きよし、水洗便所に流されて絶命する
思い付きで書いてしまいました。いろいろ振り切った作品にしたいと思っています。お付き合いよろしくお願いします。
「ふんんんんんっ! んぐ! ふんんんんん!」
俺の名前は、御手洗清。友人からはキヨシって呼ばれている。
物語の冒頭から何してるかって?ほら見えるだろ踏ん張ってるのが。ごめんな、汚いシーンからで。
おれ、うんこしてるんだ。
その名前は伊達じゃねえって? まあな。つか、うんこぐらいみんなするだろ。許してな。
先謝っとくよ。ごめんな。まだ全部出てねえんだわ。
「あああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!! ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )
ほら、言ったろ? 先謝っとくって。え、絶叫すると思わなかったって?
最近そういうの流行ってるじゃん。絶叫脱糞シリーズだっけ?あれおもろいよな。
もうお前のうんこのことはいいから、さっさと話し進めろって?
うん、わかる。俺もそう思う。
めっちゃ俺もそう思うよ。うん。
でもな、ほんとごめんな。なんか便器からケツが抜けねえんだわ。便器に対して俺のケツが吸盤みたいに張り付いて抜けねえんだわ。
いやお前のケツ小さすぎだろって?いや違うって、おれがそんな引き締まったケツをしてるわけじゃなくてさ。
絶妙に運動不足なせいで俺のケツぶよぶよなわけよ。それで便座の穴のとこにケツの肉が絶妙にな。たぶんフィットしててな。まあ、自分で見えないんだけどよ。
……一つ方法を思いついたわ。
さっさとやれって?
いいの?
またお前のこと笑かしちゃうかもよ?
「んああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(ブリブリブリブリュリュリュリュリュリュ!!!!!! ブツチチブブブチチチチブリリイリブブブブゥゥゥゥッッッ!!!!!!! )
……ごめんな。
もう一回凄い勢いで脱糞すれば便座の中の圧力がすげえことになって、ロケットの要領で上方に脱出できると思ったんだわ。
抜けてねえじゃんって?
そうだな。抜けてねえ。間違いなく抜けてねえ。それどころか全力絶叫でいきんだせいでますます便座がフィットしちまってる。
これは万事休すだわ。おれもまさか、便所にはまって一生を終えるとは思わなかったわ。
誰か呼べって?
無理だよ。俺さ、今じいちゃんの別荘にきてるんだわ。この周辺誰もいないのよ。
そりゃそうだろ?さっきおれ絶叫脱糞してたじゃん。
さすがに家族がいるのに絶叫しながらうんこしてたら社会的に死ぬだろ?
ケータイがあるだろって?
馬鹿野郎! うんこして手を洗わずにスマホいじるやつがあるか!
仮にも俺の名前は御手洗清だぜ?
……ごめんな。おもんなかったな、今のは。
真面目な話スマホはリビングにあるんだよ。
あと意外かもしれないけど、俺っちってば便所でスマホいじらない主義だからな。
え、普通ズボンのポケットとか入れてるだろって?
ていうかなんで俺の足元にズボンがないのかって?
あー、それ聞いちゃう?マジで聞いちゃうんだ。
ここ、別荘、俺、一人
若い男、一人、テレビ、パソコン、ティッシュ
わからない?
チンチン、カチカチ、シュッシュッ
さすがにこれで分からなかったら、小学校で保健の授業受けなおした方がいいと思うぜ?
押してダメなら引いてみたらって?
どゆこと? 脱糞がダメなら流して見ろってこと?
確かにそれはやってないな。
んじゃ、いくよ。
レッツ 流水ボタン ポチッ♪
ジャジャジャジャジャーー
……なんも起きねえじゃん
ん?
お
「のああああああああああああああああああああああああああああ!」
「ケツが! ケツが吸い込まれる!」
「ケツだけじゃないッ! 体も! 体にまで吸引力が!」
「あああああああああああああああああああ吸い込まれて体ごと回転しながらすいこま」
「視界が」
「あ」
ジャジャジャーー
◇
俺は金色の雲みたいなもくもくに包まれた世界に放り出された。全体的に臭い。おれの体もこの世界も。
「よう、清! おひさ!」
「じ、じいちゃん! い、生きてたのか!」
こんなところで爺ちゃんに会えるとは思ってなかった。まさか隠れて生きてたとはなあ。
「いや死んでるから」
「え、じゃあ」
「清、ここは雲海じゃよ。おまえ、死んだな?」
うわ、この雲みたいなやつ全部うんこだったのかよ! きったねえ!
「てか何か金色のもこもこしてるやつ乗ってるけどなに?」
「これは“きんとんうんこ”」
「しょーもな」
「おっほん、話をちゃんと聞けい。お前、死んだな?」
「いやどう考えてもじいちゃんのせいなんだけど。別荘のトイレヤバすぎでしょ」
「あ、あれはだな、お前のばあちゃんが吸引プレィ……」
「あああああああーー、そういうのキモいから。いいから」
「まったく、久々に会ったのにつれない孫だ」
「お前のせいだよ? お前のふざけたトイレが孫を殺したんだよ? 自覚あんのかこのくそじじい!」
「だからあれはばあさんが……」
「あああああああああああああああああああああああああああ」
「それはさておきだな」
「急に真面目になったなじじい」
「お前、転生したい?」
「は?」
「しないと、ずっとこのうんこ界で儂と暮らすことになるけど」
「うわ、もう雲海じゃなくてうんこ界って言っちゃってるし!」
「じゃ、儂も寂しいし、転生申請書、トイレに流しとくぞ」
「ああああああああああああ勝手に決めるなああああ。 転生? ちゃんと説明しろよ! 説明責任とか問われる時代だろほら、今の時代ってよ」
「わしの時代はそんなことはなかった」
ビキビキビキビキ、このじじいうぜぇ……!
「お願いします愛しのおじい様。転生について教えていただけませんか?」
「しょうがないにゃあ」
「……。」
「おほん、お前が望めば儂がお前に能力を一つ与えて別の世界に生まれ変わらせてやれるってだけの話じゃよ」
「の、能力? なんかかっこいい話になってきたじゃん!」
「まっ、儂さー。いまさー。うんこを司る神だからさー。うんこに関する能力しか与えられないんだけどね」
「うわ使えねえじじい」
「転生申請書、トイレに流しとくぞ」
「あああーー! すみませんすみません」
「だいたいこの申請書自体が特例なんじゃからな、うんこ神の身内特例」
「うれしいのか、悲しいのかわからねえ!」
「というわけで、転生、する?」
「します! お願いします! てかここ臭すぎ!」
「やっぱわし寂しいしなあ」
チラチラこっち見んなよジジイ。気持ちわりい。
「お願いします。本当にお願いします!」
「冗談じゃよ。じゃ、楽しんでなー」
じいちゃんが申請書を破ると、おれの足元のうんこのもくもくが突然消えた。
あ、そういえば能力は……?
「のあああああああああ!」
俺はそのまま異世界に落ちて行った。