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第1章 36・ケリー救出の結末

第1章 36・ケリー救出の結末


 ホーリーたちがガミジン族の蟻塚に到着したときには、シグナリ族による蟻塚の占拠が終わった後でした。

 戦いはまだ始まっていないはず、というホーリーの目論見は大きく外れています。

 ガミジン族の同士討ちを誘発するフェロモン入りスプレーも、こうなったら無用の長物です。


 巨人バスケスの両腕に抱えられて運ばれているのは、ウィン姫です。

 ウィン姫は超巨大蟻バ・アントとの一騎打ちの際、敵を見事に討ち取ったものの、強力な神経毒に身体からだを侵されました。

 

 ホーリーは葛藤の末、様々な選択肢の中からワープ専用の車を召喚することを選びました。この車を召喚し、使用することで、ガミジン族の蟻塚攻略に間に合う計算でしたし、ウィン姫の毒を中和することのできる薬の在りかをヤンから確認することができるはずでした。


 ガミジン族、シグナリ族、両方の壮絶なる戦闘を物語るおびただしい遺骸の中を通り抜け、ホーリーたちは蟻塚の頂上を目指します。

 王国軍将校のラムサスは、ここに囚われている妹ケリーのことよりもウィン姫の容態ばかりを気にして暗い表情です。

 少年ノエルは魔力を放出し過ぎて疲労困憊ですが、表情は珍しい蟻塚の内側を見られて生き生きとしていました。


 両軍の激戦を繰り広げた枡形ますがたを2つ通り抜け、ホーリーたちはついにヨークたちに追いつきました。


 松明の火に照らされて、弓の使い手ヨーク、黒き破壊者キリュウ、参謀ヒューイ、黒風党ブラームの当主である老人ヤン、そして囚われていたケリーの姿がそこにはありました。


 「姫様!!」

ケリーが右足を引きずって駆け寄ります。ケリーはボロボロになった衣服の上からヒューイのまとっていたマントをかけていました。


 「兄上、姫様のご容態は!?」

ケリーがラムサスに尋ねます。ラムサスは、

超巨大蟻バ・アントの毒で……」

そう答えるのが精一杯の様子です。


 「なんじゃ、トリミング王国の姫様も毒にやられたんか」

両手を薬の調合で真っ赤に染めたヤンがあきれ顔でそう言いました。


 ヤンは、ケリー救出のために、神経毒であるα―ラトロトキシンの抗毒素血清に成功していました。


 「これを、傷口から注入すれば解毒作用があります」

ヒューイがそう言って、地面に寝かせられたウィン姫の傷口を確認します。効果はケリーで実証済みです。


 薬を注入されてしばらく経つと、ウィン姫が目を開きました。

 しかしまだ全身が麻痺した状態です。


 「よかった、姫様……」

ケリーがウィン姫の身体を抱きしめます。ウィン姫は痺れた舌を駆使し、

「……キェ、リーか……まひゃせて、しゅまなん、だ……」

「姫様、しばらくここにて安静に」

ラムサスもホッとした表情です。


 「……ニャ、ターシャは、じょこじゃ……」

それでもウィン姫は必死になって首を動かし、愛犬のナターシャを探します。


 「……」

ラムサスは目を閉じて静かに首を横に振りました。


 ナターシャは深緑の宝玉を見つけ出すためにガミジン族の群れの中に飛び込み、瀕死の重傷を負ったのです。そして、毒に侵され傷ついた主人であるウィン姫を見守りながら息を引き取りました。


 「……そうか……」

ウィン姫も目を閉じて感慨にふけります。その両目からは涙が流れ落ちました。


 

 こうして、ガミジン族のトリミング王国地下下水道地帯におけるホーリー襲撃から端を発した巨大蟻アントとの闘いは幕を下ろしたのです。

 結果、ガミジン族は滅亡。

 シグナリ族はクイという新しい女王蟻クイーンを迎え、またガミジン族の縄張りを奪い勢力を拡大させました。

 あくまでも巨大蟻アント同士の縄張り争いという形で決着がついたのです。


 ホーリー側は、ガミジン族に囚われたウィン姫の侍女ケリーの救出に成功しましたが、ウィン姫の愛犬ナターシャを失いました。

 損害がそれだけに抑えられたのは奇跡とも言えます。


 成果は捕虜の救出だけではなく、ホーリーの所有するスマホのアプリ「マリエッタ」のバージョンアップにも成功しています。これで召喚できる魔法具は5つになりました。召喚ターンも2時間ですから、この異世界に転生してきた当時からみると確実な成長を遂げています。


 さらにホーリーも兵の統率の能力に目覚め、格段なレベルアップをしています。


 少年ノエルはガミジン族の女王蟻クイーンの遺骸の近くから貴重な道具アイテムを多数発見しており、黒風党ブラームとしても戦力を大きく伸ばすことになりました。


 一番の成果は、ウィン姫をはじめとするトリミング王国とヤンを筆頭とする黒風党ブラームの友好関係が成立したことでしょう。

 これは今後、互いに有益な結果をもたらすことになります。


 問題として残ったのはただひとつ。

 ウィン姫のホーリーへの求婚だけです。


 そしてこの問題がホーリーの運命を大きく変えることになるのです。


 このとき、ホーリーはこの世界が自分の夢の世界ではなく、確かに存在する現実の世界であるという認識を初めて持ち始めていました。



 【第1章:完】


さて、いよいよ第2章突入です。

トリミング王国に激震が走ります!!

明朝3時にお会いしましょう!!

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