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クールな婚約者が実は脳内お花畑だったんですが(笑)

今、私の目の前にあるものは何なんだろうか


バグか何かかしら?笑


いつもクールで無愛想な私の婚約者の背景がお花畑になってる…

この人こんなにすました顔で実は脳内お花畑だったんかい(笑)


私は今にも吹き出しそうな笑いを必死に堪えて口元をきつく結ぶのであった



◇◇◇


笑い転げたかったあの日より数日前のこと私はあることに悩んでいた


「乙女ゲームなら誰よりもやってきたのに現実の恋愛って何でこんなに難しいの!?」


この日は私の婚約者であるルーファス様との月に一度のお茶会があり、自室に帰ってきた私はふかふかのベッドで2年前から続く冷え切った婚約関係について頭を抱えるのであった。


──────ルーファス・ウィンチェスター。私の婚約者でありウィンチェスター侯爵家の嫡男である。


ルーファス様は煌めく銀色の髪に青色の瞳を持ち中性的な顔立ちにすらりとした姿は社交界でも人気を誇っている。

個人的には身長が高いのに耳が私より小さいところがツボで、友人からはマニアック過ぎない?と言われた。


初めてルーファス様にお会いした時は前世で徳を積んでもいないのに自分はなんて幸運な人間なんだと歓喜した。


前世の私はゲームばかりしていて社会貢献するような人間ではなかったが、別に他人に危害を加えるようなこともない平凡な人生だった。他人に危害を加えないというか他人との関わりなんてほとんどなかったというのが実情である。


そんな前世の記憶が薄らあるだけで特に人に自慢できる事もない私は今世もまた平凡な人生になるのかと思っていたのに、家同士の兼ね合いというもので婚約をした相手がなんとルーファス様だったのだ。


面食いの私はめちゃめちゃ神に感謝した。結婚したらあの顔面を毎日拝めるなんて夢のようだ。正直愛だの恋だの前世でもよく分からないまま死んでしまったため恋愛感情というのはピンとこないが、推しの握手会に当たった時ぐらい嬉しかった。


しかしそんな喜びもつかの間、ルーファス様との婚約関係は2年経った今も冷え冷えの関係で私は頭を抱えるのであった。

前世の記憶が多少ある分、前世の自分がもう少し徳を積むような人間だったらと後悔した。


月に一度のお茶会は婚約してすぐ、お互いの距離を縮めるようにというウィンチェスター侯爵のはからいによって始まった。


ルーファス様はいつもすました顔をされていて何を考えているか分からなかったが、最初のうちはそれもそれでかっこいい!と私は内心大はしゃぎしていたものだ。

あまり会話が弾まないのもまだ知り合って数回しか話した事がないんだから仕方ないわと思い、ルーファス様の好みのお茶や趣味など質問していたがお茶会を半年くらい重ねてだんだんルーファス様があまりにも話してくださらないものだから私もだんだん話さなくなってしまった。


無言の時間がただ流れるだけの苦痛な時間と化したお茶会では、ただお茶を飲むことしかやる事がないので最初はひたすらお茶を飲んでいたがトイレが近くなることに気がついた私はやたらとゆっくりお茶を飲むことにしている。

そうしていたら冷え切ったお茶をちびちび飲むことになり、空気も冷たいのにお茶まで冷たいというお茶会の出来上がりである。


ウィンチェスター侯爵家でのお茶会は初めの頃南部のフルーティーな香りのするお茶がよく出されていたのだが、最近は毎回違うお茶を出してくださるようになりそれだけが唯一の楽しみになりつつあるなんてルーファス様には言えない。



「はあ、ルーファス様と良好な関係になれる薬でもないかしら…」



そんな言葉が出て、ふといい案が浮かんだ。




◇◇◇




「アンナ!惚れ薬を作ってちょうだい!!」



私は行きつけである友人アンナの書店に来てアンナに惚れ薬を作ってもらえるようお願いをした。


アンナは平民だが多少魔法を使うことができるのだ。


アンナの書店はアンナ自身が書く恋愛小説も売っていて、品揃えもなかなか面白く通いつめていたらアンナと仲良くなっていた。


「ちょ、ティナ待ってどうしたの?」


「ルーファス様とのラブラブライフを手に入れるのよ!

もうこうなったら魔法に頼る以外ないじゃない!」


「ティナってほんと毎回変な事言い出すわよね。

人の感情を操る魔法なんて禁止魔法に決まってるじゃない。

そしてそんな暗黒魔法のようなものができる人間なんていないわよ。」


「……そうよね。」


この世界で魔法使いは珍しい。何百年か前はたくさんいたらしいが、一部の悪い魔法使いによって暗黒魔法と呼ばれる人の心を操る魔法などが広まり国が悪い魔法使いによって転覆させられそうになる事件が起きた。それからたくさんの魔法使いたちは殺されてしまい今では物珍しいものとなった。


もしかしたら魔法を使える人は私が思っている以上にいるかもしれないが、なんとなく魔法使いに良いイメージがないこの国では魔法を使えても隠す人も少なくないらしい。

アンナもその一人だった。


私がアンナが魔法使いであることを知ったのも出会ってから相当仲良くなってからであった。

他の店にはないような変わった面白い本がアンナの店にはあり3年くらい前から私は通いつめるようになった。

初めのうちは本の感想を言うくらいだったが、おすすめの本をアンナに紹介してもらったりしているうちにアンナが恋愛小説を書いていることを知り、前世でやった乙女ゲームをもとにこんな小説を書いて欲しいとリクエストするようになった。


