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 あ~やっちゃった~!

 馬鹿なのかな私、どうしてあんなこと言っちゃったんだろう。

 手汗かいてないかな? でも、もしかいていたとしても言いにくいよね空くん……。


「お、もうそろそろ始まるな」

「そ、そうだね」


 現在はもう19時過ぎで花火が上がるのを待っている状況だった。


「ね、ねえ、離さないの?」

「はは、罰なんだろ? だったら最後まで遂行しなくちゃいけないだろ」

「ひ、人が多いからっ」


 この1時間くらいで沢山の子とすれ違った。

 中には学校の子たちなんかりもいたりして、ついつい空くんに貸してもらった帽子を深くかぶってしまったりもした。

 ちなみに離さないのかという問いをしたのはこれが初めてではない。……そのことごとくを「罰なんだろ?」とかわされてしまったが。

 ……私から言ったことではあるが、そう何度も「罰」と強調されると本当は嫌なんじゃないかって不安になってくるものだ。


「京佳、ちょっとあっちの方に行かないか」


 彼が指差した方は人が全然いない、それどころか花火も見づらくなるような場所。


「気になるんだろ? これは離せないけど、距離を作れば恥ずかしくならないだろうと思ってさ」


 こくりと頷くと彼が優しく私を連れてってくれた。

 実を言うとここは会場内にも関わらず暗くてちょっと怖い。

 そういう意味では手を繋いでいる状態なのは好都合ではある。


「正直さ、花火なんかどうでもいいんだよな」


 祭りの醍醐味を否定するとは大胆だった。

 今日はなんだろう、側にいると落ち着かない。

 これは彼が積極的だから、だけでは説明のできないことだ。

 けれど、私の内側にあるモヤモヤを晴らしてくれるんじゃないかって期待している自分がいるのは分かっていた。


「俺さ、京佳があのとき来てくれて普通に会話してくれたとき、凄え嬉しかったんだ」


 申し訳ないがきっかけは猫がいたからでしかなかったのだ。

 アレクサンドラや黒くん、その他様々な模様、違う体毛の猫たちに惹かれて入り浸っていたら彼に出会っただけで。

 残念な点であり好都合だった点は、私が彼のことを全然知らなかったということ。そして、猫を愛でていたら自然と声をかけていたということ。


「残念ながら俺には友達がいなかったからな」

「知ってるっ」

「明るい声で言われるのは微妙だな……。ま、そういうわけで、友達になれて嬉しかったんだが確証がもてなくてな。そんであれだ、あの始めのすれ違いだ」


 そう、私が一方的に友達認定しているだけだと思ったら寂しくなってしまったんだ。そのため結果的に構ってちゃんみたいな人間になってしまった。


「縁を優先したら怒ってきたこともあったよな」

「だ、だって行きたかったんだもん」

「その割には終わらせにきてたけどな」

「お母さんに逆のことを言ったらお父さんと上手くいったって聞いたから実践してみたら簡単に諦めちゃうんだもん空くんが」

「しょうがないだろ? 京佳が望んでいるならって考えたんだからさ」


 あのときはついつい彼のせいにしたが、全部私のせいじゃん!

 恥ずかしい……というかなんで今更そんな蒸し返すようなことを言うんだろう。も、もしかして「もう友達やめる!」とか言われないよね? そうだったらお祭りがトラウマ行事に早変わりだけど……。


「あれ、始まったな」

「そうだね。綺麗だね」


 正直に言って私も花火どころではなかった。

 何故このタイミングでこの会話なのか気になって仕方がない。

 言うならせめて早く言ってほしい。言わないならきちんと口で「そうじゃないよ」と伝えてほしかった。

 ――流石に暗い場所とは言っても上空の華のおかげで照らされている。

 上空を眺める彼の顔は楽しそうなものではなく、少しだけ真剣味を帯びている気がした。

 せめて見るなら楽しそうな顔をすればいいのにと思う反面、その横顔に見惚れてじっと眺めてしまう私がそこに……。


「京佳」

「な、なに?」

「俺、いまからやばいことを言うから、嫌ならなにも言わずにここから去ってくれ」


 え、そんな言い方をされたら怖くて仕方なくなるじゃん。

 華の光に照らされているとはいえ依然として暗い場所で不安だというのに。

 それにやばいことってなに? 告白とかそんなのじゃなくて、欲情しちゃったとかそういうのかな?

 私に欲情……抱きしめ、キス……むりむりむり!

