5 眠れないなと重ねる手
目を開けると保健室の天井が見えた。
「なんで保健室!? あっ、痛っ……」
ガバッと体を起こして叫ぶや否や頭に鈍い痛みが走った。堪えきれずベッドへ仰向けに沈み込む。
……ベッド? 女神の神殿にはソファしかなかったはずだが。不思議に思っていると誰かがヒョイと覗き込んできた。
「お目覚めですね、気分はどうですか?」
ネムだ。保健室によくある丸イスに腰掛けている。
床も新品同然にピカピカだ。俺の吐いた血溜まりも綺麗サッパリ消えている。
「起きると頭痛がするけど、寝てればそれほど痛みは無いな。この保健室はお前が?」
「はい、あなたの記憶を探査して養生するのに相応しい場所を再現してみました」
俺の額に濡れタオルを置きながら、ネムは得意気に胸を張る。
どうやら介抱してくれていたらしい。
「そっか、サンキュな」
「いえ、私の方こそありがとうございます」
「俺、なんかしたっけ?」
「さっき私を庇ってくれたじゃないですか。男の子って感じでちょっとカッコよかったですよ。ふふっ」
小さな女神が嬉しそうに微笑む。なんだか妙にドギマギして俺は視線を逸らしてしまった。
「結果は残念極まりないモンだったけどな。あのまま死ぬかと思ったぜ」
まさか割って入っただけで即死魔法(推定)を掛けられるとは予想できなかった。述懐する俺に向かって苦笑混じりにネムが言う。
「いや、死んでましたよ。奇跡で蘇生させたんです。定着して良かったですね、魂」
「…………お、おう」
あまりの物騒さに言葉を失う。女神業界、メッチャ怖ぇ。
「無茶しないでください。マーレは転候生の命を何とも思ってませんから、本気で殺しに掛かってくるんです」
「あんな性格でよく女神なんて務まるな」
「有能ですからね。女神学校の同期なんですが、昔からあんな感じですよ」
ネムはため息を吐きながら「災難でしたね」と続ける。
「マーレが絡んでくるタイミングは、私が依頼を失敗した後と相場が決まっています。普段なら、転候生は送り出した後なので鉢合わせたりしないのですが……」
「今回は俺が転生キャンセル大ジャンプをかましちまったからな」
「そういう訳です。でも、安心してください。もう遭遇することはないですから」
俺が「なぜ?」と問うより先に、ネムは指で何やら操作して空中にいくつもウィンドウを出現させた。
横になっている俺が見やすいように少し斜めに表示されている。コイツなりの気遣いだろう。
画面の一つに視線を走らせると管理神の名前、異世界の名称、魔王の強さ、転候生に要求される才能やレベル、報酬、違約金、その他諸々が記してあった。
「現在、私が受けられる転生依頼です」
俺が読んでいる間にもウィンドウは増え続け、今では宙を埋め尽くさんばかりの数になっていた。
目がチカチカしてきたので一旦全部消してもらう。
「ものっ凄い数だな」
「管理世界は膨大に存在しますからね。実績のある女神ならもっと数は増えますよ。その分、難易度も報酬も桁違いになります」
「へぇ、そういう仕組みなのか。でも、どうして今そんな話を?」
「決まってるじゃないですか。あなたを転生させるためです」
「……なに?」
「ビースティンは失敗扱いなんでもうダメですけど、他の異世界なら問題なく転生できますからね。さすがに転生すればマーレとも顔を合わせることはありません。転生特典は変えられないのでノクターンのままですが」
ちょっと待て。
