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【第二十一話】災いと海(前編)

よく来たね、まずは少し話を聞いてほしい。

この話を書いていた時点ではお盆休み真っ最中、愚かな作者は、取材旅行と称してホントに無人島にも行って来たんだ。

でもね、気づいてみたら早九月になろうとしていて、虫の音すら聞こえてくる始末さ。

滑稽だろう? どうかこの無様な作者を笑っておくれ・・・ははははは・・・


・・・いや、ほんとすいません・・・

書いていた時はホントに夏真っ盛りだったんです、いやホント。

と、いうわけで、この話を読む際にはあの楽しい数週間前の夏休みやお盆休みを思い出しながら読んでいただくとありがたいです。

では・・・

 目の前に広がる青い海、広い空、そして・・・

「ここは・・・どこ?」

 見渡しても民家どころか灯り一つ見当たらない、一面の砂浜。

「ぐすっ・・・わからないわよぅ、そんなこと・・・」

 そして傍らで泣きじゃくる銀髪の少女。

 どこだか分からない砂浜の上で、隣に座る水着姿の命と共に、宮彦は海パン一丁で途方に暮れていた。

 待て、落ち付いて状況を整理しよう。

 深呼吸して、宮彦は意識を落ち着かせる。

 どのような混沌とした状況においても、何事にもそうなった原因がある・・・そう、今回のことにも、当然原因があるのである。

 そう、原因は・・・

 原因は、つい先日のあの電話だった・・・




「・・・海?」

 電話の向こうの命からの誘いに、宮彦は思わず声を上げた。

『ええ、私共のプライベートビーチで、ご一緒に・・・と思いまして』

 プライベートビーチ・・・

 一般庶民の生活をしていると聞きなれない言葉ではある。

「でも、いいの? お邪魔しちゃって・・・」

『かまいませんわ、別荘も丁度何部屋か空いていますし、クルーザーも去年買い換えたばかりでして・・・』

 別荘・・・クルーザー・・・?

 このお嬢様の口からは、よくもこんなに一般庶民の家では耳にしない言葉が次々と飛び出すものだ。

『あ、でも、くれぐれも安形さんにはこのことは・・・』

「え・・・どゆこと?」

 カグヤが・・・どうかしたのだろうか?

『あっ、いっ、いえ、なんでもございません・・・』

「ああ、そう・・・」

 どこか慌てふためいているような感じではあったが・・・まあ、深くは聞かないことにしておく。

『じゃあ、明後日の朝・・・お迎えにあがりますわ』

「ああ、わかった・・・じゃね」

『ええ、また・・・』

 最後に、そんなマニュアル通りの言葉を交わして受話器を置くと、背後から声をかけてくる者がいる。

「のう、宮彦」

「うん?」

 そちらの方を振り向くと、何か困ったような顔のカグヤがいた。

「海に・・・行くのか?」

「う、ん・・・たぶん」

 天候次第ではなんとも言えないので一応濁しておく。

「妾も・・・連れていってはくれぬか?」

「え? 頼んであげなくはないが・・・そりゃなんで?」

「うむ、映像で見たことはあっても、海と言うものを実際に見たことはなくてな」

 成程、月の内壁に建造物が建っている月では、いくら重力制御ができると言っても構造的にも面積的にも海を作るのは不可能だろう。

 そのような面積を使うぐらいなら、一人分でも避難できるスペースを増やした方が良い。

「できぬか・・・?」

 少し不安げに宮彦の顔を覗き込んでくるカグヤ。

 成程、あの雄大さを知らぬというのはもったいない。

「わかった・・・俺から何とかして池速さんにかけ合ってみるよ」

「本当か?」

 そう言うと、カグヤは、ぱぁっと顔を輝かせた。

 



 当日、驚くほど長いリムジンが、早朝から宮彦の家の前の小狭い道路を占領していた

「こ、これは・・・」

「ほう、随分と胴長な車だのう」

 宮彦とカグヤが車の前で呆然としていると、全部座席から命が降りてくる。

「おはようございます、讃岐君、そして・・・」

 チラとカグヤの方に視線をやると、命は小さくため息をついた。

「ふぅ・・・やっぱり付いて参りましたわね、余計なオマケが・・・」

「え? なにか・・・」

 カグヤの姿を認めた途端、何か命が呟いた気がするが、質問しようとすると「なんでもありませんわ」と遮られた。

 確かに昨日連絡しておいたハズなのだが・・・

「まあ、いいですわ・・・さ、お乗りになってください」

 命がそう言うと、傍に控えていた黒服がリムジンのドアを開ける。

「あ、ありがとうございます・・・」

 そう言うと、黒服は無言で会釈してきた。

 なんだかこちらが恐縮してしまう。

「それにしても・・・」

 宮彦は、自らの前のシートに視線をやる。

「なんでお前までいるんだ?」

「ん?」

 ジュースの入ったグラスを傾けていた一二三は、不思議そうにこちらを向く。

「なんでって・・・池速さんに誘われたんだよ」

「いや、そうじゃなくて、お前って池速さんと知り合いだったか? 」

 一二三は、男子の友人は驚くほど多い。

 学級の男子ほとんどとの交遊関係があるのではないかと思わせるほどで、少なくとも宮彦の五倍は顔が利く・・・が、女子にそれほど顔が広いほどでもなく、命とだってあの料理勝負が初対面だったハズだ。

「あー・・・そういや面識あんまないなぁ」

「旧友の私はともかく、コイツはたしかに招待されるのはおかしいわよね」

 一二三の隣の席から、雅子が口を出してくる。

「だろ? それに・・・」

 そう、それに、さらに不可解な事がある。

「なんでお前たちまでいるんだ?」

 宮彦が指さしたその先。

「うん?」

 磯野は、文庫の推理小説を置きながら。

「えっ?」

 島は、やけにオロオロしながら

「うーん・・・成り行き、かな」

 大友は困ったように微笑みながら。

「あん?」

 阿部は、何故か喧嘩腰に。

 カグヤ争奪戦で宮彦としのぎを削ったはずの四人が、何故かそこに居た。

 



 この時はこの場にいる全員が、そして困難に巻き込まれていく当の本人の宮彦さえ、あのような事件が起こるなど、思いもしなかったのだ。

 そう、まさかあのような事件が起こるなど・・・

いかがだったでしょうか?

あからさまに季節外れてますよねー・・・しかも尻切れ蜻蛉・・・OTL

では、次のお話でまたお会いしましょう。


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