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第一章 あの人の力

道端で倒れてうずくまっていたあの人。なんなのかしら。さっきからうわごとばっか言ってて、やっと目を覚ましたと思ったらありがとうの一言も言わないでずっと手を見つめてるだけだし。なんだよ、せっかく助けてあげたのに。おじいちゃんが死んじゃってそれを悲しむ暇もないまま患者第一号を迎えなければいけないなんて。でも仕方ない。それがおじいちゃんの遺言だったから。私が亡くなるときまでそばにいてあげて、おばあちゃんの次におじいちゃんのことをよく知っていると思っているから。おじいちゃんの言うことはいつだって正しかったから。おじいちゃんやおばあちゃんに診療や看護のイロハを教えてもらったから。誰よりもおじいちゃんのことを尊敬しているし。

 急に涙があふれてきた。いままでがまんしていたのに。

 でもその涙は一瞬で引っ込んだ。あの人のせいだ。

「あのー、あなたが助けてくださったんですね、どうも。みたところ大きな家のように見えますが、なんでこんなにベッドが粗末なんですか?」

 ナンダコイツ。追い出されたいの?いま追い出したら衰弱でアンタ死ぬわよ。お金も持ってなさそうだし。

 ダメダメ!それはおばあちゃんに教えてもらった看護の基本三箇条第一項、どんな人でも見捨てたり、追い出したりしてはいけない、に反する。ここは怒りをおさえて、基本三箇条第二項、笑顔で接する、を守って顔を上げる。

「はい。あのこちらは一応病院なんですよ。私が往診にいった帰り、あなたが道端でなにかおっしゃいながらうずくまっていらしたので、かなりの衰弱状態なのかな、と思い、病院にお連れいたしました。」

完璧だ。敬語も間違えなかったし。多分伝わった。

「あのー、俺、意識失ってたんですか?」

がくっ。でもこれはよくあることだと聞いた。きっと目覚めたばかりで記憶が混濁しているのだろう。これにも笑顔で答える。

「はい。栄養不足のようでしたので、わたくしどもが誠意をもって治療にあたらせていただきました。」

「ふーん。俺最近記憶がよく無くなるから、よく覚えてないんだけど、要するに助けてくれたわけだね。」

「はい!もうすっかり容体も安定してらっしゃるようですし、今日は一日点滴をして、明日の朝には退院できるでしょう。」

決まったーーー!私また成長したかも!

「で、このベッドが粗末なのはなんでなわけ?」

「へ?」


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