あの人の力②
コイツ!いままでそんなこと言ってきたやつ一人もいなかったんだけど!失礼でしょうが!命助けてもらったんだから、お礼くらい言いなさいよね!
「申し訳ありません!実を申しますと、うちはそんなにお金がございませんでして、あの、病院経営というのも、難しいものでございまして、ですが、毎日お手入れをしておりますので問題はございません!ご安心ください!」
「いや、そういうことを聞いてるんじゃなくて、ききかたが悪かったかな…やっぱなんでもないや。俺の聞きたいことを理解するのは結構時間がかかるだろうから。」
何処までもムカツクやつだなコイツ!はっ!コイツだなんて言っちゃだめよ、クレールったら!もうすぐお嫁さんになるんでしょ!
「そ、そうですか。では安静にしてお過ごしくださいね。」
ふう。何とか切り抜けた。クレールは部屋を出ようとした。すると、その人が呼び止めてきた。
「あのー、肉親を亡くして辛い中、俺なんかの治療をしてくれてありがとう。」
え?わたし肉親を亡くしただなんて言ったっけ?もしかしてこの人親戚とか?それともおじいちゃんの遺産を狙ってる悪人とか?
私が戸惑っていると、その人は言った。
「あー、俺、わかるんだ。その家とか近くで人が死んでるとすぐに。あ、別にここがすごいくっさいからとかじゃないよ。なんかふつーにわかるんだ。悲しみがそこから感じ取れちゃうから。まあ…」
私は気が付くと泣いていた。おじいちゃんが亡くなったことを思い出したから?こんなことでくよくよしてどうするのか。でもあふれる涙は止まらない。
「大丈夫⁉なんか思い出させちゃったかな。ごめんね。」
そんなことを言われるとさらに泣きたくなってくる。
「おじいちゃぁーーん!なんで死んじゃったの!!」
私は子供のように泣き始めていた。なんで患者さんの前で堂々と泣けるんだろう。この人だからかな。この人の声は、やさしい。なんだか余計におじいちゃんを思い出してしまって涙は止まらない。すると、突然、その人は口を開いた。その人が言ったことはわけのわからない内容だった。