「まあ、あなたには『才能を視る』才能がありますから問題はないでしょう。今から目ぼしい才能をチェックしてもらって、一番合った世界に転生するんです。今回は迷惑掛けちゃったので、特別に転候生の希望を優先しますよ」
「……勝手に、話を進めるな」
俺は額に載せられたタオルを脇に避け、手を突いて体を起こした。また少し頭が痛んだけれど、今度は堪える。
ベッドの縁に腰掛けて丸イスに座るネムと正面から向き合う。
「俺は転生しない」
転生の女神は一瞬、キョトンとした表情を浮かべた。それから何かに納得したように「ああ」と呟いてから、また口を開いた。
「怖くなってしまったんですね、分かります。『魔王と戦いたくない』と拒否する方は珍しくありません」
責めるでもなく穏やかに応じる様は女神の名に恥じぬ振る舞いだが、納得した理由は全くの見当違いだ。
「魔王が怖い訳じゃないさ」
「では、どうして転生しないなんて言うんです?」
不思議そうに女神は問う。本当に分からないみたいだ。
真っ直ぐ。逸らすことなく瞳を見つめて俺は理由を口にした。
「それはな、ネム。お前の力になりたいからだ」
「えっ……?」
「俺の『才能を視る』才能で、お前の仕事をサポートする。具体的には転候生の才能を看破して依頼の達成率を上げたりとかだな」
「…………」
「俺さ、思ったんだよ。黒ドレスに即死させられて死の淵に……ていうか、死の向こうに居た俺をお前が救ってくれた時に。『コイツを支えて生きたい』って。だから、転生なんてしたくない」
ネムは目を見開いて、何を言うでもなく呆然としている。戯言とでも思って呆れているんだろうか。
「一応いっとくが、嘘じゃないぞ。紛れもない俺の本心――ッ!?」
ギョッとして言葉を飲み込んだ。
ネムは泣いていた。瞳に溢れた涙が、ゆっくりと頬を伝い落ちている。
女子に泣かれた経験がサラサラ無い(そもそも接点もなかった)俺は非常に戸惑った。
「ど、どうした? 俺、なんか気に障ること言っちまったか?」
「いえ……いいえ、違います。逆ですよ」
ネムが俺の名前を呼ぶ。小さな女神は感極まった表情で、流れる涙もそのままに笑顔を浮かべた。
「あなたの気持ち、嬉しいです。とても。凄く。嘘を吐いてないのが分かるから、尚更嬉しい……えへへ、ちょっと今、言葉にできないくらい感動してます」
照れくさそうに恥じらう姿は見た目相応の少女にしか見えない。
「今まで誰もそんなこと言ってくれませんでした。あなたが初めて」
「ネム……」
「ありがとうございます。私の存在が消えてなくなるまで、さっきの言葉、忘れません。私にとって一番の宝物。それぐらい嬉しいです」
「じゃあ、どうして……そんな寂しそうに笑うんだ?」
嬉しいと口にする女神の顔は、いっそ辛そうでさえあった。
「あなたが転候生だからです。女神の神殿には、私の隣には、永く留まれない運命なんです。無理に一緒に居ようとすると消えちゃいますよ。だから……」
「『だから、諦めて転生してください』か? 冗談じゃないぞ。こちとら一世一代の決意を固めて申し出たんだ! そう言われたからって易々と諦めきれるか! 何か方法はないのか? どんな手段でも構わない!」
困った人ですね、と言わんばかりにネムが苦笑する。しかし、俺の熱意が伝わったのか、彼女は少し躊躇ってから『手段』を口にした。
「ひとつだけ。私の眷属――従者とか家来みたいな、そういう立場になるという抜け道は存在しますが」
「分かった。なろう」
「話は最後まで聴いてください! 私の眷属になると、代償として貴方は本名を失うことになります!」
「本名?」
