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一難去ってまた一難

誤字報告ありがとうございます!






「ティターニア様とても素敵です!」


「ありがとうアメリア。あなたがメイクも髪もやってくれたおかげよ。」


アメリアはヘアアレンジもとても上手で、今回は髪をあげてさりげなくうなじが見えるようなスタイルにしてもらった。


ドレスは露出も少なくスタイルを隠すようなデザインだからこそ、こういう時にさりげなくうなじを出すとやり過ぎない感じがいいとアンナが言っていたのでアドバイス通りにしてみた。


うなじを見せて色気に繋がるというのは私にはあんまり分からないがアンナがそう言うんだしそうなのだろう。

それに今日のドレスにもよく似合っていて私としても気に入っている。


「きっとドレスを送ってくださったルーファス様も今日のティターニア様のお姿をご覧になったらお喜びになりますね。」


「そうだといいけど、前回のドレスがあまりに似合わなかったから今回ルーファス様がドレスを送ってくださったんだと思うわ。」


「ふふふそれはどうでしょうかね?」


アメリアの背景からはしゃぼん玉のようなふわふわとした物が飛んでいてアメリアは良いようにしか考えていないようだ。


まあ婚約者同士で毎月会っていたらきっと想い合ってるに違いないと考えるのが普通なのか。


きっとルーファス様は私じゃなくてアメリアに一目でも会えることのほうが喜ぶと思うけどな。


「さあルーファス様がお迎えに来られる前に最後とっておきの香水を軽くつけましょう。私からのおまじないです。」


ん?ん?これは見覚えがあるぞ?


「なんでもこの香水に替えたら夫婦仲が良くなったと知人から聞きまして借りてきました。」


アンナの魔法がかかった香水だ。

これは特定の相手にだけ魔法がかかれば良いのだがそこまで高度な魔法は無理らしく不特定多数の相手も惹き付けてしまうのが難点なのだ。


だから舞踏会のようなたくさんの人がいる場所向きではない。そんなに強い魔法でもないけれどお酒が入ると面倒くさくなる人もいる。


「ちょっ!」

シュッ


「あ……。」


「これでルーファス様もきっと素直になれるはずです。」


違うんだよアメリア……

しかし私原案でアンナの店であれこれ淑女らしからぬことをしていることがバレてはまずいし、アンナも魔法使いであることを隠している以上何も言えない。


「…ありがとうアメリア。」


「楽しんできてください。」

そう言って見守るような笑顔で送り出してくれた。





どうしようかとあわあわしているうちにルーファス様が来られて一緒に馬車に乗る。


自分が送ったドレスなのにルーファス様は何も言ってくれなかった。思ったのと違ったんだろうか。


しかも私の方を見ているのに全く目が合わない。


それでもドレスを送ってくれたお礼はしないと失礼だ。


「ルーファス様、この度は素敵なドレスをご用意いただきありがとうございます。お返しと言っては何ですが受け取っていただけますか?」


そう言って自分で刺繍をしたハンカチを渡した。


「これはティターニアが刺繍したのか?」


「はい。あまり器用ではないので上手ではありませんが。」


「いやありがとう。大切にする。」


受け取るルーファス様の手が震えていた。そして会場に着くまで背景をお花にしてずーっとハンカチを眺めていた。


婚約者から刺繍入りのハンカチを貰うのは男性からすればしてもらいたいことの一つというのは本当だったようだ。

私は刺繍があまり上手ではないので他の令嬢のように複雑な模様はできないため簡単なお花くらいしかできないのが恥ずかしくて今までルーファス様にハンカチを送ったことはなかった。

しかしルーファス様だって今までドレスを送ってくださったことがなかったので別にルーファス様はそういうのは要らないのかと思っていた。




「ティターニア今日は取引で大事な話をしたい相手が多いのだが私が離れる間ここから離れてはならない。あと何か言われても流して誰かについて行ってはならんからな。」


「大丈夫ですよ。」


私としても香水のせいで面倒くさいのを惹き付けるのはごめんだ。だから香水の香りが届く範囲に人は寄せ付けないようにひっそりとしていよう。


ルーファス様はなんだか物言いたげな表情だったがとにかく気を付けるようにとだけ言って離れた。


私は美味しそうなものをつまみながらルーファス様も大変だよなと周りを眺めていた。


すると何故かこちらを見ていて目が合うと近づいてくる面倒くさそうな男爵がきた。

もう30歳後半というのに相手も見つからず毎回女性たちから丁寧な断り文句をもらっている。

そりゃでっぷりとしたお腹で変にプライドの高い面倒くさいおじさんだものみんな逃げるよな。

この前なんてダンスを断りきれなかった令嬢が男爵と離れた瞬間安心したような顔をしていた。


そしてこんな冷静に男爵のなぜモテないのかを分析している場合ではない。でも助けてくれるような友人もいない。


大ピンチだ。


「やあヴィリアーズ伯爵令嬢。ひくっ。私と一杯どうですか?」


ここで無視をするわけにもいかない。そして変に騒ぎ立てるようなこともしたくない。ここは一杯だけ付き合って逃げるほうがいいだろう。


「いただきます。」


「美しい方と飲む酒は最高ですな。 それにしてもこの間まで幼いイメージしかなかったのにここ最近はすっかり大人の女性になってウィンチェスター侯爵家のご令息が羨ましい限りだ。ひくっ。」


