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第3章 15・ナポレオンとマリー

新手の吸血鬼ヴァンパイアの登場です。

果たして何者なのか。

第3章 15・ナポレオンとマリー


 ホーリーが気が付くと、ウィン姫は窓枠に頭をくっつけてスヤスヤ寝息をたてています。

 正体不明の吸血鬼ヴァンパイア二体はもうすぐそこに迫っていました。

 ホーリーは自分の着ていた浴衣の上着をウィン姫に優しくかけ、装備を整えます。


 ウィン姫もドワーフのギャンも寝ていますし、一応味方であるヘルツォーク二世も今晩は顔を出さないのでホーリーひとりでやるしかありません。


 浴衣の上から銀の鎧をまといます。羽のついたウイングブーツを履きました。そして吸血鬼ヴァンパイアを溶かすという聖水。なんと、お手軽なスプレー式です。これならば簡単に吹きかけることができます。

 人間であるインターゲット王国軍の兵士用のガス砲は今は使用しないので、壁にたてかけておきました。


 「お嬢様は寝てしまってますね、起こしましょうか。こんなところで寝てたら風邪ひきますよ」

中年女性の仲居さんがそう言ってくれましたが、ホーリーは首を横に振って、

「いや、もうしばらく寝かせてあげておいてください。僕は少し外出してきますので」

と答えました。


 外はもう真っ暗で大きな月だけが空に浮いています。


 「マリエッタ、どうだい。もうお客さんは着いたころかな」

ホーリーは声に出して、スマホアプリのマリエッタを呼びました。


 【はい。ご主人様。ただいま到着されました】

マリエッタはあくまでもホーリーの頭の中に直接語り掛けてきます。


 強い風がホーリーに吹き付けました。

 おもわずホーリーが顔をそむけます。


 再び正面を向いた時には、そこにはもう二体の吸血鬼ヴァンパイアが立っていました。距離にして2mほど。目の前です。


 対称的な二体でした。

 一体は左側、大柄の男です。ちょうどキリュウと同じくらいの身長だと思いました。筋肉質な身体からだを黒い革ジャンでおおっています。短髪で両目は閉じたままです。


 もう一体は右側に立っていて、こちらは女性でした。身長はちょうどウィン姫ぐらいでしょうか。腰まである黒髪。鋭い目でこちらを凝視しています。装備は男と同じ黒の革ジャンです。

 二体ともバイクのレーサーのようないでたちでした。とても吸血鬼ヴァンパイアには見えません。しかし感じる圧力は凄まじいものがありました。


 【やはり吸血鬼ヴァンパイアです。左の男が不死族LV195、右の女が不死族LV168。異常な強さです。魔力の値が1000を突破しています。詳しい分析に相当な時間がかかります。強力な魔力が邪魔をしているのです。確実に伝説レジェンドクラス吸血鬼ヴァンパイアです】


 どちらのLVもヘルツォーク二世を大きく上回っています。

 確か、吸血鬼ヴァンパイアの中で自分より強い者はいないとかうそぶいていたはずですが。どう考えてもこの二体の方が上です。


 (速さはどうなの?僕の方が速いよね?)

ホーリーもさすがにこの二体を相手に声は出せず、頭の中でマリエッタと交信します。


 【ウイングブーツの魔法具は速さを1300高めます。さすがにこの値を超える生物がいるとは考えられません】


 (であれば楽勝だよ。このスプレーがあるからね)

スプレーを持つ右手に力が入ります。汗で滑らないように気を付けて戦わねばなりません。


 すると男の方が両目を閉じたままで、話しかけてきました。

「裸足の魔導士殿とお見受けしたが」

ずっしりと重みのある低い声です。


 「そうですが、何か?」

ホーリーの声は幾分震えていました。相手が恐ろしく強いであろうことはホーリーにも感じられます。


 「我らはヘルツォーク二世と同じ王族に属する吸血鬼ヴァンパイア。今晩は、ウィン姫に用があってまかりこした。道を開けてもらいたい」

男の声からは敵愾心てきがいしんのようなものは感じられませんでした。


 しかし簡単に通すわけにはいきません。


 「ウィン姫に何か用が?」

ホーリーは呼吸を整えながらそう答えました。いつ戦闘バトルが始まるかわかりません。緊張で汗があごから地面に流れ落ちます。


 「あんたに用はないんだよ。小娘に話があってわざわざ来たのさ。そこをどきな」

女の方はいつでも攻撃できるような態勢でそう言い放ちました。口からは獰猛な二本の牙がのぞいています。


 「話なら僕が聞きますよ。ウィン姫は今は休んでいる最中です」

ホーリーがそう答えると、女の方が飛びかかってこようとしました。男の方が左腕を伸ばしてそれを制します。


 「マリー、今晩は戦うためにここに訪れたわけではない。それを忘れるな」

「わかっているナポレオン。しかし、こいつが邪魔するのならば始末するしかあるまい」

「相手はあの裸足の魔導士。余計な戦いをして万が一でも負けて命を失えば、王家は滅亡するのだぞ。今日はこらえよ。向こうもこちらの登場になぜか気づいていたようだ。相応の装備をしている。今日戦うのは不利だ」

「あの小娘は?話をつけるのはどうするナポレオン。このままヘルツォーク二世のわがままを許すわけにはいかん!」


 男の方はどうやら戦うつもりはないようです。問題は女の方でしょう。

 会話からは、男がナポレオン。女がマリーという名前であることがわかりました。


 「うるさい奴らじゃの。酔いがすっかり冷めてしまったわ!私に何用じゃ!」


 ホーリーの背後から威勢のいい声が聞こえてきました。振り向かずともそれがウィン姫であることは間違いありません。

 ホーリーはため息をつきながら振り返りました。


 ピンクの浴衣に銀の剣をもったウィン姫が酔っぱらいながら立っています。


 と、その横に女。いつの間に背後に周っていたのでしょうか。吸血鬼ヴァンパイアの女の方がもうウィン姫の横にいたのです。


 (速さが1300を超えているってことはないよね……。)

 ホーリーは不安になりながら二人の女を見比べていました。


北野天満宮の梅苑はもう見ごろなのでしょうか。

こちらは昨日から冬まつりが始まりました。

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