「はい。眷属になった瞬間、あなたは自分の本名を思い出せなくなります。それだけではありません。私を含めた誰の記憶からも、異世界を含めたどこの記録からも抹消されます。一時的にではなく、永遠に」
ネムが俺の名前を呼ぶ。
「素敵な本名じゃないですか。無くすなんて、もったいないですよ」
言われて、これまでの人生を思い返す。母さん、親友、クラスメート、学校の先生、町内会のじーちゃんばーちゃん、売り飛ばされた先の仲間たち、親父。いろんな人に本名を呼ばれた。
名前は個を個たらしめる大事な要素。確かに、失うのは惜しい。
「……そうだな。お前の言う通りだ」
「分かっていただけましたか」
俺の同意を受けて、女神は言葉の代わりに小さくため息を吐いた。そこに篭められているのは安堵と、ほんの少しの落胆。
もし俺が、眷属になってくれたならと一瞬だけ夢想してしまったんだろう。きっと寂しいのは本当なんだ。
「参考までに聴かせてほしい。眷族になる方法は?」
「私の手の甲に口づけして《我が名を捧ぐ》と宣言するだけです」
ネムが胸の前で右の掌クルリと返して甲を示した。俺は流れるような動作で、その手を取る。失うのは惜しい。それでも、誓ったんだ。
ネムの手に口づけする。
「《我が名を捧ぐ》」
宣言した瞬間、眩い閃光が神殿に満ち溢れた。目を閉じても瞼の向こうで盛大に光が瞬いているのが分かる。
ようやく光が収まった後に目を開くと、ネムが呆然とした表情で戦慄いていた。
「な、な、な……なんてことしてくれたんですか!!」
胸倉を掴まれ、大層な剣幕で怒られた。ネムはそのまま口をパクパクさせていたが「ああ、やっぱりもうダメです!」と呟いてギュッと目を閉じた。
「思い出せません、あなたの本名!」
「……俺もだ」
自分の本名が綺麗サッパリ思い出せない。記憶を辿っても、本名に関する部分だけが切り取られたみたいに思い出せなくなっている。
「暢気に言ってる場合ですか!? だいたい、あなたも『無くすのはもったいない』って!」
「無くすのはもったいないさ。それは本当。本名と女神を秤に掛けて傾いたのがお前の方だった、ってだけの話だよ」
口付けた時に掴んだネムの手をそっと持ち上げて、選んだ道を女神に示す。
「そんな訳でよろしく、女神様」
「…………」
ネムは何も言わない。言葉を待っていると彼女の頬がだんだんと朱に染まってきた。やっぱり、勝手に眷属になったから怒ってるんだろうか?
「……悪かったよ。でも、しょーがないだろ。あのままだと埒が明かないと思ったんだよ」
「本当にしょうがない人です。スカタン、自己中、考えなし」
「そこまで言うか!?」
「全っ然言い足りないです! だから、これからだって何かにつけて言いまくります!」
小さな女神は怒った口調で、どこか嬉しそうに宣言する。
「眷属になったこと、後悔しても知りませんからね?」
囁く声音は柔らかい。そんなに怒ってないようでホッとした。
安堵したのも束の間、ネムが自分の胸元に俺の手を持ってきて、胸に押し付けるようにして包み込んだ。
柔らかな膨らみの向こうでドクンドクンと鼓動が脈打っている。「女神にも心臓があるんだナァ」なんて、どうでもいい感想が脳裏をよぎる。というか、もう必死でよぎらせている。
ネムは相変わらず俺の手を抱きしめている。愛おしそうに見えるのは目の錯覚に違いない。いや、それよりさ。ねえちょっと気付いて、女神様。
「あのさ、ネム……」
「眠れないな!」
なんだいきなり? 不眠症宣言か? 俺だって眠れねーよ!
