣き出す私をルーファス様が抱きしめてくれた。


「君が私を好きだなんて夢のようだ。」


「それは私の台詞ですよ。ずっとルーファス様は家の事情に付き合わされているだけだと思っていました。」


「それなすまない。ずっと前から君が書店で親友と話しているのを盗み見ていた。いつも満面の笑みで笑う姿を見て、いつか私にあの笑顔を向けてもらえたらどんなに幸せかと密かに思いを募らせていた。」


「え!私があの店にいるのをご存知だったのですか!?」


「ああ。たまたま通りかかってからいつも可愛らしい娘だと思っていた。だから君が社交デビューした日にホールへ入ってきた瞬間君だとわかった。直接話しかける勇気はなかったが父上を説得してすぐに求婚状をだしてもらった。」


「ルーファス様にそのように思っていただけていたなんて…」


本当に驚きで言葉がでない。

私からすると淑女とは程遠く口を大きく開けて、時には涙まで流して爆笑していた姿を見られていたなんて穴があったら入りたい気分だ。


「実はこっそりあの書店で売っている本を取り寄せて全部読んだ。君が好きなものを手に取れば少しは君の気持ちを理解し、いつかは話の種になるかと思ってな。」


あんなロマンスたっぷりのラブストーリーをルーファス様が読んでいるのは面白すぎる。



こうして抱きしめ合いながらルーファス様の暴露大会がはじまり私は恥ずか死ぬ限界まで離してはもらえなかった。





◇◇◇



「アメリア、この文章変じゃない?」


ルーファス様と本物の恋人同士になってからルーファス様からデートのお誘いをいただいたりして以前よりお会いする機会が増えた。


お会いする度にあんなに素敵なルーファス様の隣に立つのがこんな私でいいのか不安になったり、もらう手紙は綺麗な字で素敵な文章が綴られているものだからアメリアに確認してもらったりしている。

前までの私はなぜ気にもせずお会いしていたのか不思議でならない。


「ティターニア様からのお手紙ならルーファス様はどんな文章でもお喜びになりますよ。」


アメリアにあの舞踏家から帰ってきた後、ルーファス様のお気持ちに気付かれたのですねと言われた。

誰が見たってルーファス様は無愛想だったはずなのにアメリアにはなぜかバレていた。


「そういう問題じゃないのよ〜!」


ちなみに我が家にいるメイドはみんなこんなことしか言わないし生暖かい視線を向けてくるので当てにならない。



明後日にルーファス様が一緒に街へ行かないかとお誘いしてくれた。もちろんご一緒したいと返事を書いているところだ。

私が町娘に扮して街にでて非日常を楽しんでいることを以前に伝えたらルーファス様も是非一緒に行きたいと言ってくれた。

屋敷から町娘風コーデで私おすすめの焼き串やこの時期見頃の花畑に一緒に行こうと思っている。

ルーファス様とお揃いの何かを買うのも良いかもしれない!


ワクワクが止まらない!



結局ルーファス様へのお返事はどんなに丁寧に書いてもいつもと変わらないような文章になってしまった。



そしてルーファス様とのデートの日


「ルーファス様!お忍び用のお姿も素敵です!」


いつもとは違う軽装で街の平民を装っているんだろうけどオーラが隠せてない。

あんな綺麗な顔をした人は街にそうそういないから目立つのは仕方ないか!


「……ティターニアのほうが素敵だ。」


声ちっさ笑

ルーファス様はいつものお花にキラキラとしたものを背景にしながら照れている。可愛い。

人生初(前世も含め)彼氏ができて私はものすごく調子に乗ってるけどいいのだ!だって夢にまでみた彼氏だ!

乙女ゲームでは何人も付き合ったが現実で彼氏ができる日がくるなんてたぶん今が人生の絶頂期。


「今日はご一緒したいところがたくさんありますので急ぎましょう!」


いつもお淑やかさを全面に出すのだが今日は難しいようだ。


馬車に乗っている間も私はペラペラと今日はあの店に行きたいとか最近できたカフェが人気らしいだとか話が止まらなかった。


「ふふ、こんな君をずっと見てみたかった。」


「どういうことですか?」


「遠くから見る君はいつもころころと表情を変えていたのに我が家に来てくれた君にそういう表情をさせてあげられなくて不甲斐なかった。でもこうして目の前で色んな表情を見せてくれるようになった君がたまらなく可愛い。」


そう言うルーファス様は見たことの無いような優しい笑顔を私に向ける。こんなの反則だ。


可愛いだなんて言うものだから照れて何も話せなくなってしまった。


「おや?もう話はいいのか?」


ルーファス様が少し意地悪な顔で覗き込んでくる。


こんなキャラだったっけ?????

さっきまで可愛いと思ってたのに二人きりになるとキャラ違くない?????



「遠目でも照れている顔は見たことがなかったからまた新しい一面を見られて嬉しいよ。しかも私の言葉でそうなってくれるなんて可愛くて仕方ない。」


「私の反応を楽しんでるんですね。悪趣味ですよ!」


「そんな顔で言われても可愛いだけだ。」


顔が熱くなりすぎて破裂しそうだ。




馬車を降りるとスマートにエスコートしてくれるルーファス様に戻った。


二人きりのルーファス様は心臓に悪い。嫌いじゃないけど。


「どこから行こうか?」


「果物をしぼった美味しいジュースがあるのでそれを買って花畑で飲みませんか?」


「それは楽しみだ。そうしよう。」


私はキウイをしぼったサイダーを注文しルーファス様は桃にされた。

並んでいる途中、前にいる恋人たちが楽しそうに話していて私たちも傍から見ればあんな風にラブラブに見えるのだろうかと考え一人で照れた。


「こういった屋台に並ぶのは初めてだが、凄く美味しいんだな。そしてまだ始まったばかりなのに既に楽しい。」


ルーファス様は心から楽しんでいるご様子だった。


「これからたくさん一緒に色んなお店に行きましょうね。」


「そうだな。」



花園ではコスモスが咲き始めた頃だが青空が広がりとても見応えのある花畑だった。



「とても綺麗な花たちですね。」


「風もあり心を落ち着かせるにはいい場所だ。


この花園には紅葉が見られる頃にもまた期待な。」


広い花畑だったがルーファス様と歩きながらお話するのが幸せでたくさん歩いても疲れなかった。


たくさん歩いて小腹が空いたので焼き串のお店に行くことにした。


よく行っていたお店なので店主に冷かれたが、こんな経験なかったので恥ずかしくも嬉しかった。


お店で頼んだ焼き串を食べているとこの店の息子カルディがやってきた。


「ティナ!久々じゃねえか。親父には内緒でサービスしてあげる。楽しんでって!」


そう言ってジュースを2本テーブルに置き、頭をぽんとして去って行った。


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