第3章 19・泥酔
ついにインターゲット王国軍到着。はたしてホーリーたちの運命は!?
第3章 19・泥酔
カットビー王子の背後には7~8人のインターゲット王国軍兵士が剣を抜いて構えています。
剣を抜いていないのはカットビー王子くらいです。
「貴公、その女性はもしやウィン姫ではあるまいな」
「え……まあ、そ、そうですね。そうですウィン姫です。あの、その、ウィン姫は体調を崩されていて……それで、その、介抱を」
そう話しているホーリーの方がわざとらしい言い訳に苦しさを感じています。
ウィン姫は体調を崩しているわけではなく、ただ酔っぱらって寝ているだけで、ホーリーはそれを何とかして起こそうとしていただけでした。
誰が見ても、そうとしか見えません。
もしくは、泥酔している少女に悪戯をしようとしているか……。
泣きそうな顔になりながらホーリーはカットビー王子を見ました。
カットビー王子はその彫りの深い表情を震わせながら、腰から剣を鞘ごと抜き取りました。
斬られる。
しかしホーリーには抗う方法がありません。月が雲に隠れてしまっている間は魔法具を召喚できないのです。
カットビー王子はその剣を鞘ごと投げ捨てて、ウィン姫にすがりつきました・
「なんと!ウィン姫、大丈夫でござるか。おお、顔が真っ赤で発熱もありそうだ。し、至急、衛生兵を呼ぶでござる!」
あっけにとられるホーリーや兵士たちをよそに、カットビー王子はひとり舞いあがっています。ホーリーの嘘を完全に信じ込んでいるのです。
「え、ござるって……」
ひたすら眠っているウィン姫を深刻そうな顔で抱きかかえるカットビー王子のしゃべり方にもホーリーは驚いていました。
「王子、衛生兵がきました」
「おお、そうか、すぐにウィン姫を診てくれ。姫は体調を壊されてござる。もし、万が一姫にもしものことがあったら……」
「王子、どいてください」
女性の衛生兵がカットビー王子にどくように指示します。もうひとりの衛生兵も女性で、不審そうな顔をしてウィン姫の容態を診て回りました
ウィン姫はため息のような吐息を吐きながら、寝返りを打ちます。
そのたびに浴衣がめくれて白い肌が露わに。
その都度、廊下からは歓声があがりました。
胸元はもうギリギリライン。
それを見たカットビー王子は飛び起きるように驚いて、廊下から必死にのぞこうとしている兵たちに外に出るように指示をしました。
しかし、兵たちはなかなか言うことを聞かずに室内の姫を一目見ようと押し合い圧し合いです。
「己らー!!王子である俺の云うことが聞けぬでござるか!!?」
詠唱とともにカットビー王子の右手が唸りをあげます。
「王子!こんなところでおやめください。姫にも被害が及びますよ」
衛生兵がそう忠告すると、カットビー王子は慌てて詠唱をやめました。
どうやら本気で部下たちにむかって攻撃魔法を使用しようとしていたようです。
「ほら、お前らは下がっていろ!」
最初に入ってきた衛生兵が、強気な口調でドア付近にいる兵士たちに蹴りを入れる姿勢で言い放ちます。兵士たちは驚いてその場を去っていきました。
「おお、麗しき姫。なんということだ。もしこれが不治の病であったとしたら、俺はどうすればいいでござるかー!?」
カットビー王子は兵士のことなどもうお構いなしで、ウィン姫を抱きかかえます。
(いやーワイン20本近く飲んだのが原因だと思うけど)
とは、言える雰囲気ではありません。
「ど、どうなのでござるか?診察のほうは」
「はあ。カヲル、どう思う?」
そう問われて、兵士たちを追っ払っていた衛生兵は、
「ヨウコの思っている通りだろ。どう考えても」
と答えます。
カットビー王子は二人の様子を見比べながら、
「はっきり申すがいいでござる。俺の覚悟はできている。何を言われても耐えきってみせるでござる」
と言って、さらに強くウィン姫を抱きしめます。
おそらくそれがあまりに苦しかったのでしょう。
ウィン姫の両目がパッチリと開き、絡みついてくるカットビー王子に膝蹴りを入れ、両肘で渾身の力を込めてその背中をたたき込みます。
「ウゲっつ!!」
カットビー王子はあまりの衝撃に嗚咽をあげて畳に伏せました。
それを確認して、ウィン姫はまた倒れるようにして眠ります。
ヨウコと呼ばれた衛生兵がそれを優しく支えました。
「ええ、王子、姫は酔っておいでです。体調の不良でも。不治の病でもございません」
ヨウコはそう言い放ちました。
「な、なに?」
苦し気にカットビー王子はウィン姫を見つめました。
「泥酔だな。こりゃ」
カヲルと呼ばれた衛生兵はそう言ってため息をつきます。
これがウィン姫とカットビー王子の最初の出会いでした。
なんと雨です。2月に雨とは北海道では珍しいですねー。
道路はテカテカです。




