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第2章 13.二人のディナー

一つの関所を抜け、一息いれるホーリー一行でした。

第2章 13・二人のディナー


 ホーリーは宿屋の窓から夕陽が沈むのを静かに眺めていました。

 美しく、そして切ない景色です。


 グォー!ウゴグォー!!

 

 室内に視線を移すと布団を敷いてドワーフのギャンがすでに寝ています。

 ドワーフは一日に15時間寝るのが普通だそうです。

 大音響の不協和音を奏でながら気持ちよさそうに眠っています。

 寝相は三歳児並みです。


 この部屋には残念ながらウィン姫はいません。ウィン姫とナターシャは隣の部屋です。

 

 ホーリーは先ほどの温泉でのウィン姫の裸体を思い出し、顔を赤らめました。

 記憶は鮮明に残っています。


 (何を考えているんだ僕は、相手は14歳だぞ。……でも14歳ってあんなに発育が良かったけ……)


 再び記憶を呼び戻すホーリーでした。


 「晩御飯の準備が整いましたので、下の階までどうぞ」

仲居がそう伝えに来ました。確かにお腹はペコペコです。

 ギャンは熟睡してまったく声が届いていません。10回ほど名前を呼んで体を揺すりましたが起きる気配はありません。


 (もういいや。寝かせておこう。後で文句言われても知らん)


 ホーリーはひとり下の階へと向かいます。

 暖簾をくぐって部屋の中へ、大広間には御膳が4つ並んでいます。

 仲居さんが忙しそうにバタバタと皿や鍋などを運んできていました。


 御膳の前に座っているのはウィン姫だけです。

 ピンク色の浴衣を羽織っています。


 ホーリーは思い切って隣に座ってみました。


 「なんだギャンは来ぬのか?」

ウィン姫は食事には手を付けていないものの、アルコールはすでにたしなんでいる様子で、顔が真っ赤になっています。


 若干ですが嫌な予感をしながらホーリーは

「ええ、どうも熟睡していて起きません。先にいただきましょう。あれ?もう一つの御膳はナターシャの分ですか?」

「貴様は馬鹿か?人が食事をする広間に畜生を入れられると思ってか」


 案外とまともな意見が返ってきて逆にホーリーは驚きました。


 「ヘルツォーク二世の分だ。そろそろ陽が沈む。やつもここに来よう」

「そうでしたか……え?吸血鬼もこのような料理を食べるんですか?鍋とかお刺身とか?」

「当たり前だ。人間の血なんぞたいした栄養もない。魂の契約をするか、奴隷とするか、どちらかのときに吸血鬼ヴァンパイアは人の血を吸い、ウィルスを感染させるのだ」

そう言ってウィン姫はワインをグイと飲み干します。


 「ちなみにこの世界では14歳でもアルコールはOKなんですか?」

「フン。当たり前だ。人間が15歳まで生きられる数は全体の2割しかいない。このような美味を知らずに死ねるか」

「2割……なぜです?」

「人間は所詮は他種族の餌に過ぎぬ。休戦だ、同盟だと言っても、そこかしこで人間は食われているのだ。いずれは滅びゆく種族よ」


 ホーリーはアットナム村の生贄の件を思い出していました。休戦協定があっても生贄を要求されているのが現実なのです。


 ホーリーも思い切ってワインをグビリと飲み干しました。

 喉が熱くなるのがわかります。思ったよりも辛い味です。


 「さっき話をしていた魂の契約ってなんですか?」

ホーリーがそう尋ねながらウィン姫のグラスにワインを注ぎます。ピンクの浴衣の間から純白の肌と胸のふくらみがのぞけてドキリとしましたが、ウィン姫はまったく気にもしていません。


 「私もよくは知らぬ。吸血鬼ヴァンパイア一族に伝わる掟としがらみだな。やつらは子孫を残せぬ体になっておる」

「ええ。聞きました」

「その代り不死の体を手に入れている」

「永遠に死なないんですか?」

「まさか。殺す方法なんていくらでもあるさ。問題は魂の契約だ。吸血鬼ヴァンパイアは生涯でただ一度だけ、己の魂の半分を相手に譲ることで血族をひとり迎えることができる。それで吸血鬼ヴァンパイアの仲間入りだ」

「ただ、ひとりだけ……ですか……」

「そして向かい入れた相手が死ぬと自分も死ぬのだ」

「え?ってことは……」

「そうだ、その祖先、その祖先と長きに渡る祖先がみな死に絶える。そのリスクがある故に吸血鬼ヴァンパイアはよほどのことが無い限り血族を増やさぬのだ。やつらの運命は一蓮托生故だな」


 ホーリーはウィン姫の話を聞きながら三杯目のワインを飲みほしていました。


 ヘルツォーク二世はそのリスクを負ってでもウィン姫を血族に迎えようとしているのです。200年もの長きに渡って我慢した末、ウィン姫を選んだ。

 生半可な覚悟ではありません。断固たる決意を感じました。


 「僕は、僕はそんな覚悟を考えたこともない……」

ホーリーは己を子どもに感じました。現実を知らぬおとぎ話の世界で夢馳せる子どもに。

 「まあ、いい。飲め」

ウィン姫がそう言ってワインをホーリーのグラスに注ぎました。

 

 何かいろいろなことをウィン姫に聞きたい衝動に駆られました。

 もっといろいろなことを知りたい。知ってほしい気持ちが高まります。

 この気持ちは何だろう……。


 何か懐かしい高揚感と切なさを感じます。


 これがワインの味なんだ……。


 ホーリーはそう納得して目を閉じました。



節分ですね。

日本産の豆は少ないし高い。

追儺の式執り行いましょう。西宮神社に行きたい……。

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