3.決断をした今日この頃
3話です。
書けば書くほど、語彙力のなさを痛感する今日この頃です。
私、高砂陽夜!
かわいい服装が大好きな、どこにでもいる普通の14歳の女の子だよ!
だけど、そんな私には人には言えないひ・み・つがあるんだ。
それは、ね・・・・・・。
人間辞めてました!!!
もう、どうにでもなーれ。
そんなこんなで、化け物の仲間入りを無事?果たした私は現在飛んでいます。
今まで、身長が低いこともあり見下ろされることが多かったから、誰かを見下ろすのは新鮮かもしれない。
なんだか、悩んでたことがどうでもよくなってきた。
まあ、でも大切なことだし一応聞いておくか。よっと。
スタッ
「今なら、そんなに驚かないから聞くけど、どうして私が魔王様の生まれ変わりなの?突然降ってきただけなのに、みんなのあの対応はおかしくない?」
「ああ、そうでした、そうでした。それは陽夜様がパニックになるわけですね。我らの説明、対応が至らず申し訳ございません」
再び綺麗なお辞儀をするハデスとメイドたち。
「いや、そのことはもういいよ。すぐに状況の確認をしなかった私も悪いし・・・」
すると・・・
「ああ・・・なんという慈悲深く器の大きなお方なのだろう。やはり陽夜様こそが魔王様の生まれ変わりだと私、そう確信いたしました」
そうやって、ハデスは目に涙を浮かべている。
涙腺もないくせに、さっきから器用なガイコツだ。
「もうっ、そういうのはいいから!」
「これはこれは、お恥ずかしい。やはり歳は取りたくないものですね。この歳になると、すぐに涙腺が緩くなりましてね。と言っても、私この身なので涙腺なんてないんですけどね」
あ、自覚あったんだ。
じゃなくて、こいつに任せていては埒が明かない。
「それに最近、文字も読みづらくなってきましてね。やはり老眼かな?と思うのです。と言っても私この身なのでーーー」
「老眼になるような眼なんてないんでしょ」
お前みたいなガイコツキャラが言いそうなことなんて、ワ〇ピースで予習済みだ。
「もういいわ、カナリア代わりに説明お願いできる?」
「はい、勿論でございます陽夜様。駄目ですよハデス様。そんなことでは、陽夜様に老害と言われる日も近いですよ」
さすがは、金髪お菓子作り激うまメイドだ。どこぞの骨野郎と違って美人だし、有能だし頼りになるなぁ。
それに加えて、上司であろうハデスにここまでストレートな発言ができるとは・・・。
これから何かあるときは、カナリアを頼ることにしよう。
「そもそも、我々が陽夜様を前魔王様の生まれ変わりと思ったのは、前魔王様が亡くなる前に残した言葉があったからです。」
「遺言ってこと?それで私がその内容に当てはまってたってこと?」
「はい。正確には『我の灯は時期に消えるだろう。だが、案ずるな。皆の心の支えとなるため、理に抗い再び姿を現そう。たとえ、この身がどうなろうとも。だが、神はそれを許さぬかもしれぬ。だから、どんな支障があろうとも、次の私を頼んだぞ。』という言葉と魔力を残していかれました」
「うーん、かなり曖昧だなぁ。それに魔王様ってかなりアレな人っぽいなー、口調とか」
「はい。ですが、それ以降陽夜様以外に現れるものがいなかったことと、陽夜様の角と羽が前魔王様と似通っていたこと。そして何より、陽夜様が現れる前日に前魔王様の魔力に反応があったことが決め手でした」
「ま、りょく?魔王様が遺言と一緒に残したっていう?」
魔力って言われてもなー。この前まで普通に女子中学生していた身には何とも言えん話だ。
「はい。現在はこの魔王城の地下で大切に保管しております。」
「その魔王様の魔力が反応したことと私に関係があるの?」
それこそ、偶然とかありえそうだけど・・・・・・。
「はい。そもそも魔力というのは形がなく個性のようなものであり、性質や属性が似通っていたとしても一人一人異なります。しかし、膨大な魔力は時に形として残すことができます。地下室にある前魔王様の魔力がその一例です。その魔力が陽夜様が現れるに至り反応したということで、我々は陽夜様こそ前魔王様の生まれ変わりと判断致しました」
