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デブサイクと言われる内気な旦那様ですが、中身は素敵な方なので見た目も改造しちゃいましょう!

作者: 下菊みこと

フロランス・エマニュエル。エマニュエル侯爵家の長女である彼女は、大変家族思いである。両親のことは心から尊敬しているし、可愛らしい弟妹達五人を何よりも大切にしている。だから、彼女が今回の契約を受け入れるのはもはや当たり前のことだった。


マクシミリアン・レアンドル。レアンドル公爵家の一人息子である彼は、生まれつき身体が弱くあまり運動が出来なかった。そして彼の両親はそんな彼を心配して精のつくものばかりの食事を摂らせた。結果としてぶくぶくと太りせっかくの整った顔立ちも肉に埋もれた彼は、だんだんと内気な性格となっていった。


そんなマクシミリアンはその見た目と内向的な性格故に勝気な元婚約者から振られた。奔放な元婚約者は幸せそうなご様子である。その代わり慰謝料はもぎ取ったが、元婚約者の家もレアンドル公爵家ほどではないがお金持ちなので特に痛手にはならなかったようだ。


そしてマクシミリアンはその後新しい婚約者がなかなか見つからないため、心配したマクシミリアンの両親が歴史と爵位はあるが浪費好きだった先代の残した借金まみれのエマニュエル侯爵家の長女、フロランスに声をかけたのである。


そんなこんなで声をかけられたフロランスも、いくら侯爵家の人間とはいえ借金まみれの家との婚約はちょっと…と敬遠されていたので適齢期に結婚出来てラッキーくらいに考えていた。しかも、レアンドル公爵家はマクシミリアンの元婚約者からもぎ取った慰謝料全額を結納金としてくれるというのだから、乗らない手はない。借金全額を返せるどころか手元にもいくらかは残る。堅実な両親ならばきちんと運用してくれるだろう。


