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お色気作戦

そしてフィリップ殿下の誕生日パーティーの日がやってきた。


この日のために私は身体の隅から隅まで磨き上げられ、髪もとぅるんとぅるんだ。念の為毎日胸が大きくなるようマッサージをしたり頑張ったんだが胸が大きくなることはなかった。


でも大丈夫私にはヌーブラがいる!


ヌーブラはやはり前世のようなズレを防止してくれるものはなくて少し不安なためアメリアにもパーティーに付き添ってもらうことにした。万が一にもヌーブラがズレてしまった場合一人でドレスを脱ぎ着できないためアメリアは会場のすぐ隣にある休憩室で待機してくれることになっている。


準備万端でルーファス様が迎えにきてくれるのを待つ。



そして19時になりルーファス様が迎えにきてくれた。


ルーファス様は会うな否や背景がピンクに変わった。

これはもしかして作戦成功か!


気を良くした私は軽い足取りでパーティー会場へルーファス様と向かった。


馬車の中で


「何だかいつもと雰囲気が違うな。」


綺麗だとか言えないところがルーファス様っぽいなと思ったがきっとこれが精一杯なんだろうと勝手に解釈した。


「はい。何となく気分で。」


全く何となくでも何でもないが、作戦を知られてしまえば水の泡になってしまう。


そしてまた馬車の中でもいつもの様にお互い無言タイムが始まった。今日に関しては色々とバレないように無言でいられるのはありがたい。


馬車は王宮に着きルーファス様がエスコートしてくれる。

また再びピンクの背景になっていてにやにやが止まらない。


パーティー会場に着くとアメリアと離れ中に入っていく。

するとルーファス様の背景がまた変わった。



何だか怒っている様な赤い炎が描かれている。表情はいつもと変わらないが何に怒っているのか不安になるが聞ける訳もなくただただ隣にいることしか出来なかった。


「フィリップ殿下に挨拶をしに行く。」


「はい。」


そして一緒にフィリップ殿下のところへ行った。

「やあ!ルーファス、ティターニア穣。よく来てくれた。

それにしてもルーファスこんなに素敵な婚約者がいて羨ましいよ。」


フィリップ殿下はルーファス様とは対照的で表情と背景がマッチしてるタイプだ。


「いえ、そんな。」


ルーファス様そこで素っ気ない返しをされると私まで悲しいぞ。自慢の婚約者ですくらい言ってくれてもいいじゃん。

別に殿下だって社交辞令なのに。


フィリップ殿下はルーファス様と同じ20歳で実はまだ婚約者を決めかねているらしい。候補のご令嬢は何人かいらっしゃるそうだが国王からしても早く身を固めてほしいと再三言われているようだ。


そしてフィリップ殿下は優しい背景からだんだんピンクの背景に変化していき、私はまたルーファス様がヒロインになる線を捨てきれないじゃないか!と心の中で叫んでいた。



ルーファス様の背景はダンスをしても何をしても赤い炎が消えなくていつもころころ変わるのにどうしたものかと考えていた。もしかして人混み嫌い系?

まあ好きそうなタイプではないよな。


炎が消えるどころか少しづつ大きくなっているのが分かる。


そうして挨拶するべきところを全て終えると足早に帰ることになった。


会場から出てアメリアにも帰ることを伝えるとルーファス様の背景がいつものお花に戻った。




ああ、この人はアメリアを置いてきたことを怒っていたのか。


いつもならアメリアは家で待っていて会場に来ることはない。ルーファス様も家に着いて、いつもなら制服姿であるアメリアが王宮に行くために着飾った姿を見て背景をピンクにしてしまっただけだったのか。


もしかしたら私の偽のスタイルを見て背景をピンクにしたのかもと考えた数時間前の考えを消し去りたい。


ルーファス様はアメリアのような女性が好きなのではなくアメリアが好きなのだ。


アメリアを真似たってアメリアになれるわけではない。

何となく悲しくなった。



別にルーファス様を心の底から愛していたわけでもないが、いずれ結婚するのだから距離を縮めたいと思うのは当然のことだろう。


でもこうなると、もしかすると婚約解消することだってあるかもしれない。だってこの婚約はウィンチェスター侯爵家にとって別に損もなければ得もない。そしてルーファス様がアメリアと結婚したからといって廃るようなウィンチェスター家ではない。それほどウィンチェスター家には力があるのだ。


いやきっとアメリアはそんなことできないと言うだろうな。

いつもならルーファス様可哀想〜とか思うはずなのに何故だか安心している自分がいる。


まあ自分が思ってるよりルーファス様を攻略するのは大変ということが分かったな。


何だか浮かない気分のまま馬車に乗り家まで送ってもらった。


「本日はありがとうございました。」


「…ティターニア」


そう言って何故かルーファス様が私の腕を引いた。


「!?」


驚いた私は抱きしめようとするルーファス様を押して距離をとった。


危ないところだった。もし抱きしめられでもされたら偽の胸がバレるところだった。


ふうと落ち着いていると目の前で大雨の背景になったルーファス様が固まっていた。


やばい失礼だったかな。


「またお茶会でお会い出来ることを楽しみにしてますわ!

