花言葉ものがたりより「金木犀」
「珍しいね。金木犀の香り?」
箸を止めて振り返ると、営業部の伊刈さんが斜め後ろに座っていた。いつも忙しそうにしている、華やかな人だ。
「あ、はい。今の時期だけなんですけど、庭に大きな金木犀があるので、花を集めて匂い袋を作って枕に入れてるんです」
体をひねるようにして話を聞いてくれていた伊刈さんが、ひょいと手を伸ばして私の髪をすくった。近づいてくる顔に驚いて小さく声を上げたら、周囲の同僚が「あ! 伊刈がセクハラしてる!」なんて、囃し立てた。
「え? ちが……俺は匂いをだな……!」
二人して恐縮しまくって、周囲に言い訳をした。
◇
コーヒーを手に、庭の金木犀を眺めながら思い出した、私と彼の馴れ初め。
「ぱぱ、もう起きてよ!」さて、これからが慌ただしい時間。
「あっくんも! 幼稚園遅れちゃうよ!」
私は腕まくりをして、二人の布団を引き剥がす。
こちらのお題をくださったの白い黒猫さんです。
白い黒猫さんは、作品の幅がとても広い作家さんです。ホラー、恋愛、自衛隊ものもありますし、猫エッセイも人気です。
今回の花言葉ものがたり、この「金木犀」で最後の一作となります。
いい匂いのお花がたくさんありました「金木犀」もですが「ラベンダー」に「沈丁花」
匂いというのは、私たちの中にしっかりと残り、忘れられない記憶の一部となりますね。





