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きよし、黄金水の計を説く

【前回までのあらすじ】

 主人公のきよしは、水洗便所に流されて絶命。死んだ爺ちゃん(うんこ神)のおかげで剣と魔法の世界に転生した。清はパンダ獣人のパンパンと依頼をこなす中、自分が「うんこがたまるほど強くなる、かつ、うんこの性質を追加能力にする」ということを知る。次の依頼の最中、野球帽の少女エーリカとオネエ熟練戦士ルアーナとパーティを組むことになった清とパンパン。彼らは冒険者武闘大会『ギルドバトル』に参加する。無事に予選を通過した清たちは、ついに本戦を迎え、一回戦の強敵マックスに死闘の末勝利した。次の相手は第四シード、さらなる強敵を前に清は卑怯作戦を計ずる。


挿絵(By みてみん)


『さぁ、運命の決戦が始まりました。本日第四戦目、第四シードのトロピカルばんびーずVSアナルパンダぶりぶりーず! この試合の実況は私、ぴよよんがお送りさせていただきまーす! 本日の解説は、ベーア・ゾンシーさんです! よろしくお願いします!』


『どうも、よろしくお願いします』


 なんかまた、一癖ありそうな実況者だなぁ、オイ。あのしきりに俺のことをディスる煮卵みたいな解説者は、病気になったのか。ざまあみろだ。人の悪口で飯が食えると思うな。


「試合開始だァ! 少しは楽しませてくれよなあ!」


 露出の多い民族衣装を着たガオンは、白い犬歯を剥き出しにして残忍な笑みを浮かべる。そして、思わず息を飲んでしまいそうなのは、しなやかな両腕で構えるのは大斧があまりの迫力だったからだ。試合用だから刃がないけど、一撃を許したらただごとでは済まない気がする。


 一方で、ワオンは短刀ククリ、ニャオンは鎖鎌を手に持っている。パオンは手ぶらだ。ガオンのギフトの数合わせなだけで、戦力としては数えられていないのだろう。そのギフトの詳細についても、既にパオンから話を聞き及んでいる。


 ガオンのギフトは、決意を共にするもの(スターコマンダー)。共通の敵と戦う味方の数に応じて、自分の気が倍増するというものだ。ただし、最低三カ月以上の時間を共に過ごしていないと、味方と判定されない。強力なギフトだが、それだけ制限も厳しいというわけだ。最初は小手調べのつもりか? ギフトを使っている気配はない。


「いいな、作戦通りにいくぞ」


 俺は、パンパンとエーリカたんに目配せする。最初の作戦は、とにかく逃げ続ける、だ。二人ともしっかりと頷く。今日のパンパンは作戦を踏まえ、足の裏に穴が開いた物珍しい靴を履いている。エーリカたんは、相も変わらず野球帽、そして魔法服にマント。かわいいけどね。


「作戦? んなもの使わせねえよ! オラぁっ!」


 ガオンが大斧を大きく振りかぶると、磨かれた側面にスタジアム外の夕陽が反射する。彼女は地面を逞しい大腿を活用して地面を思い切り蹴ると、俺の方へそのまま突進してくる。それに追随してワオンとニャオンも迫り来る。パオンは隅で大人しくしている。部外者が迷いう混んじゃったみたいで少し笑える。


 俺は小さな声で呟く。


「――便性変換ブリブリストル・コンヴァージョン彗星の申し子(ウォーターテール)


 体全体を蒼い魔力が渦を巻くように包み込む。このスタイルはとにかくスピードに優れるということが、実験で分かっている。ジェット噴射の要領だ。


『出ました! 先日の試合でも見せた御手洗選手の能力の一つです! 植物系能力者かと思いきや、ころころと変身する御手洗選手です。ベーアさん、彼はどういったギフトなんでしょうか』