ということで迎えた結婚式。お互いになんだかんだと忙しくきちんと顔を合わせるのはこれが初めてだった。


「エマニュエル嬢、こ、これからよろしくね」


「フロランスとお呼びください、旦那様」


「だ、旦那様かぁ…君みたいな可愛い子にそう呼ばれると嬉しいな。で、でも本当に僕でいいのかい?」


「もちろんです、旦那様。仲良くしてくださいね」


「そ、それはこちらのセリフだよ!フロランス、大切にするね」


内向的な性格ではあるが、短い会話からも優しさが滲み出るマクシミリアンにフロランスはなんだかとても可愛らしいモノを見たときのあの気持ちになった。


つまりはまあ、フロランスはマクシミリアンの内面を見て惚れ込んだのである。


結婚式の後の初夜。マクシミリアンはフロランスに言った。


「ぼ、僕はこんな身体だから、君にのしかかると潰してしまいそうで怖いんだ。スピード結婚だったから君の心の準備もあるだろうし、初夜はまだ待って欲しくて…」


「でしたら旦那様、心の準備をする間に痩せちゃいましょう!」


「え、で、でも、僕は運動は…」


「大人になってからは身体も大分丈夫になったとお伺いしました。それならむしろ、運動して痩せた方が身体のためです!」


「そ、そうかなぁ」


マクシミリアンは割と嫌がっていないと踏み、フロランスはさらに続ける。


「食事の内容も考えましょう。私、実家ではよく献立を考えて料理を作っていたんです!」


使用人を雇うお金がなかったためである。結納金をもらい借金を全額返済した今のエマニュエル家ならすぐに雇えるようになるだろう。


「じゃあ…お願いしようかな」


「旦那様が乗り気で何よりです!」


ということでフロランスのマクシミリアン改造計画がスタートした。


ー…


「旦那様、今日の朝ごはんは野菜のスムージーとスクランブルエッグ、パンになります」


「…スムージー?す、すごい色だね…?これは飲み物なのかな…」


「はい。健康に良い野菜と果物で作った飲み物です!味は保証しますので頑張りましょう!」


「…わ、わかったよ。僕のためにありがとう、フロランス」


「えへへ」


ー…


「旦那様、今日のお昼ご飯は野菜のスムージーと卵とベーコンと野菜のスープ、パンと、そしてステーキになります」


「肉を食べてもいいの?痩せないといけないのに」


「たまになら大丈夫ですよ。栄養はバランス良く、です!」


「フロランスは色々なことを知っているね。シェフと一緒に作ってくれた料理もとても美味しいし、フロランスはすごく素敵だね」


「えへへ」


ー…


「旦那様、今日のおやつは野菜のスムージーと野菜のケーキです」


「野菜の…ケーキ…?えっと…フルーツじゃなくて?」


「一口どうぞ!」


「…美味しい」


「でしょう?」


マクシミリアンは瞳を輝かせる。


「フロランス、これ商品化しよう!売れるよ!我が領地の野菜をもっと売れるようになる!」


「えっと、お役に立てて何よりです!」


「フロランス、君は天才だ!君と結婚出来て良かった!」


「えへへ」


ー…


「旦那様、あとスクワット十回で終わりですよ!頑張って!」


「いきなりスクワット百回とか…無理だよ…うう」


「頑張ってください、旦那様!」


「…百!よし、解放されたぁっ!疲れたよー」


「では、少し休んだら腹筋も鍛えましょう」


「…!?」


ー…


「旦那様、今日の夕食は野菜のスムージーとシャケのムニエル、ツナサラダにパンとなります」


「野菜のスムージー率高いね?美味しいからいくらでも飲めるしむしろ嬉しいくらいだけれど」


「だって、一番簡単に野菜を食べられるんですもの」


「フロランスは本当に頼りになるよね。いつもありがとう、フロランス」


「えへへ」


ー…


そんなこんなで一ヶ月。薄味で野菜もたっぷり使った料理を新鮮に感じ、何を出しても美味しいと言って平らげたマクシミリアンにますます惚れ込むフロランスである。そして栄養のバランスが整ったレシピと筋トレの効果は身体にも現れて…。


「旦那様!お肉に埋もれていたお顔が見えるようになりましたね!美形ですね!」


「あ、ありがとう、フロランスのおかげだよ。大好きだよ、フロランス」


「いえいえ。…でも、痩せて美しくなった旦那様は引く手数多でしょう?…私と離婚されて、もっとお美しい方と結婚されますか?」


「…!?嫌だ、フロランス、捨てないで!ごめんね、僕何かしちゃったかな!?本当にごめんね!?誠心誠意反省するからそんなことを言わないで!」


「え?」


「僕はここまで尽くしてくれたフロランスが大好きになったんだ!フロランスだけを愛しているんだ!」


強く強く抱きしめられるフロランス。普段大人しいマクシミリアンの熱烈な愛の告白に、心がときめいて仕方がない。


「…旦那様」


「フロランス…大好きだから、どこにも行かないで」


「旦那様が、私が良いと言ってくださるなら、いつまでも側に居ます。さっきの言葉は忘れてください」


「!…わかった、忘れるね。…愛してるよ、僕のフロランス」


「私も、いつも私を気遣ってくれる優しい旦那様が大好きです。愛しています」


こうしてマクシミリアンとフロランスはようやく本当の意味で結ばれた。子宝にも恵まれて、愛のある素敵な家庭を築いていく。


エマニュエル家も、借金が無くなり堅実な領地経営を続けたことで裕福になった。フロランスの弟妹達は裕福になったことでさらに可愛らしさが増したようにフロランスの目には映る。フロランスの両親は可愛い孫が出来て、お金の心配も無くなり幸せの絶頂である。マクシミリアンの両親も孫に恵まれ幸せそうである。


みんな幸せになる素晴らしい結婚だったと言えるだろう。


マクシミリアンの元婚約者はその奔放さが仇となりとうとう実家から勘当されたようだ。しかし大量のポケットマネーを寄付金として持参して入った修道院でも、割と好き勝手に暮らしていてそれはそれで幸せそうだという噂である。


「フロランス。僕の妻になってくれてありがとう」


「旦那様こそ、私を愛してくれてありがとうございます」


「お父様ーお母様ー、抱っこー!」


「抱っこしてー!」


「ふふ、可愛いんだから!ほら、おいで!」


「おいで」


これからも二人は愛する家族と共に、愛に溢れた幸せな暮らしを送るだろう。

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