第2章 6・3つの召喚
城を出立したホーリー・ウィン姫・ギャン。ウィン姫は4人目の仲間の存在を口にしますが、一体何者なのでしょうか。
第2章 6・3つの召喚
ドワーフのギャンが身構えます。背にしょった荷物と背中の間に挟めていた円形の鉄の盾を取り出し左手に、右手には鉄の斧。
ナターシャはウィン姫の腕の中で唸り声をあげています。方角は南東です。
ホーリーたちが立ち止まったのは田園の中でした。
南東には小高い山があります。他は一面が田んぼですから、夜半とはいえ月夜の晩でも見通しは抜群です。
ギャンも何かを感じているようで、南東の山を睨んで動きません。
ウィン姫もそちらの方角を気にしているようですが、表情は微笑んでいます。
ホーリーには何も感じられません。
暗い山の中に猛獣でもいるのでしょうか……。
【ご主人様、特別警報を発令いたします】
ホーリーの頭の中で、スマホアプリのマリエッタの声が響きました。
普段は電力を消費しないように電源を切っているのですが、特別な反応を探知すると自動的に電源が入り、ワイヤレスの状態で分析結果を直接脳に伝達してきます。
(特別警報?初めて聞くけど……)
【南東の方角から異常な魔力の上昇が見られました】
(異常な魔力?)
【正体は不明ですが、不死族であることは間違いありません。不死LV123、生命力158 体力60 攻撃力124 防御力385 知力98 魔力415までの探知は終了しております】
(生命力158で魔力415!今まで登場したキャラの中じゃダントツ1番じゃないの?)
【魔力が大きすぎて、これ以上の分析が不能になっています。装備も不明ですが、宝玉をひとつ所有しているようです暗黒の宝玉です】
(向こうから出向いてくれるとはラッキーだね。ここは倒して宝玉を奪おう)
【召喚が必要です。速さが385ありますので、レーザー砲などの魔法具では当たらないでしょう。ミサイルもかわされる可能性が高いです】
(ひとつの召喚じゃ勝てないってこと?3つぐらいまとめて召喚しようか、コンボになるように)
【それがよろしいかと思いますが、相手の正体が掴めぬと効果的な装備の召喚ができません】
(襲い掛かってきてからで、間に合うと思う?)
【……手遅れになるでしょうね。どんな魔法を使用してくるか未知数ですが、以前に召喚した鎧を装備しましょう。それでこちらの防御はほぼ完ぺきです。以前召喚した靴は速さが1300上昇しますし、あの剣であれば攻撃力が1453上昇します】
ホーリーがこの異世界に転生された当初に召喚した魔法具です。一度使用しているので不安もありません。
(よし、じゃあその3点を召喚しよう)
【承知いたしました】
マリエッタはそう答えると、ホーリーの足元に3つの魔法具を召喚します。
1つは羽のついた赤い靴。ホーリーは「ウイングブーツ」と名付けました。今履いている戦闘用ブーツから履き替えます。
1つは頭から被る青い鎧。ボーダーのニット帽もそのまま使用できます。ホーリーは「バリアプロテクト」と名付けました。文字通りあらゆる魔法を跳ね返します。狩衣の上からそのまままといます。
最後の1つは紫の剣。斬った相手の命を操るという恐ろしい剣です。ホーリーは「パープルソード」と名付けました。
これで攻撃力、防御力、速さは最強クラスです。
【攻撃力が1468、防御力が1578、速さが1309です】
なにせウィン姫ですら攻撃力136、防御力120、速さ88なのですから、魔法具を装備したホーリーは無敵と言っても言い過ぎではありません。しかも魔法もすべて遮断できるのです。
ウィン姫はホーリーが装備を整えているのをじっと見ていました。
ギャンが大きくひとつ呼吸をし、
「そろそろだぞ。来る」
山の影が一斉に動き出しました。
そして山を駆け下り、一目散にこちらへ向かってきます。
数にして千、くらいでしょうか。
ウィン姫もナターシャを抱きながら剣を抜きました。もともと片手剣術なので子犬を抱きながら戦うことも可能なようです。
「仲間になる気はないかもしれぬな……」
ぼそりとウィン姫は言いました。
(マリエッタ、相手はなんだ?)
【死霊です。使い魔ですね。本当の敵はまだ山の中です】
(どう戦えばいい?)
【使い魔は魔法ではありませんから直接的なダメージは受けます。この剣は魔法の剣なので死霊系にも十分ダメージを与えられます】
(よーし、それじゃ、斬って斬って斬りまくるかー!)
【はい。それでよろしいかと】
謎の不死族とホーリー一行の戦いが始まりました。
ここ数日、平穏な天候ですね。
寒さはなかなかですねー。Tシャツ・セーター・厚手のガウン・毛布。この装備でも家の中でも寒い……




