あの人の力④
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夢の中なのだろうか。なにか声が聞こえる。おじいちゃんの声?でも死者と対話してはいけないのではなかったのか?
「ようこそ、“君の”夢の中の世界へ。」
あ、あの人だ。あの人の声。でも声しか聞こえない。何故?
「君のおじいさんと話した。」
唐突にその人は話し始めた。
――君は本当に愛されているのだと分かったよ。僕でさえ見たことがない。あんなに大きな愛を抱えている人は。言っていたよ、おじいさんは。隠れて涙を流すのはやめろとね。生前に君に言ったことは全て嘘偽りのないことだ、お前を一番信頼しているし、お前が遺志を継いでほしいと。それで僕は訊いてみた。もし僕がお嬢さんを病院から連れ出したらなんと言うかとね。そんなこと言ったらおじいさんはさぞかしお怒りになるだろうと思ったが、違っていたよ。
――え?そもそも連れ出すって何ですか?
――たとえ話だ。ちょうど助手を探していたんでね。
君のおじいさんは、君の人生は全て自分で決めろと言っていた。僕も意外だった。気難しそうな人だと思っていたからね。病院を継ぐも継がないも、君の判断に委ねるとね。彼、君のお父さんにはかなり歩む道を強制してしまったと嘆いていたよ。だから君には自由に生きてほしいと思ったらしい。
涙がまた出てきた。
――堂々と泣けばいいさ。それが君の尊敬し、愛する人の願いだからね。君ならできると彼は思ったのだろうからね。
――ありがとう、ありがとう、おじいちゃん…