そう言って真っピンクの背景をしていやらしい目線を向けてくる。正直私はこんな目線を向けらるのは人生で初めてで早く逃げたいのに逃げられない。


「この間のドレス姿のときに是非一曲踊っていただきたかったのにあんなに早く帰ってしまうんだから。なんだか甘い香りがするな。ひくっ

今日は一曲踊っていただけますか?いや一曲と言わず二曲でも。」


そう言って腰に手を当てようとしてきた。


「メルバーン男爵、 私が離れている間に婚約者の相手をしてくれてありがとうございます。ティターニアも疲れたようですので2人で休憩してきます。」


触られると思って足が動かなくなったところでルーファス様が来てくれた。

エスコートしてくれるルーファス様の腕に震えた手をのせる。震えていることに気付いたルーファス様が小さく大丈夫か?と声をかけてくれた。


何も言えない私を一旦バルコニーへ連れ出してくれた。



「……すまない一人にして。」


「いえありがとうございました。助けていただいて。」


とてもこの後ホールへ戻れるような気分でもない。

この世界でもまた引きこもりになりたい。


自分なんてアンナの魔法に頼ってばかりでルーファス様になんて釣り合うはずもないのに悪あがきなんてしてみっともなかった。私はあの酔っ払いの男爵くらいしか話し掛けてもらえないような女なのだ。むしろ傍から見れば男爵のほうがお似合いだとかルーファス様のファンたちから言われてそうだ。


そんなネガティブな考えが頭を占領していく。



落ち着くまで星でも眺めようかとルーファス様が言ってくれて星を眺めているが、どんどんネガティブな考えは進むばかりで結局自分は前世から何も変わっていない。


冷たくなっていく身体をルーファス様が後ろからそっと抱きしめてくれた。


「嫌だったらごめん。」


嫌なわけない。何も言わない私だが震えていた身体がルーファス様の暖かさで震えが止まりルーファス様も私が嫌がっていないことがわかったようだ。


すると抱きしめている力を少し強め私の肩に頭を付けてきた。


「あんな男爵のことなんて考えないで私のことだけ考えてくれないか。


こんなに素敵な君を一人にした私が馬鹿だった。


初めから君に会う度に私の部屋に閉じ込めて誰にも見えないようにしたいと思っていたが本当にそうするべきだった。」



え、初めから?


ルーファス様がなんだか私のことを前から好きだったみたいに聞こえるけど、え?


「ル、ルーファス様??」


「ごめん、そんなことをしたら君の本当の笑顔は手に入らないか…。」


「いえ、そういうことではなくてルーファス様って私との結婚を心から望んでおられたのですか?」


後ろにルーファス様がいて背景を確認できないのが不安だ。

だから私のこと好きなのかのストレートに聞けなかった。


「……結婚もなにもこの婚約は私のわがままで父上を説得したものだ…。」


「え?」


全く想像していなかった事実に困惑している。


しかし思い返せば社交界デビューしてすぐにウィンチェスター侯爵から婚約話をもちかけられた。我が家としては有難いお話だし父は本ばかり読んでいた娘が格上のウィンチェスター家に嫁ぐなんてこんなチャンス二度とないと喜んでいた。


「こんなに可愛いんだ誰か他の男に取られては困るからあまり社交の場に君を同席させなかったのだが、今回ばかりはフィリップ殿下が連れてこいと言うものだから…。」



いつも口数が少ないのに今日は私が処理しきれないほどの情報次から次へと出してくる。


「あ、あの一度きちんとお話を

「顔をみたら話せない気がするし今は君を離したくない」


そう言ってぎゅっと抱きしめる力を入れてきた。


「こんな意気地のない男で愛想のない男だが君に私のことをみてほしいんだ。お願いだから私のことを好きになってくれ。」


もうすでに好きになって変な色仕掛けまでしているのにこんなお願いをしてくるルーファス様が可愛く思えてきた。


顔を見て好きだと伝えようと一旦離れようとしたら、離さないと言わんばかりに抱きしめたまま私の肩に置いてある頭を擦り寄せて首元にキスを落としてきた。


!?


きっと今私は頭の先からつま先まで真っ赤になっているだろう。


好きだと口にする代わりに抱きしめてるルーファス様の腕にそっと手を重ねた。


「ふふふ。」


恥ずかしいやら嬉しいやらで笑ってしまった。


「私は君に好きになってもらいたくて真剣なんだ。」


「すみません。じゃあ私の顔をみてティナたん大好きって言ってくれたら考えます。」


「…っ!あぁこんないたずらっ子みたいなところも可愛く思ってしまう…。」


笑っている私から離れ私の目の前にくると深く息を吸って緊張した面持ちで私の顔を見るルーファス様。


「ティナ……っちょっと待ってくれっ」


前からルーファス様が項垂れる勢いで私を抱きしめてきた。


「1分こうしてから頑張るから待ってて…。」


「ふふふ。嘘ですよ。……すでに私もルーファス様のこと好きですから。」



「へっ!?」


ルーファス様が私の顔を凄い勢いで見てきた。

ルーファス様の顔は今まで見たことのない真っ赤な顔をしていた。きっと今2人して真っ赤だ。



「へへへ。」


なんだか恥ずかしくて笑うしかない。

ルーファス様は信じられないという感じの顔でじーっと私の顔を見てくるものだからさらに照れる。


隠すようにルーファス様に抱きつく。


「だってルーファス様何考えてるか分からない顔してるのに私と会う時いつもお花飛ばしてるし……!」


やば。つい口が滑ってしまった。


「? お花ってなに?」


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