『えー、あのですね。冒険者ギルドによればですね。彼はうんこ神によって転生しているんです。ラミレスさんは植物系能力者と言ったかもしれませんが、それは、彼の勝手な予測でありまして、問題の本質としましては、何かうんこに関わる能力なんでしょう』


『うんこと多彩な能力とどう関係があるんでしょうか』


『わかりません。これから明らかになるのではないでしょうか?』


 ガオンの後ろの二人は左右に散開する。おそらくそれぞれがエーリカたん、そしてパンパンと相手するつもりなんだろう。斧を振りかぶったガオンが俺の目の前で飛翔する、背が高いからよく見るとおっぱいが大きいし、お腹も引き締まっている。性格抜きにしてみれば、顔も整っているのにもったいない。


「だああっ!」


 俺に向かって頭上から振るわれる大斧を、半身だけずらして寸前で躱す。まだギフトを使っていないからだろうか、全力の兄貴より全然早くない。躱した斧は地面に激突し馬鹿みたいな衝突音を響かせる。俺はジェット噴射で次の斧が振るわれる前に、ガオンの後ろ側に回り込み距離をとる。


「チィ! 思ったよりもすばしっこい野郎だな」


「あんな馬鹿でかい斧に当たったら堪えるからな」


 通りすがりざまに、水しぶきもたっぷりかけておいた。日が沈んだら冷えるぞ。


 パンパンの周りに多数のたけのこが転がっている。というかパンパンが浮いている。足の裏から大量のタケノコを出しながら。


「こらー! 降りてこいワン!」


 その下でワオンが悔しそうに唇を噛んでいる。タケノコを発射する反作用で体を飛ばしているんだろう。俺のジェット噴射と同じ要領だ。パンパンはワオンの上まで飛ぶと、タケノコの雨を降らせる。


「あだだだだ! 痛いワン! 卑怯者! 正々堂々戦うワン」


 パンパンの方はうまくいってそうだ。エーリカたんの方はどうかとみると、砂を全力でニャオンに投げつけている。凄まじい肩の力で投げつけられた砂は小石が礫になってかなり痛そうだ。


「あいた! 砂で見えなくて! 鎌が当たらないニャン! あたたた!」


 よし、いい感じだぜ。っと! 斧の横なぎな水平斬りをジェット噴射で真上に回避する。そしてそのまま後ろに大きく距離をとる。


『WOOOOOOOO!』


 俺のアクロバティックな動きに歓声が沸き起こる。二撃目も避けられたガオンは訝しむような視線で俺に問いかける。


「かかって来いよ。逃げてばかりじゃ時間の無駄だ」


 もちろん俺は問いかけには応じない。無理したところで危ないだけだしな。機が来るのを待つだけでいいんだ。


「お前がそう思うならそうなんだろう。お前の中ではな」


「てめぇ!」


 俺たち三人が回避行動に専念して十五分ほどたっただろうか。まず、ニャオンとワオンにその時が来た。


 パンパンとエーリカたんを追っていた二人は肩を上下させながら、立ち止まる。


「ガオンさま……おしっこしたいワン……」


「ニャンも……」


 二人は不安そうな表情で内ももをもぞもぞとこすり合わせている。俺を追撃しようとしていたガオンは、それを止め二人の方へと振り返る。


「こんなときになんでだよ! いつも試合の前にトイレを済ませておくように言ってるじゃん!」


「ごめんなさい、ガオンさま。トイレが工事中だったニャン」


「ワンも別のところ探したけど、そこはおばさんの行列で入れなかったワン」


 ――クックックッ


 きたぞきたぞきたぞきたぞぉ! でかしたぞパオン! 


