第2章 4・パーティー
ホーリーはトリミング王国国王との謁見を無事終了しました。
そしてウィン姫と共にギミリスト連合国の本部を目指す旅に向かうことになったのです。
第2章 4・パーティー
ホーリーは城内の別室に連れていかれました。
この場合、強行連行という言葉が的確です。
200坪はありそうな広間には、ホーリーの他にウィン姫とケリー。
座るに事欠かないほどの数の椅子。
東向きの壁には幾つもの上げ下げ窓。もちろん鉄格子などはついていません。
床には細かい織と珍しいデザインの豪華なシルクの絨毯が敷かれています。
「久しぶりの旅だー。ケリー、何年ぶりかな?」
ウィン姫は薄紫色のマーメイドラインドレスから、ロココスタイルのドレスに着替えています。ムートンの敷かれたソファーに飛び込み、はしゃいでいました。
こう客観的に見ると、金髪の幼気な可愛い少女のようです。
「そうですね。本格的に国を出ての旅は3年ぶりでしょうか」
ケリーはソファーの前のテーブルにコップを置き、ラム酒のようなものを注ぎます。
ケリーの服装は変わらず純白のハイ&ロードレスのドレスです。前から見ると、細く美しい脚が太ももまで露わになり、とてつもなく刺激的でした。
ホーリーはウィン姫とのギミリスト連合国の本部までの旅には不満(というよりも断りたい気持ちでいっぱい)でしたが、侍女のケリーも当然同行するはずですから、ホーリーの胸はときめきます。
ケリーは優しく、素敵で、魅惑的なお姉様タイプで、ウィン姫とは正反対でした。
ウィン姫は何事も自分中心で、相手の気持ちを汲み取ることができない、身勝手なお嬢様タイプ。まあ、実際に姫様なのですから仕方ないのでしょうが、ホーリーにとってはじゃじゃ馬にしか映りません。
ただ、そのスタイルに心惹かれた瞬間が、巨大蟻との激闘の中であったのは確かでした。しかしそれは、男ならばどんな女にも等しく感じる本能のようなものです。深い意味はないでしょう。
パン!パン!
ソファーに大胆に寝転んでいるウィン姫が両手を2回叩きました。
召使いが「失礼いたします」と言いながら室内に入ってきました。何か動物を抱えています。
「おお、これがナターシャの子か。確かに目のあたりがそっくりだ。歳は幾つになる?」
ウィン姫は歓喜の声をあげながら、召使いからその動物を受け取りました。
子犬です。それでも5~6㎏はありそうです。おそらくは大型犬の子どもなのでしょう。
「まだ生まれて5ヶ月です、姫様」
「そうか、よし、犬は幼い頃の経験で大きく成長するものだ。今回の旅に連れていこう。名前はそうだな……華々しく戦った名誉ある親の名を継げ。お前は今日からナターシャだ」
ウィン姫はそう言って子犬を抱きしめました。子犬も愛くるしい笑顔を浮かべて、ウィン姫の顔を舐め始めます。
「本部への旅路に貴様のあのあっという間に到着する魔法は使わぬぞ。諸国を巡って様々な経験をするのも大切な勉強だ。貴様の魔法には味がない」
突如、ウィン姫から話を振られてホーリーは動揺しました。
ホーリーの思惑をウィン姫は見事に言い当てていました。
と、いうのも、ホーリーはワープ専用小型車を利用して、即座にギミリスト連合国の本部へ向かう予定だったのです。できるだけ時間をかけずに今回の問題を解決するつもりでしたから、ウィン姫のこの提案はホーリーの考えの真逆です。
「あとな、旅路のパーティー(編成)だが、ケリーは外すことする」
ウィン姫はホーリーの表情の変化をじっと見つめながらそう言い放ちました。
(え!?なんで!?)
あきらかにまたホーリーの顔に動揺の色が浮かびます。
「ケリーがいるということは、そこにトリミング王国の姫がいるということを周囲にアピールしていることになる。あくまでも今回の任務は非公式なもの。他国には言い伝えの魔導士とトリミング王国の姫が一緒にいることを知られたくはないのだ。ケリーはこのように美しい娘ゆえどこにいても注目の的だからな」
「過分な評価にございます。姫様に比べれば私など宝玉とガラス玉ほどの違いがございます」
ケリーは謙遜していたが、確かにそうでした。これほどの美しい女性が旅をしていれば当然噂になります。ウィン姫の主張は一理あるのです。あるのですが……
(世間の注目の的はきっとキミだろうけどね)
ウィン姫のハチャメチャぶりが、道すがら大きな話題になっていくこともまた必定でした。
それにしてもケリーと一緒に旅ができるとほくそ笑んでいたホーリーにとっては誤算です。
パン!パン!パン!
ウィン姫がソファーで子犬のナターシャを抱きながら、今度は3回手を叩きました。
「失礼する」
そう言って小さな男が入ってきました。背の高さはホーリーの半分ほどでしょうか。筋肉質で腕や首の太さはホーリーを遥かに凌駕しています。個性的な民族衣装を身にまとっています。
「今回のパーティーに加わることになったドワーフ族のギャンだ」
ウィン姫がそう紹介すると、ギャンというその小さな男はぎこちないお辞儀をし、
「裸足の魔導士殿、ギャンと申す。お見知りおきを」
ホーリーも唾を飲み込みながな礼をしました。
「ドワーフの王族の流れを汲むナネット族と我がトリミング王国は100年以上の昔から深い友好関係を結んでいる。今回、言い伝えの男の出現を知り、ぜひその真価を見極めたいという申し出だ。別に異存はあるまい?」
ウィン姫に問われ、ホーリーは無言で何度もうなずきます。
(ドワーフ?聞いたことがあるけど、もう完全におとぎ話だな……こりゃ)
【ホーリー様、ドワーフは妖精の国で勢力を握っている種族です】
(妖精の国?あるんだ……まあ、あるよねー、ファンタジーの世界では鉄板だもんね)
【この世界は約4割を巨大昆虫の国が占め、3割を妖精の国、2割を不死族の国、そしてのこり1割が人類であるギミリスト連合国になります。大きく4つに分けたうちのひとつが妖精の国で、総合的な戦力は巨大昆虫に匹敵します。他2つの国に比べ、比較的人類に友好的な国です】
ホーリーの頭の中でスマホアプリのマリエッタが語り掛けました。
それにしてもケリーがパーティーから外れて、この小さな醜い男が入ってくるとはなんとも皮肉な話です。
「では、この3人と1匹で旅をするのですね」
ホーリーはもうやけくそな気分でそう尋ねました。
ウィン姫はニヤリと笑い、
「いや、もうもう一人、特別ゲストを招いている。果たして来るかどうか……来たら来たでまた面白くなる」
大きな問題を起こそうとしているときの笑顔だと、ケリーはこのとき思いました。
昨日はお通夜。今日はお葬式です。
なぜか北海道でもうちの地域だけは雪が降っていません。
不思議な話です。
明日も午前3時にお会い出来たら、よろしくお願いしますね。




