第2章 11・関所
いよいよサンシェルベまでの旅路の始まりです。
しかし、早くも問題が……
第2章 11・関所
ホーリー一行は、昼間に休み、陽が沈んでから前へ進むという旅を続けていました。
トリミング王国を出立してよりすでに5日が過ぎています。
一行は隣国のイトル王国を抜け、さらに西にあるインターゲット王国に差し掛かっていました。
インターゲット王国は国土だけならばギミリスト連合国で一番広い国です。
しかし平野が僅かな面積しかなく、ほとんどが山岳地帯でした。
「さて、問題はここからだな。インターゲット王国は関所が多い。回り込むにも険しい山々が邪魔をしている。関所を通る意外に道はない」
辺りは陽が落ちてすっかり夜となっています。ウィン姫とホーリーは道端に腰をおろします。ドワーフのギャンは疲れ知らずで、座って休もうとはしません。にも関わらず、3人の目線は同じでした。
「関所を通ると何か問題でもあるんですか?」
ホーリーがイトルの国で購入した穀物を口にしながら尋ねました。
「通行手形は国王からいただいているから通行に支障はない」
ウィン姫が答えると、ギャンが、
「では、妖精の国の住民は通れないのか?」
と尋ねました。
「いやドワーフも問題なく通れる」
「俺のことは気にしなくても大丈夫ですよ」
いつの間に追いついてきたのか吸血鬼の少年ヘルツォーク二世の声です。
「貴様のことも問題視していない」
闇に溶け込んでいくらでも移動できるのですから問題ありません。
「って、ことは僕ですか?裸足の魔導士に賞金でも賭けてるのかな……」
ホーリーが自虐的にそう言うと、ウィン姫は首を横に振りました。ホーリーは驚いて、
「その犬がダメとか?」
ウィン姫の腕の中でスヤスヤと安眠をむさぼる子犬のナターシャを指さします。
「犬が入れぬ国などあるか。バカも休み休みにしろ」
ウィン姫が冷たく言い放ちます。
「では何が一体問題なのだ?」
ギャンもわからずにそう尋ねました。
ウィン姫はしばらく口を開かず、ため息をついて、
「私じゃ。私が関所で止められる」
「え!?どうして!?」
ホーリーもよくわからず首をかしげます。
ウィン姫は全員の顔を見渡してから、
「この国の一番王子、カットビー・ウィル・インターゲットは私の許嫁なのだが、他の許嫁と比べ異常に執拗なのだ。必ず私の身柄を確保しようとしてくるだろう……」
それを聞いてヘルツォーク二世の表情がガラリと変わりました。
紅い瞳の奥に殺意の灯が見えます。
「ご安心を姫。そのような身分をわきまえぬ小物、俺が料理しておきましょう」
「そうはいかぬ。インターゲット王国はギミリスト連合の中でも精鋭ぞろいの軍事国家。その第一王子が吸血鬼にやられたとなると国同士の戦争が起こる。人類対吸血鬼のな。だから余計な手出しは無用だ」
「そうですか……」
ヘルツォーク二世は納得できない表情で返事をしました。
「どちらにせよ、ここからの関所は夜は固く閉じられている。朝夜の動きを逆転しよう。ヘルツォーク二世には申し訳ないがな。夜になったら追いついてくるがいい」
「承知いたしました。して、このインターゲット王国に奴はいるのですか?」
ヘルツォーク二世は早くキリュウと対決をして、ウィン姫を妻に娶りたいようでした。
「どうであろうかの……わからぬ。あやつも雲のように風任せな男ゆえな」
「関所は何か所あるんですか?」
ホーリーが尋ねると、ウィン姫はナターシャの頭を撫ぜながら、
「インターゲット王国城までは関所が3つある。おそらく関所の情報が城に伝わり、城下町で待ち伏せしてくるだろう」
「求婚ですから、そう血なまぐさいことにはならないでしょ?」
「いや、どうかな。戦争と血を見るのが好きな国だ。容易くは解放されまい」
「さてさて、面倒なことになりそうだな。俺はここで眠るとしよう」
そう言うとギャンは道端の草原に寝転がりました。
翌朝。
太陽を嫌う吸血鬼の姿はありません。どこかで身を隠して休んでいることでしょう。夜になれば追いついてくるはずです。
「さて第一関門だな」
ウィン姫はニヤリと笑いながら進みます。
昼過ぎには第一の関所に辿り着きました。
目前には大きな門がありました。
門番の2人の男は鎧に槍と装備は完全です。
「手荒なことは無用だ。ここは大人しく通すであろう。何かするにしても私を関所と関所に挟み込んでからに違いない」
ウィン姫の云う通りに、3人はほぼ素通りのような状態で関所を抜けました。
「二番目の関所までは1日かかる。ひたすら歩くとするか」
ウィン姫が関所に併設された小さな町を歩みながら云いました。
「あんたらこのまま次の関所に向かう気かい?やめときな。山間は日が暮れると山賊が出没するよ。悪いことは云わないから、今日はここに宿をとって、朝一番で向かえばいい」
町の宿屋の女将がそう呼び止めてきます。
山賊ごときに引けをとるような3人ではありませんでしたが、明日以降のことを考慮して、ここはゆっくり休むことにしました。
山賊にせよ軍隊にせよ、明日は戦闘になる可能性が大です。
「おっ、泊まっていくかい?ありがとうねー。さあ、みんなお客さんだよ、出迎えな!」
威勢のいい女将さんです。店の奥から下働きの男や女中が出てきます。
「いらっしゃいませー!!」
久しぶりに布団で眠れるとホーリーは安堵していました。
今日の猛吹雪はひどいものです。
朝雪かきしたのに夕方にはそれ以上に積もっています。
北海道の自然は過酷です。




