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花言葉ものがたりより「躑躅」
私が父から受け継いだ日本庭園は、今では躑躅で溢れんばかりだ。
高低差のある敷地にはすり鉢状の底に池があり、高台には東屋が設えてある。
躑躅の季節に東屋に登り、庭を一望すると、それはもう圧巻だ。
ご近所さんが山菜なんぞを手土産に「庭を見せてくなんしょ」とやってきては「拝観料をとれっつぉい!」などと指南してくれるほどだ。
東屋から躑躅に囲まれた池を眺めていると、鯉に餌をくれていた娘が、私に気づいたらしい。
「パパぁ!」
笑顔で大きく手を振っている。
……君が好きだと言ったから、パパは折りに触れ、躑躅を買っては植えていった。
躑躅の花言葉が「節度」「慎み」だと知ってからは、この花が君の純潔さを守ってくれるのではないだろうかなんて、変な下心が芽生えたものだ。
それなのに。
娘は来月、嫁ぐのだという。
憧れのジューンブライドだなどと、楽しげにしている。
私の作った花の檻など、ものともせずに。