茹った頭で下らないことを考える俺に、女神が微笑みかける。
「私の真名! 『ネム=レ=ナイナ』です! 女神の真の名は親しい相手にだけ伝える習わしになっています。他の誰にも絶対教えちゃダメですよ?」
「わかった。やくそくする。それより、きいてほしいんだが」
「なんですか?」
ほにゃっとばかりに小首を傾げるネムに、簡潔に伝える。
「むね、メッチャ、あたってる」
「ふえっ!?」
「ぐわあっ!?」
ネムが顔を真っ赤にしながら俺の手を離すと同時に、両肩にセメント袋を山積みされたような重さを感じ、あれよと言う間に凄まじい衝撃が背中に襲い掛かってきた。
座っていたベッドが真っ二つに折れ、背中から床に叩きつけられたらしい。
「すみません!! 今のは不可抗力で! 大丈夫ですか、えっと……ああ、本名が出てこない! あ、あなた!!」
女神が膝を突いてあたふたと俺を助け起こす。その表情に寂莫の影は見当たらない。
それだけでも眷属になった甲斐があったというものだ。朦朧とした意識の中、万感の想いを篭めて呟く。
「……よかった」
「~~~!!」
なぜかネムの顔がまた赤くなった。小声で何事かブツブツと言っているが、頭がクラクラしてよく聞き取れない。
彼女は新しく出現させたベッドに俺を横たえると、自分の胸を押さえた。頬を赤く染めたまま、ジト目で睨んでくる。
「呼び名がないと不便なので、仮の名を差し上げます。これからは『ひーくん』って呼びますね」
さっき「そんなに私の胸が」とか「えっちな人です」とか言ってた気がする。おい、まさか『Hな人』から取って『ひーくん』じゃねーだろうな。
懐かしき日本の伝統芸、遺憾の意を表明しようとした俺だが直前で思いとどまった。
「これから永い付き合いになりますね、ひーくん♪」
そんな嬉しそうに言われたら、何も言える訳がない。そっぽを向いて白旗を揚げる。
「はいはい。よろしく、俺の女神様」
ふと気が付くと周囲には、色とりどりの花が咲き乱れていた。神殿はネムの心を反映する。どうやら心の底から歓迎してくれているらしい。込み上げてくる喜びに、誓いを新たにする。
こうして、女神の隣が俺の居場所になった。
* * *
あれから数日。俺とネムはバタバタと準備をしていた。
「ひーくんひーくん! 魂、もう少しで来ちゃいます!」
「なにぃ、もう来るのかよ! 予定より早くねえ!?」
これから現世で不遇の死を迎えた魂がやってくる。俺よりちょい年上の高校生で、岸峰豪司さんというらしい。
「慌ててもしょうがねーか! ネム、最後におさらいしとくぞ!」
「はいっ!」
「転候生の才能を視る段になったら、俺がサポートする」
「ひーくんの才能視、頼りにしてます!」
ネムがふんすっ!と意気込んで胸元で拳を握る。
イチイチ『才能を視る才能』とか言うのも長いので、二人で話し合って名称を決めた。『才能視』を略してタレビジョンだ。
そこ、「安直だ」とか「テレビみたいっすねw」とか言うなよ。発案した本人、すげぇドヤ顔だったんだからな。
「才能視の有効範囲は3メートル弱。そこで、俺は万物の知覚を欺く『透明ローブ』を羽織ってネムの横から豪司さんの才能を確認する。……なあ、やっぱ俺、隠れてないとダメか? 隠れながら視るの、割と大変なんだが」
「すみません。お手数を掛けて申し訳ないですが、転候生の前で男性と一緒の姿を見せてはいけないんです。これは女神業界では暗黙の了解になってまして」
一緒に並んで転候生に噂とかされると恥ずかしいし、とでも言うのか?
