序章 8・虐殺のスキル
序章 8・虐殺のスキル
「マリエッタ、眷属になったシャナムの知能はどうなの?仲間と話したりとか普通にできるの?」
ホーリーは上空に飛び上がっているシャナムの背に乗っています。
【会話などは不可能です。生前の記憶もほとんど残ってはいません。簡単な命令を理解する知能と帰巣本能ぐらいでしょうか】
「帰巣本能か……このまま巣まで帰ってくれればOKってことだね」
腐敗した部分があり、シャナムはバランス良くは飛べません。
ホーリーはシャナムの背中の毛のようなものに掴りながら高度を上げていきます。
少しだけ振り返ると、王国の兵士のギーニハンズも振り落とされないように必死の形相でした。
ホーリーにはその姿が滑稽に見えましたが、それはあくまでもホーリーがこの世界が夢の世界だと勘違いしているからです。
もし、これが現実の出来事だと認識していたら、ホーリーは慌てるだけ慌てて、あっという間に地上に落下しています。
「す、すごい……雲の上まできた」
とてつもなく大きな月が目前で輝いています。
月に照らされた夜の雲が、眼下に草原のように広がっていました。
(呼吸が苦しいな……)
空気が薄く、この状況を長く継続するにはホーリーの体力では無理です。
もちろんホーリーは、現実の世界でいびきをかいていて呼吸が苦しくなっている、ぐらいに思っています。
【シャナムの主力を壊滅させるにはこの辺りが最適です】
「よし、やろう!!」
苦しそうに息をしながらホーリーが、ズボンのポケットに入っているスマートフォンに命令しました。
【承知いたしました。クラスター爆弾を投下します。カウントダウン、5、4、3、2……GO】
1発の大型爆弾が宙に現れ、落下していきました。
すぐに子弾に分解されて、500発の焼夷弾に分散していきます。
しばらくすると雲の下の至る所が明るく染まり、花火の一合玉のような大きな爆音が立て続けにしました。
2000mの上空からでも地上が燃えさかる火の海になっていることがうかがえました。
(こ、こんな強力な爆弾なんだ……)
ホーリーは息をのんで見守ります。
しばらくするとマリエッタが結果の状況を分析し、
【シャナム王をはじめとする王族、豪族に至る30の部族が壊滅しました。死亡したシャナムは4万3千匹。負傷数は12万匹になります。】
(あわせて16万ちょっとか、まだ34万匹は残っているな……)
【支配層を一度に失って組織の立て直しに3年はかかります。十分な足止めではないでしょうか】
「そうか、じゃあ3年はアットナム村も安泰だね」
ホーリーは喜んでそう答えました。
マリエッタはLVアップの報告をします。
【爆炎の魔法使いの称号と国崩しの称号の2つを手に入れました。会話する相手に対する威圧度が450%増加です。会話できる相手が33%の増加です。特に魔法使い系、盗賊系の属性の相手はほとんどが会話可能になりました。ホーリー様の人間LVは26まで増加。生命力5、体力6、攻撃力10、防御力10、速さ6、知能8、魔力0、特殊能力は現在魔法具を召喚していないためありません。援護スキルはLV2のまま、シャナムを乗りこなすLVは6まで増加です。新たに虐殺のスキルを得ました。LVは13です】
「爆炎の魔法使いの称号をもらったのに、魔力は0なの?」
【はい。あくまでも先ほどの爆炎は魔法具の効果ですので】
「ふーん、まあなんでもいいけどさ。LV26まであがって、生命力が5って、ほとんど上がってないね。全体的に数値がLVに比較すると低すぎるような……」
【仕方がありません。魔法具の威力のみの戦いでしたので】
「そうか……気になったのは最後の、なんだっけ、虐殺?虐殺のスキルって何?それだけ凄く高いよね。何ができるの?」
ホーリーが笑顔でそう尋ねると、
【虐殺のスキルは、無抵抗の相手、無力な老人・子どもでも平然と殺すことのできるスキルです。このスキルが高いと、それだけ良心の呵責なく相手を殺害できます。しかも通常では戦闘に巻き込めない対象もバトルシーンに引き込めます】
(なにそれ……思いっきり超極悪人のスキルじゃん。金さんに倒される悪代官とか、戦時中の独裁者とか……)
ホーリーはアットナム村を救うためにと尽くしたのに、思ってもみない結果を聞かされてがっかりしました。
しかし、背後で一部始終を見つめていたギーニハンズの思惑はまったく別です。
(なんという魔力だ。詠唱の時間もわずかで、眼下一面を火の海にするとは……恐ろしい!もしやこの男が言い伝えの虐殺の魔導士では……もしこの男に我が王国が襲われるようなことになったら……これは急ぎ戻ってハンニバル将軍に報告せねば!)
新たな火種が生まれていることにホーリーはまったく気づいていませんでした。
明日も午前3時に更新予定です。
か、感想いただけるとー幸いですー




