表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

第5話:激突

「これだ。」

歳三が取り出したのは、ピンク色の小袋。しかもハート形。――間違いない、これだ。

晋作と小五郎はお互い目配せした。

「これに見覚えがあるか!」

歳三は鋭い口調で言った。

晋作はその様子に唖然とした。


 おいおいおい、女性に対してそんな物の聞き方するか〜、普通。

 よーし、こうなったら・・・。


「近藤さまぁ。」

晋作は近藤の後ろにこそこそっと隠れるように袖を引っ張った。

「なんだかあの人こわい〜。」

その手はどことなく震えている。

近藤はその手を優しく取った。

「大丈夫だよ。彼は恥ずかしがり屋さんなだけだから。君と同じで。」


 はあっ? こいつのどこが恥ずかしがりだよっっ!!

 大体、こんな奴と一緒にすんなっっ!!


歳三も同じようなコトを思ったらしい。

晋作と歳三の怒りの視線が同時に近藤に向けられる。

だが、近藤はがははっと笑っただけで再び杯を傾けた。

小五郎はしきりに杯を重ねている。さすがの彼も笑いを堪えるのに必死らしい。肩が小刻みに震えている。

彼は目を真っ赤にしながら言った。

「土方さん、もう少し近くで見せてあげたらどうです?」

「おお、そうだそうだ。そんな遠くからじゃ分かるハズがないものな。トシ。こっち持ってきてくれ。」

近藤はポンッと一つ手を叩くと歳三に軽く手招きした。

歳三は軽く扱われてちょっとムッとしたらしい。が、そのまま立ち上がった。

「・・・ったく。」

ぶつぶつ言いながら歳三が近づいてくる。


 来た!!


さすがの晋作も顔に緊張が走る。

歳三は晋作の前に座った。

「ほら、これだ。」

差し出された手のひらにピンク色のお守りがちょこんと乗っている。

それを思わず食い入るように見つめた晋作。

そして、恐る恐る手を出そうとしたその瞬間――。

「・・・待て!

お前、どっかで見たことある様な・・・?!」

不意に歳三が晋作の顔を覗き込もうとした。

「え?!」


 まずいっっ、バレた?!


次の瞬間、晋作はものすごい勢いで歳三の手からお守りをひったくると思いっきり体当たりしていた。


 ドカッ!!


突然の衝撃を歳三はまともに受けて晋作の体と共に畳の上に転がる。

――が、あまりの予想外の出来事に近藤も小五郎も何が起こったのか全く思考が働かない。


だがその時、座敷の襖がすぱっと小気味良く開け放たれた。

甲高い声が座敷中に響き渡る。

「さあさあ、こちらの皆さまをおもてなしして――!」

その声を合図にどかどかと大勢芸妓たちが座敷の中に入ってきた。

彼女たちはあまりのことに面食らっている近藤と歳三の周りに集まると、歌ったり踊ったりのどんちゃん騒ぎを始めた。


ぱっ、と場が華やかになる。


 ――幾松だ。


 幾松は遠いところから小五郎にウィンクして見せた。

彼女は万一の時のために芸妓衆を残らずかき集めていてくれていたらしい。

 小五郎はほっと胸をなでおろした。

晋作の姿は既にない。彼ならなんとか逃げ切ってくれるだろう。


 やれやれ、最後まで冷や汗ものですねぇ。

 あとは頼みましたよ、晋作。


小五郎は再び杯を取った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