休日
雲ひとつない空を見上げると、鳥の声が、遠く、高く聞こえた。
そよ風が庭を吹き抜けていく。
サワサワサワ……。
風を受けた枝や葉が、小さい声でざわめいた。
あまりにいい天気なものだから、ちょっと強めの風が心地良い。
私は、コーヒーを淹れるための道具一式を大きめの盆に乗せて、縁側へ降りていく。
沓脱石の上のサンダルが、カコ、カココッ! と、小気味の良い音をたてた。
向こうの芝の上に、男がひとり寝っ転がっている。
天気がいいから、日焼けしちゃいそう。
でも、周囲の木立の間を抜けてくる風は、気持ちが良くて、芝生の上で昼寝をするのには、うってつけな日だろう。
男は彫刻にでもなってしまったみたいに身動き一つしないで寝ている。でもじっと見つめていると胸が上下して、小さな寝息も聞こえた。
私は男の隣に腰を下ろした。
プレス式のコーヒーメーカーには、もうすでに二人分の粉とお湯が入っている。
私はゆっくりとコーヒーメーカーのフィルターを押し下げた。
それからできあがったコーヒーを……できあがったと言っても、粉を入れてお湯を注いで、フィルターのつまみを押し下げただけだけども……白磁のカップに注ぐ。
うん。
こんな日には、なんの飾りもない、ちょっと無愛想なくらいの白がいい。
ふわりと香りが広がって、隣の男が身じろいだ。
まったく、タイミングがいいというか、ちゃっかりしてるというか。
あなた、本当に寝てたんでしょうね?
ぱちりとひらいた瞳に笑いかける。
「おはよう」
いやいや、午後です。
「コーヒー飲む?」
って、ちゃんとあなたの分も入れてますけど。
身を起こした男がカップを手に取り、一口啜った。
口に含んで、空を見上げた。
風が、彼の髪の毛を梳いていく。
「はぁ、外で昼寝してコーヒー飲むためみたいな日だなあ」
男の声は、まだ眠たげだ。
クスクスと笑うと、どうしたの? と、こちらを振り向く。
ううん。
私も同じことを考えていただけ。
それだけよ。
つい最近「【習作】描写力アップを目指そう企画」という企画に、参加しました。
時々参加させていただいているのですけれど、今回は第六回で、お題は「キラキラ☆ワードローブ」でした。
その企画の参加作品をずうっと読んでいたら、もうほんとうにキラキラで、ちょっとお腹が一杯になってしまったので、その反動でただただなにもないお話を書いてみたくなったのです。
ええ、ただそれだけのお話です。