ルーファス様帰り道もお気を付けて。」


そう言って笑ってみせるがルーファス様の背景は大雨から変わることはなかった。



私は自室に戻り胸がバレなかったことに安堵した。


ん?待て何でルーファス様は私を抱きしめようとしたのかしら。考える余裕ができて今更になって最も重要なことに気付いた。


え?私に好意をもっているの?

いやいやいやそんな訳なかろう。


と言いつつ期待してしまう…ふふ


ルーファス様をアイドルのような感覚でみていたから、もしルーファス様が私のことを好きだったらと考えるとくすぐったい気持ちとやっぱりそんな訳ないんじゃないかという気持ちを行ったり来たりしてる。



もしルーファス様が私を好きになってくれたらと思うといつもならだるいボディケアも頑張りたくなった。


よしすぐお風呂に入って美肌のために早く寝なきゃとドレスを脱ごうとして気付いた。



あ、ルーファス様はこの胸が好きだったのか。


今までルーファス様から近づいてきたことなんてなかったのに今日初めて近づいてきた。


いつもと違うのはこの胸だけだ。




さっきまで舞い上がってたのに一気に悲しくなった。



「はあ、お風呂めんどくさい…。」





◇◇◇



「それでそんな顔してるの?」


「………よくわかんない。」


「あら、その答えはよく分かってる人の言葉だわ。

ルーファス様のあの顔に憧れを持たない人はいないとか言ってたくせに、ちゃんと特別だったんじゃない。」


そうなのだ。ここに来て私は気付きたくない感情に薄ら気付いてしまった。


「う〜だって何考えてるんだろうとか思ってたら自然とそうなっちゃってたというか…。」


「自分の気持ちを自覚しただけでもティナには大きな進歩よ。」


たぶん前から好きになる要素なんてたっぷりあって、ルーファス様を好きになったらきっと後戻りできないのは分かっていたから何処かで心にブレーキをかけていたんだと思う。


結果ルーファス様は偽の胸だけみて私自身はみてもらえず失恋している。こうなりたくなかったのだ。


アイドルとかそういう感覚でいればルーファス様にもし好きな人ができてもかすり傷程度で済むと思っていたのだ。


「はあ、アンナに私の仮面を被ってルーファス様に会ってきてほしいわ。そうしたらきっとルーファス様も振り向いてくれるのに…。」


「無理に決まってるでしょ。

それにまだチャンスはたくさんあるでしょう?婚約者なんだから。」


「そうね……。」


この2年間チャンスはたくさんあったが全部ものにできていないという現実は見ないでおこう。


「ルーファス様も胸は好きだったわけだし、このまま偽乳でルーファス様との距離を縮めて頑張ったら大丈夫よ!」


「そうだった。最初はそのつもりだったのに。

よし!お色気作戦第2弾だ!」


「うんうん頑張ってティナ!」


「頑張りたいけど私の頭じゃ胸を大きくすることしか考えつかない。」


「………ティナらしくていいよ。」



それからアンナに上目遣いだとかうなじを見せるだとか色々とお色気術を伝授してもらった。




◇◇◇



そして決戦の日(お茶会の日)はやってきた。


今日は今まで通りふわふわとしたドレスを着ることにした。

ボディラインを強調したドレスはあの日の1着しか持っていないし、万が一ヌーブラがズレてしまっては大変だからリスクのあるドレスは懲り懲りだ。


今日は伝授してもらった上目遣いをさっそく実践してみる。


出迎えてくれたルーファス様をじーっと見つめ上目遣いをして目が合ったら軽く微笑んでみせた。するとはじめ小雨が降っていた背景で目が合ったが、すぐ目を逸らされてしまった。


「……っ よく来てくれた。部屋まで案内しよう。」


「お招きいただきありがとうございます。ルーファス様にお会いできることを楽しみにしていましたわ。」



なかなかお色気術は難しい。

先を行くルーファス様の後を追うが、いつも通り小さめのお花が咲いてきて安心した。ルーファス様も平常運転に戻ったのかしら。



「今日はミルクティーにしてみた。ミルクティーに砂糖ではなく蜂蜜を入れても美味しいらしく蜂蜜も今日は用意してみた。」


「!!私ミルクティーに蜂蜜を入れて飲むのが大好きなんです!」


ついつい大好きな蜂蜜入りミルクティーを出されお色気作戦は呆気なく終わってしまった。


でもルーファス様が少し微笑んだような気がした。気のせいだろうか?



「来月初旬の舞踏会にティターニアも同席してくれないか?」


「かしこまりました。」


「ドレスは送るからそれを着てきてくれ。」


「ありがとうございます。」


こんな事は初めてだった。そしてルーファス様の背景もいつもの可愛い小さめのお花ではなく、淡いピンクに汗汗みたいな背景になっていた。ルーファス様はやっぱりヒロイン枠なのかな?背景可愛いやつばっかりじゃん。




そしてルーファス様からのドレスが届いた。


深い青をベースに銀の宝石が散りばめられた可愛らしいドレスだ。ちなみにボディラインは隠されるようなドレスだった。


前回のお色気ドレスは嫌だったということを言いたかったのかな。ちょっとショック。


ルーファス様は綺麗なお姉さんが好きなくせに私にはそれを求めてはくれないのか。


まあまだアンナから伝授してもらった術が残っているから頑張るぞ!



まだまだこれからだーっと毎日鏡で上目遣いの練習をして、少しでも胸が大きくなるようにマッサージをするのであった。

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