「ひーくんに分かりやすく言うと、女神はアイドル――」
「あ、うん分かった。そりゃ男連れなんてあきませんわ」
「理解早っ!」
当たらずとも遠からずだったな。
「とにかく、俺は豪司さんの才能を確認後、一番使い勝手が良さそうな才能と、渡す武器のカテゴリ、送るべき異世界をネムに耳打ちする」
この数日でネムの持つ武器倉庫と受けられる依頼には粗方、目を通した。
達成できそうな範疇で、可能な限り報酬が高いところを選ぶつもりだ。報酬額としては剣と魔法の世界『ソーディア』あたりが目を惹く。
世界の名に剣を冠するだけあって、剣が神聖視されているらしい。
その分、求められる剣才がバグいことになってるので、おそらく縁はないだろう。ネムも「ここは無理ですね」と早々に選択肢から除外していた。
「武器はカテゴリの中から自由に選んでもらう。少しでもモチベ上げてほしいしな。あとなんかあるか?」
「はい! さっきの耳打ちの件に関してですが!」
「挙手までしなくていいぞ。それで、なんだ?」
「私、耳は弱いので絶対に息を吹きかけたりしないでください」
「……へぇ」
良いこと聞いた。
「ちなみに、フリじゃないです。やったら本気で怒ります」
「やだな、やる訳ないだろ。いくら俺でもTPOくらい弁えてるよ」
絵に不当(?)な評価を受けたときと同じ、ガチの声音だった。絶対やろうと決心していたが、秒で断念する。
「とりあえず、俺に出来るのは耳打ちくらいまでだな。転生の合意を取り付けたりとか、そういうのはネムに任せるからな」
「任せてください、お茶の子さいさいです!」
この女神、若干ポンコツ入ってるから自信があるときほど不安なんだが。
心配になってネムの様子に気を配ると、肩に力が入っているように見えた。
「緊張してんのか?」
「……実は、少し。失敗して違約金支払う羽目になったら一巻の終わりですからね」
彼女の言うとおりだ。FPの残高も見せてもらった。正真正銘、後が無い。
「ひーくんこそ、さっそく後悔してるんじゃないですか? 女神が消滅すれば眷属だって巻き添えですよ」
ネムの手は小さく震えていた。コイツの場合、自分が消える恐怖よりも俺を巻き込む罪悪感の方が強い。まだ短い付き合いだけど、それくらいは分かる。
震える手に、俺の手を重ねる。
「あ……」
「少なくとも、お前を見捨てて転生するよりは後悔しないって断言できる」
「お人よしですね、ひーくんは。事情を知った後でも傍に居てくれるヒトなんて居ませんよ。謙遜でも何でもなく、私、見る目がない女神なのに」
「いいさ、構わない。俺がお前の目になるから」
言ってしまってから、「さすがにカッコつけすぎたか?」と不安になった。
ネムを見ると耳がほんのりと桜色に染まっている。繋いだ手を離して、頬を両手で押さえている。
えっ、そこまで恥ずかしい台詞だったの!?
途端に猛烈な羞恥が押し寄せてきて俺は透明ローブを引っ被った。
「後は手筈どおりに!!」
全身が不可視に変わっていく不思議体験に浸る間もなく、俺の姿は迅速に掻き消えた。ついでにさっきの発言も消えてくんねーかなと心底思う。
待機中は特にすることもない。眺めるでもなく小さな女神を見守る作業に入った。ネムは胸を押さえて深呼吸しつつ、身だしなみを整えていた。
真っ白なキトンに月桂冠。転生の女神ネム=レ=ナイナの正装らしい。顔立ちに凛とした気配が満ちる。
浮ついていた俺の意識も少し冷静になった。
そう、これから訪れるのは不遇の死を迎えた魂。善意による救済ではなく利害の絡むビジネスだけど、せめて厳かな気持ちで向き合いたい。
青白い人魂が徐々に人の輪郭を形作っていく。しばらくすると完全な人間の姿に変わった。見た目はヒョロガリの眼鏡さんって感じだな。
まだ意識がはっきりしないらしく、ぼんやりと宙を見つめている。
「ひーくん、それじゃ始めますよ」
「おう、やってやろうぜ」
ネムが俺にだけ聞こえるくらいの小声で意気込み、俺もまた同じくらいの小声で応える。
小さな女神は訪れたばかりの転候生に歩み寄り、おもむろに声を掛けた。
「私は転生を司る女神。どうぞ『ネム』と呼んでください」
俺とネムの物語は、ここに、こうして始まった。