 すぐそういう短絡的な思考になってしまう私が致命的ではあるが、怖い、逃げ出したいという思いが強くなる。


「好きだ」


 バンッという音がすぐ後に響く。

 まるでアニメや漫画のワンシーンのようだった。

 私が呆然としていると彼が人混みの方を指差す。

 去りたいなら去れということなんだろう。


「……あのさ、いつから?」

「んー、正直に言って最初の頃からなんじゃないのか? 簡単に言えばずっと一緒にいたかったし、嫌いって言われたら堪えたしな。他の人間に悪く言われたり冷たい態度でいられるのは別にもうどうでもいいんだけどさ、京佳からのはそうじゃなかった。それってそういうことなんじゃないかって夏休みに考えててさ、それで今日いい雰囲気になったらするって決めてここに来たんだ」


 私も同じように空くんといたかった。

 何度も言うが本当に最初は偶然だったんだ。

 でもいつからか一緒にいたい欲が上がっていて、小さいことで嫉妬したりして困らせてしまった。

 本当に困るのは出会ってからやっと1ヶ月くらいが経過しようとしている、というところなんだけど。

 ま、まあ、細かいことはどうでもいい。

 色々なことがあったけれど、私たちはこうして一緒にいて、彼は私に告白してくれて、私も嫌だとは思っていなくて。

 それどころか抱きしめながら「私も好き!」なんて言おうとしている自分がいるんだけど、恥ずかしくて躊躇してしまって。


「少なくとも去らないってことは好意的と捉えてもいいのか?」


 なんで私は彼といたいと思ったんだろう。

 本当は猫好きで猫を見つめるときの目がキラキラしていて可愛いとか、こちらが酷いことを言っても関係の続行を選んでくれる人だったからとか、不意に見せてくる真剣な顔が格好いいとか、

色々あるけれど、これだ! という答えが見つからない。

 でも、他の子では考えられない。単純に同じくらい一緒にいれば変わるかと言われればそうでもない。そもそも私たちだって1ヶ月ちょっとしか一緒にいないし。


「な、なにか言ってくれよ」

「あ……えへへ、先に言われちゃった」

「と、ということは……」

「あのね、空くんを好きになった理由が明確には分からないんだけど」

「ま、まじか……」

「聞いて聞いて。分からないんだけど、キミじゃなきゃいけないってことは分かっているよ。私がキミと出会ったように偶然というのはあるかもしれない。他の子と1ヶ月ちょっと喧嘩したり仲良くしたりしたら変わる――変わらないなんて絶対なことはないから言えないけどさ。でもあれじゃん、ここ最近はずっと空くんだけ一緒にいた。だからそんな例を話したところで無駄なんだよね。私から口にしたんだけどさ」


 矛盾していることなんて私でも分かっているけれどね。


「出会ったからずっと空くんといたかった。行けるときは必ずキミの側に行っていた。だから、それが答えだったんだよね、だからこそ友達じゃないって言われたとき悲しかったし、縁ちゃんを優先されたときは醜く嫉妬したしさ。というわけで、私でよければよろしくお願いします」

「……抱きしめてもいいか?」

「いいよ」


 あ、ちょっと体震えてる。

 体が大きいのに奥手なところがあるし、そこも可愛いかも。


「好き」

「俺もだ」

「――って、いつの間にか花火終わってる……」

「はははっ、俺らはなんのために会場に来たんだろうな」

「多分後押ししてほしかったんだよ。終わってるしもう帰ろうか」

「……いや、まだよくないか? もう少しくらい余韻に浸っていたいんだ」

「あははっ、そうだね、それじゃあそうしようか」


 とはいえ、抱きしめられながら過ごすというのもこそばゆい。

 だからお願いして手繋ぎ状態に移行した。

 いつもなら楽しいイベントが終わってしまって寂しくなるところなのに、今日の私の中には暖かさだけがそこにあって。


「というかさ、さっきのって私が言うべきセリフじゃない?」

「いいんだよ、ふたりきりでいたかったんだからさ」

「ふふ、まあいいけどっ」


 そう言ってくれるのは素直に嬉しい。

 ずっとこうして求めてくれていればいいな。

 そのためには私からも言ってあげるべきかな? 抱きしめてあげるべきかな? ――とか、してあげるべきかな?


「ちょいちょい」

「ん? どう――」


 ……初めてしたけど、そこも暖かいんだな。

 あと性差関係なく柔らかいのだということが分かった。 


「告白してくれたお礼っ」

「……それでも不意にするのはやめてくれ……やばいから」

「やばい?」

「ま、まあ、細かいことはいいだろ。さて、そろそろ帰るか」

「そうだねっ」


 やばいのはこっちなんだよなあ。

 差し出してくれた手をなんとか握れたけど、見ることができない。


「手、熱いけど大丈夫か?」

「……うん、大丈夫」

「そうか。ならできるだけゆっくり帰ろうぜ」

「うん!」


 良かった。

 私が読んでる少女マンガみたいな展開にならなくて良かった。

 流石にまだこの先はできないしね。

 こうして一緒に歩んでいければいいと思う。

 特別なことはたまにでいい、空くんといられればいい。


「焼きそば美味かったよな」

「うん、たこ焼きも美味しかったよ」

「あとりんご飴とかな」

「綿あめも!」

「はは、俺ら食ってばっかりだったな」

「確かにね。明日からご飯の量減らさないと」

「いいんだよ、それにいまくらいが1番好きだからな」

「あ~、いまのなんかえっちな言い方じゃん」

「男というのはそんなもんだ」


 空くんに可愛く見られたいからダイエットしたいと言ったときもお母さんからいまのままが1番理想だって言ってたしそうなのかも。

 私は決めていた予定を崩し空くんと過ごすという予定に上書きしつつ、空くんの家まで仲良く帰ったのだった。

読んでくれてありがとう。

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