第2章 1・ホーリーLV42
ホーリーら一行は、巨大蟻に連れ去られたケリー救出に成功しました。そしてトリミング王国へと戻ったのです。
第2章 1・ホーリーLV42
【おはようございます。ご主人様。午前6時、起床のお時間です】
「……あと10分寝かせてー……」
ホーリーは布団に潜り込んでそんな悲鳴をあげました。
【本日は、トリミング王国国王との面会が午前10時から予定されております。その前にケリー様との打ち合わせが午前8時からです。朝食と身支度、城までの移動時間を考えると限界です】
「わかった、わかった。起きるよ!あー、やっぱり寝て起きてもこの世界なんだなー」
ホーリーは頭を掻きながら辺りを見渡します。
自宅の部屋とは違い、ベットの他は鏡台くらいしかない殺風景な一室です。
窓には鉄格子。外の景色は快晴です。遠くに幾つもの山が見えます。眼下は城下町です。朝早くだというのに人々は賑わっていました。ただ、あまりにも遠すぎて表情までは見えません。
ここは国家の要人、またはギミリスト連合国本部に連行される超極悪人の犯罪者を一時的に保護する場所で、地上30mの塔の最上階です。
外に出るためのドアは分厚い鉄でできていて、自分の意思で外に出ることを許されてはいません。
それほどまでにホーリーの存在はトリミング王国にとって重要かつ危険なものでした。
なにせ言い伝えにある「非情なる虐殺を繰り返す・裸足の魔導士」であり、和平関係を保ってきたギミリスト連合国と巨大昆虫の国との戦争に発展しかねない問題行動を積み重ねているのです。
はたしてトリミング王国国王はどのような判断を下すのか。それがこれからの面会で決まります。
ホーリーは鏡台の前の椅子に座りました。そして自分の顔を見つめます。
頬がこけていました。あごのラインがシャープになっています。いつもおどおどしていた目元がはっきりとし、強い意志を感じさせます。邪魔な前髪をバッサリと切り、全体的にも短めにカットしたので猿っぽい印象になりましたが、以前の自分と比べると、見違えるようです。
ここまでの過酷な経験のお陰で「男」として磨かれ、それが表面にも表れていることを実感し、ホーリーは喜びを感じました。
【それでは改めましてホーリー様の現在についての分析を報告させていただきます。人間LV42、生命力10、体力9、攻撃力15、防御力13、速さ9、知力15、魔力0】
「へー、最初の頃に比べると全体的にすごく上がってるね。うれしいなー」
【特殊能力はありません。スキルは援護LV6、軍の統率LV5、虐殺LV21、新たに巨大蟻上級ハンターの称号を得ました。トリミング王国との友好度35、黒風党との友好度30に上がっています。会話の際の威圧が70%アップです】
「まあ、虐殺のLVだけ飛びぬけてるのは仕方ないな……」
ホーリーは、ガミジン族の女王蟻との闘いを思い出してため息をこぼしました。幼虫も卵も容赦なくレーザー砲で焼き払ったのですから。
【伝説の巨大昆虫を倒したことと、捕虜の救出に成功した成果から名声度が65になっております】
「名声ねー…まあ、数値だけ言われても、いまいちピンとこないな」
【例をあげますと、かつて無差別殺人を犯して21人を殺害した死刑囚の虐殺LVが9です】
「……それで僕はその3倍以上のLV21なんだ……複雑な心境だな」
【この世界において虐殺LVが20を突破した例はホーリー様を除いて、3件だけです。過去500年の範囲になりますが。1件は不死族の国、残り2件は人間の国であるギミリスト連合国です。3名とも現在、存命中というデータが残っています】
「過去500年で僕の他に3名だけ?罪悪感が募るだけの情報だね……ありがとうマリエッタ。開き直って頑張るよ」
ホーリーは皮肉たっぷりにそう答えました。
【名声度につきましては、将兵を例に出しますと、30で諸国に名の売れた名将の値です】
「30で名将……それで僕は65なの?」
【はい。将兵で65は英雄の域です。一国にひとりいるかどうかという貴重な存在と言えるでしょう】
「それは素直に喜べる話だね!」
興奮気味にホーリーが答えました。
【はい。それだけホーリー様がご活躍なさったという結果です】
「あいがとうマリエッタ。きみの協力があったからこその活躍だよ。これから先もよろしくね。そう言えば、充電のほうは大丈夫?昨日、人間の傷を治療する薬を召喚して、ケリーさんやキリュウさん、ウィン姫を治したし、僕の足の裏もすっかり完治したけど」
【召喚した魔法具はひとつだけでしたので、まだ75%の電力が残っています。しかし今後のことを考えると、できれば2つくらいの宝玉を常備しておきたいところです】
「宝玉のある場所はマリエッタが調べられるんだよね。このトリミング王国にはもう無いのかな?」
【はい。ございません。基本的にはダンジョン内の伝説級が所有しているケースが多いです。あとはギミリスト連合国の諸国の国王が国宝として所有しています。道端に偶然落ちていたりすることはまず考えられません】
「たくさん蓄えている場所や人はいないの?」
【調べられる範囲内では、ギミリスト連合国本部に15個、不死族の国全体に55個の宝玉が存在することがわかっています】
「55個!?そんなにあるんだ。そこに行ってたくさんゲットするのが効率いいよね」
【不死族の国も現状ではギミリスト連合国と和睦中ですが、非情に危険な存在です。特に上位に位置する吸血鬼や妖魔を束ねる不死魔導士は人間の力を遥かに超越しています】
「吸血鬼なんて、本当にいるんだ。やっぱり血を吸われると同じ吸血鬼になっちゃうの?」
【いえ。吸血鬼に変貌するのはレアなケースです。かなり複雑な事情が絡むようです。普通は吸血鬼のウィルスに侵入されると不死兵化するようです】
「ゾンビねー。完全にホラー映画の世界だな」
そうこう会話をしているうちに時間が経過し、ケリーとの打ち合わせが近づいてきました。
果たしてホーリーの処置はどのような展開になっていくのでしょうか。
さて、ホーリーたちの本格的な冒険が始まる第2章の開幕です。
ご感想、ブックマーク、評価、ぜひお待ちしております!!
また明日の午前3時にお会いしましょう!!




