第2章 12・暗黒の宝玉
第一の関所を通過したホーリー一行は、関所に併設する町で一泊することを決めました。
第2章 12・暗黒の宝玉
「温泉なんて、いつ以来だろう……」
ホーリーはのぼせて、顔を真っ赤にさせながらご機嫌で温泉につかっています。
ここは関所に併設された町の中の宿屋です。
ホーリーは女将さんの自慢の温泉に浸かっている真っ最中です。
「人間とサルは温泉が好きだと聞いたが、本当だな」
洗面台で毛むくじゃらな身体を洗いながらドワーフのギャンがそう云って笑いました。
「ドワーフはお風呂に入らないのですか?」
ホーリーがそう尋ねると、
「湯に沈んで何が楽しいのだ?」
と一蹴されます。
確かにギャンの身長ではこの湯の深さでは背伸びをしてやっと呼吸ができるほどでしょう。
余計なことを聞いて失敗したとまたも反省していると、ギャンはさっさと浴場を出ていってしまいました。
辺りには人影もなく。静まり返っています。
昼間から温泉につかろうとする旅人も珍しいのでしょう。
ガラガラ……。
ドアが開く音に反応してホーリーは顔を上げました。湯煙の向こうに人影が見えます。
「なんだ。貴様も入っておったのか」
その声はウィン姫のものでした。
金髪に色白の肌、湯煙の中から颯爽と現れ、湯に浸かりました。
硬直しているホーリーのすぐ隣です。
「ほう、なかなかの湯加減だな。しかしケリーの沸かした湯のほうがちょうどいい。貴様はどうなのだ?この湯加減は」
ホーリーの肌とウィン姫の肌が触れ合うギリギリのところに座って問いかけてきます。
ホーリーは返答どころではありません。
「んぐっ……こ、ここは混浴でしたでしょうか?」
恐る恐るホーリーは尋ねました。
「なんだ貴様、私の問いに答える前に質問か!?」
ウィン姫の鋭い声が辺りに響きます。
(誰かがこの状況を見たらどうなるんだろう……確実に僕が変質者扱いされて牢屋行きだよ……)
それでもホーリーは湯に潜り込むようにして視線を真っすぐにして答えます。
「いい湯加減ですね」
「ならばよい。いつもであればケリーが背中を流してくれるのだが、あいにくとこのたびにケリーは同伴しておらぬ。貴様、私の背中を流してもらえぬか」
「……え!?」
ウィン姫はザブンと湯をかき分けて洗面台へと向かいます。
タオル一枚持っていません。
白桃のような尻が一瞬だけ湯煙の間に見えて、ホーリーは気絶するほどドキッとしました。
ホーリーを未来の夫だと信じて誘っているのか、純粋に姫様は裸を見られることにまったく抵抗がないのか、どちらなのかでホーリーは判断に困ります。
「早くせぬか!」
急かすウィン姫の声が湯煙の中から聞こえてきます。
「はい!!」
ホーリーは勢いよく立ち上がり、ウィン姫のもとへと急ぎます。
【ご主人様、火急のお知らせがございます】
頭の中でスマホアプリのマリエッタの声がホーリーを呼び止めました。
(ど、どうしたの……)
【インターゲット王国の騎士団3千が騎馬に乗りこちらに向かっております。また別隊として魔法使いの部隊300もこちらに接近中です】
(どのくらいで着きそうなの?)
【騎士団が4時間ほど、魔法使いの部隊は7時間】ほどでしょうか】
(なら、まだゆっくりする時間はあるんだ)
そう言って湯煙の向こうのおぼろげなウィン姫の人影を見つめます。
【ホーリー様、以前お伝えした浮気LVが8まで上昇しておりますが、いかがいたしましょうか】
(別にいいよ、そんな数値。高かろうが、低かろうが関係ないでしょ)
【承知いたしました。今後不問といたします。あともう1点ですが】
(まだ、なんかあるの?何?)
【私の待機電力が20%を切りました。そろそろ暗黒の宝玉の封印を解く頃かと】
(OK、温泉を出たらすぐに準備するよ。ちなみに今回のサービススキルは何?)
【はい。暗黒の宝玉の封印を解くと、私の充電がMAXになるばかりか、月が空に見えている間は召喚ターンに関係なく魔法具を使用することができます】
(えー!!!凄いじゃん。じゃあ5時間とか使用できるわけ?)
【はい。あくまでも月が見えている間ですが】
(夜の戦闘が随分楽になるね。いいぞーどんどん強くなってきた!)
ガラガラ……。
無言のまま、ウィン姫は浴場を後にしました。
ウィン姫は待つのが苦手なのです。
(しまったー!!!)
いろいろな意味でホーリーは後悔していました。
ついに2月ですねー。
一月経つのが早い。
感想お待ちしてますよー!!!!!!