「な、なるほど」
筋が通っているような、勘違いじゃないかと言いたくなるような微妙な感じだ。
でも・・・きっと、私がここにいることに何かしらの意味はあるのだろう。
「我々の考えを押し付けるような感じになり、申し訳ございません。陽夜様が望むのなら、このことはなかったことにしていただいても構いません」
申し訳なさそう顔をしながら、カナリアはそう告げた。
正直、そう来るとは思っていなかった。
悪気なんて一切なかったのだろう。ただただ、魔王様の残した言葉をずっと信じた結果なのだ。
そして、いなくなった存在を求めるその考えは私にも痛いほどよくわかる。
だって、それは私もだから。
お母さん、お父さんがいなくなって私は周囲からしたら「かわいそうな子」になった。
「かわいそうに、まだ中学生なのに大変ねえ」
「こんな幼い子を残していくなんて、何やってるんだあの二人は」
「これから何かあったときは、いつでも頼ってもいいんだからね」
そんな言葉を、何十何百と聞いた。
今思えば、二人が残した私を気遣っての言葉だったんだろうなと思う。
でも、当時にはその言葉の温度を感じることができなかった。
どうして、亡くなった人にそんなことが言えるの?
どうして、そんなにかわいそうなんて言うの?
どうして、お母さん、お父さんじゃなくて私なんかを気に掛けるの?
そんな感じで、暗い表情をしながら何も言わなければ、泣きもしない私はきっと不気味に映ったんだろうなぁ。
そして、そんな私を見かねた叔母さんが私を引き取ってくれた。
そして、今に至るわけだが、今でも家のドアに近づく足音を聞いて期待してしまう自分が心の奥隅にいる。
あり得るはずのない、失ってしまった日常の続きを求めている自分が。
だから、この魔物たちは私だ。
そして、彼らに必要なのは代わりとなる拠り所だ。
私にとっての、この趣味のように。少しでも支えとなる存在が。
もう答えは出ている。
そう、それはきっと・・・・・・。
「・・・・・・よ」
今の私の答えを口に出す。
「え?何とおっしゃいました?」
「いいよ」
最初からこうするべきだったのだ。
「えっと、それはつまり?」
「だーーかーーらーー、いいよって言ってるの!私が今日から魔王になってあげる!でも期待しないでよ?私は前魔王と違って有能じゃないからね!」
私も叔母さんの性格が移っちゃったのかな?
ただ、私のことを必要としてくれていて、受け入れてくれた彼らをどうしても嫌いになることができなかった。
「「本当ですか!?陽夜様」」
どうやら、ちゃんとハデスも私の話を聞いていたらしく、カナリアと見事なハモりを見せていた。
「本当よ。と言っても、魔王の仕事とか何するかはよく分からないけど」
「では、さっそく皆のものを再び集めてパーティーを開かねば!それに魔力のことや、魔王城周辺のことなどに加え、さっきの説明をもう一度する必要もありそうですな。それからそれから・・・・・・」
げっ、説明あんまり聞いてなかったのバレてるかぁ。意外とちゃんと見てやがるな、このガイコツ。
これはこれから大変そうだなぁ。
・・・・・・・ふぁ~~~
う~~、なんか眠くなってきちゃった。
「ハデス様、今日はいろいろあったので陽夜様もお疲れでしょう。とりあえず、明日になってからでも遅くはないでしょう?」
さすカナ!やっぱり有能だね。
「それもそうか。では陽夜様ゆっくりとお休みください」
「「お休みなさいませ、陽夜様」」
ハデスに続きカナリアを含むメイドたちが口を揃える。
「お、おやすみなさいっ」
久しぶりだったからかだろうか、それともこんな大勢に言われたからだろうか。
ちょっとだけ、どもってしまった。
けれど・・・・・・。
けれど、ちょっとだけ・・・・・・。
その言葉は、あったかくて・・・ちょっぴり懐かしい感じがした。
拝啓
お母さん、お父さん
これで最後にするね。
ありがとう。これからも私のことを見守っていてね。
敬具
やっと、魔王城ライフのスタートラインって感じです。
次回は、前魔王様の魔力か魔王城内を見回る内容になりそうです。