 これこそ御手洗流鬼畜作戦その一、名付けて黄金水の計! パオンによれば、トロピカルばんびーずの三人は試合前に必ず用を足す。それを偽トイレ工事、そして観客のトイレ難民の巧みに誘導、彼女らの控室付近の女子トイレを封鎖する。


 さらに黄金水の計は二段構えである。事前のトイレ封鎖に加えて、パオンが食べ物に大量の利尿薬を混ぜたはずだ。これによっておしっこに行きたい苦しみは加速度的に上昇する。


「たしかにオレもトイレに行けなかったんだった」


 ガオンにも少し遅れて尿意がやってきたのか、引き締まった肌色の太ももをもぞもぞと動かす。


「ガオンさまぁ、結構やばいニャン。漏れそうニャン……」


 ニャオンは身の置き所が分からないような感じで、その場でうろうろと忙しなく足踏みを始める。


「ワオンも、ほんとはさっきからトイレしたくて。我慢がんばってて……」


 ワオンは耳と尻尾をだらんと下げて、唇を噛み瞳を潤ませている。おしっこを懸命に我慢してうつ向いている。


 ――これは好機! 俺はニヤリと笑い、三人の前に少し距離を置いて進み出る。そして観客にも聞こえるように出来るだけ大きな声で挑発する。


「あれぇー? 第四シードともあろう方々が、試合中に お し っ こ に行きたいんですかぁ? もしどーーーしても漏れそうだったら、ここで漏らしてもいいんですよぉ?」


「てめぇ!!」


 ガオンは俺を凄い形相で睨みつける。内股でプルプルしてるけどね 笑


「ほら、君たちってさ。ド田舎の島出身なんだってぇ? いいんだよぉ、ド田舎って女の子でもそこら辺の藪でおしっこしてるんでしょ? ほら、みんなの目の前だけど、どうしても漏れそうなら見てて待っててあげるよw」


『御手洗選手、なんと鬼畜な挑発でしょう! しかしトロピカルばんびーずの動きが急に鈍くなったのは、トイレのせいなのかぁ!?』


『私としては、失礼、多少失礼であっても、エンターテイメントに徹した姿勢は、支持されるべきものであると、思っております。ですが、少し見てみたいですね、獣人少女の失禁。皆さんもそれを、望んでいるのではないでしょうか?』


『望んでないと思いますよ』


 俺を睨むガオンは舌打ちをすると、後ろの二人に言い放つ。尿意の存在を大観衆にばらされた二人は、顔を耳まで赤くしてうつ向いている。


「おい、ニャオン、ワオン、パオン。ギフトを使ってすぐに終わらせる。一気に行くぞ」


 両手に斧を構え、本気の顔になる。パオンまで招集した彼女の体全体を覆う黄金の気がどんどん増えていき、それだけ俺らにとって脅威な存在になっていく。気の総量で言えば兄貴なんて比べ物になんないくらい強大だ。魔力非依存的な戦士だからかもしれないが、ガチでやりあったら勝ち目は薄いだろう。


 だから、卑怯戦法その二である。名付けて、猫催淫の計ッ!


 俺はカバンの中に入っている小瓶に手を伸ばす。この小瓶の中に入っているのはマタタビの抽出液だ。揮発性を高めるために純度の高いアルコールと混ぜている。マタタビという植物がもたらす効果は、ネコ科の動物への酩酊。しかし、厳密にその作用は酩酊と言うより催淫状態、すなわち性的に興奮した状態となるッ。


 やつらのうち二人はネコ科の獣人。これが効かないはずがないッ!


 俺は奴らのギフトが発動しきる前に、小瓶の蓋を外し自分のズボンや袖にこいつをたっぷりとしみこませる。あれよあれよとガオンの黄金の気が約四倍にまで、天に立ち上るみたいに強化されている。素で強いのにえげつねえギフトだぜ。


「そっこーで、終わらせるッ!」


 ガオンが俺に突っ込んでくる。でかい斧、力任せの攻撃。脳筋はやりやすいぜ! 仕方なく追随して襲ってくるパオンもにやりと笑っている。そりゃそうだ、ガオンに俺は倒せねえ。


 振りかぶる斧、肉迫する痩躯、龍みたいな気、俺を全力で屠らんとまっすぐ襲い来る。それでも俺は決して避けないッ!


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