それからアンナがネタに困ると使えそうなネタはないかとアンナからも意見を求めてくれるものだから私も楽しくなりノリノリで小説の設定やネタを一緒に考えるようになった。

やはり前世でやった乙女ゲームや読んだ漫画はこの世界にいる人たちには珍しく、何でそんなに面白いネタを思い付くの!天才!とアンナが褒めてくれる。

ごめんよアンナ、全部私が思い付いた訳ではない。


そんなある日もう少しお店の売れ行きを伸ばしたいのだがいい案はないかとアンナが聞いてきた。


「最近隣町にも書店が出来て本の売れ行きが悪いのよね…

ティナ何かいい案ない?」


「うーん…チラシでも配る?」


「店番頼める人もいないしそれは厳しいわ。」


「そうよねぇ…」


なかなかいい考えが浮かばず悩んでいたときに、一つ前世でもあったものを思い出す。


「アンナ!香水を売るのはどう?」


「え、なんで香水?ここは本屋よ?」


「違うのよ!アンナが書いた小説に出てくる王子をメロメロにした香水を作ってここで売るのよ!」


「なにそれ!面白そう!」


これはよくある戦隊物の変身ベルトをこれで君もヒーローだ!といCMに感化されてこぞって買う少年たちを思い出し何か近しい商品を作れば大ヒット間違いなしだなと考えたのである。



「別に本当にメロメロにならなくても甘い香りで可愛い見た目の香水ならきっとアンナの小説ファンたちも喜ぶわよ!」


「いやちょっと待ってて!!」


そう言ってアンナは何やら急いでお店の裏にある休憩室に行った。


そしていつもアンナが愛用している香水をもってきた。



「ティナ、今からこの香水をつけるから見てて。」


アンナはうきうきしながら香水をワンプッシュつけた。


そしたらなんとなくアンナから色気みたいなものを少し感じた。いつもの同じ香りなのにどういうことだろう。



「アンナこれいつも使ってる香水よね?」


「そうよ。」


「何かいつもより素敵なんだけどどうしたの?」


「ふふふ、香水に色気を増してくれる魔法をかけてみたの!見た目は変わらないけど何処と無く色気がある感じするでしょ?」


この時私とアンナは仲良くなって2年は経っていたが、今までアンナが魔法を使うところなんて見たこともなかったためてっきりアンナも普通の人かと思っていたのでとても驚いた。

驚き過ぎてあほ面することしか出来なかった。



「ティナ今まで隠しててごめんね。本当は私少し魔法が使えるの。」


少し気まずそうにアンナが言う。


しかし前世では魔法なんてなかったためこの世界にきて魔法が存在するということを知ったとき、一度でいいから見てみたいと思っていた。


「謝ることないわよ!アンナすごいわね!びっくりしてしまったわ!」


そう言って私が喜ぶとアンナは安心したのか表情が緩くなった。


「なんとなくティナになら言っても大丈夫かなと思ったけどやっぱり大丈夫だったわ。この国って魔法使いに対して偏見を持っている人もいるから何となく隠していたの。」


魔法使いが大量虐殺されたのは何百年も前ではあるけれど未だに偏見を持つ人もいてアンナもバレないように必死に生きてきただろうにそれを私に話してくれるなんてすごく勇気のいることだったろうと思うと私もアンナに自分の身分を隠していたことが不誠実なのではないかと思い始めた。


「誰にでも隠したいことはあるわよ。


現に私もアンナに言えていないことがあるんだけど…」


「ティナが言いたくないなら私は気にしないわよ。」



「ううん。アンナに聞いて欲しい。

実は私平民ではないの。ティナという名前は愛称でティターニア・ヴィリアーズというのが私の名前なの。」


前世の記憶がある私にとって貴族社会での淑女としての生活はあまりに窮屈であった。

だからせめて街へ出かける時は平民のフリをして思いっきり笑ったりマナーも気にせず食べる料理を楽しんでいたのだ。


そんな時アンナの店でアンナの書く面白い小説に出会った。


前世でも漫画やアニメが大好きだった私にとってアンナの店は大のお気に入りになった。


そしてこの世界に来てから初めて心の底から笑い合える友達アンナに出会った。



「申し訳ありません!ヴィリアーズ伯爵家のお嬢様とは知らず無礼な態度を取ってしまい

「アンナ違うのよ!私はアンナと普通に笑ったり出来るのが嬉しくて身分を隠していたの。だからお願い今まで通りのアンナでいて!」


アンナが態度を改めてようとしているところを堪らず止めてしまった。アンナとは友達でいたいのだ。


「完璧な淑女を求められるのは家だと当たり前で少しでも息抜きしたくてアンナに会いに来てるの。だからお願い。」


「本当にいいの…?」


「いいも何も私は絶対アンナとはずっと友達でいたい。」


「私もティナとはずっと友達でいたい!」


「ありがとうアンナ。」



こうして私たちは更に絆を深め、惚れ薬を作ってくれなんていう無茶なことまで口にできるような関係になった。


後に前世の記憶があることも明かし、今までのアイデアは前世にあったものだと種明かしをした。


そしたらアンナはその話に興味津々でどんなゲームだとか漫画とは何かとか色々話すうちにアンナもオタクになってしまった。

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