2.お菓子が美味しすぎる今日この頃
私生活がばたばたしていて、めちゃくちゃ久しぶりの投稿です。
これからは、たくさん書いていく予定です。(予定は未定ってよく言いますよね)
「ぜえ・・・ぜえ・・・」
「ま、魔王様!大丈夫ですかな?とりあえずお茶の用意させましょう」
フードを纏ったそのガイコツは、慣れた様子でほかのモンスターに指示を出す。
先程、モンスターたちを静かにさせた様子からも、このガイコツが偉い立場であることは分かった。
だが、そんなことが分かっても今の私には些細なことだ。
もっと分からないことがあるのだから。
「あ、あのっ」
「如何いたしましたか魔王様?何なりとこのハデスにお申し付けくださいませ。」
「そ、それっ!私は魔王様なんかじゃなくって!多分・・・いや絶対人違いというか種族的なものが違うと思うんだけど!!」
「そしてここはどこなの!夢なの!?夢なんですか?夢なら早く覚めてよ!う~~~~~」
その場にうずくまり、両手で頭を抱える。
分かっている。これが現実なんだということは。
意識した呼吸の重みが、喉の渇きが。
何より体の痛みがそれを証明している。
もはや、投了不可避。
けれど、この異常事態をすんなりと受け入れることはできない。
ぽんっ
なでなで・・・
頭を撫でられた。
けれど、余りにも肉体の柔らかさとはかけ離れていて、相手が誰だかはすぐに分かった。
そして、カルシウム豊富であろう相手に目を向ける。
「大丈夫です、魔王様。少し説明が足りませんでしたね。とりあえずお茶にしましょう」
ニコリ
不思議と骨の顔に恐怖心はなく、その微笑みと手には温かみを感じた。
表情筋もないくせに器用なものだ。
「・・・っ、いいけど、その魔王様ってやめてよね!私には陽夜っていう名前があるんだから!」
すると一瞬ハデスは、はっとした表情になってから
「これは申し訳ありません。では、お茶でも飲みながら詳しいお話をさせていただきますね。陽夜様」
案外話の分かるやつだ。
モンスターだけど。
待つこと数分・・
お茶の準備ができた。
メイド服を着たエルフたちによって。
私のベッドの前に!
まあ、今更そんなこと気にしてもしょうがない。
かくいう私もベッドに座りながらお菓子をつまんでいる。
「では、1から説明させていただきますね。あ、ちなみにそのお菓子はここにいるカナリアが作ったんですよ」
ハデスがそう言うと、テーブルの横に立っていた金髪ロングのエルフメイドが会釈をした。
へえ~、美人でお菓子作れるって最高じゃん。
そこから、ハデスによる説明が始まった。
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「・・・ということです。何か質問はございますかな?陽夜様」
なるほどなるほど。もぐもぐ・・・・・・
とりあえず、聞いていたことを思い出す。もぐもぐもぐ・・・
・この世界は、人間の暮らす国と非人間の暮らすこの国の二つに分かれるということ。
・ここにいるみんなが魔王様のことが大好きだということ。
・ちなみに勇者は10人いるらしい。
・カナリアの作ったお菓子が美味しすぎるということ。
もぐもぐ・・・・・・。ピタッ
や、やばい。お菓子美味しすぎて大切なことをたくさん聞き逃している気がする!
それよりも、やばすぎるのが勇者の存在だ。
勇者ってあれでしょ、チートでかっこよくてみんなが憧れる存在。
普段、RPGゲームをしない私でもそれぐらいは知っている。
そ、そんな奴が10人もいるなんて・・・・・・。
恐怖から身を守るように、再び両手で頭を抱える。
この姿がデフォルトになりそうだ。
すると、私の考えを察したのかハデスが再び口を開いた。
「あ、心配しなくても大丈夫ですよ、陽夜様。勇者達は魔王様、いや、前魔王様というべきですかね。前魔王様が、こてんぱんに追い払って今では人間の国で就職したと耳に入っております。」
魔王様チート過ぎませんかね?
そんな魔王様の生まれ変わりと言われる私って・・・・・・。
うーむ、じゃあそんなに慌てる必要はないってことかぁ。
身の安全が証明されたところで、そろそろ核心に触れていかねばならない。
「えっとー、今の話からすると私って人間の国で暮らすべきじゃないかなって思うんだけどー」
すると、ハデスとカナリア、その他大勢のメイドたちが笑い始めた。
え、私何も間違ったこと言っていないよね?
私みたいな善良な人間様は、人間の住む国でひっそりと暮らすのが普通だと思うんだけど。
「ふふふ、陽夜様は冗談がお上手ですね。だって・・・・・・」
「いやー、愉快愉快。前魔王様がいなくなってしまってから、久方ぶりに笑いましたぞ!だって・・・・・・」
「「陽夜様は前魔王様と同じ立派な角と羽をお持ちじゃないですか!」」
「・・・・・・へ?」
突然言われたことに理解が追い付かなかった。
しかし、自分の服装を見て、思い出した。
色んなことがあって気にしてなかったけど、あのままの服装で来ちゃったのか。
「あ、いやこれは趣味っていうか・・・とにかく装飾品であって本物じゃなくってね。ほら、こんな感じで・・・・・・」
偽物だということを証明しようと、カチューシャとフリフリの服についた羽に手を伸ばす。
あれ?どうしてだろう。全然取れる気配がない。
寧ろ、取ろうと強く引っ張れば引っ張るほど、あるはずのない痛覚が主張を強めている。
ぴょこぴょこっ
羽に至っては、意識すればするほど、動きで主張を強めている。
・・・・・・。
・・・・・・あっ、飛べた。
私は人間を辞めたぞー!!!
拝啓
お母さん、お父さん
私はどうやら、人間からジョブチェンジしたようです。
敬具
お菓子は僕も大好きです。久しぶりに書こうとしたら、感想を送ってくださった方がいて、モチベーションが上がりました。とてもうれしかったです。ありがとうございます。
次回は、前魔王様のこととかに触れていくつもりです。