第1章 34・キリュウの剣
第1章 34・キリュウの剣
キリュウが細く長い呼吸をして剣を構えます。
キリュウには剣術の流儀などありません。あるのは幼き頃から戦場で練り上げた独特の剣技です。
キリュウの剣の最大の特徴は、巨大な剣を凄まじい速度で撃ち込めるそのパワーでした。腕や肩の力だけではなく、特に下半身が極限まで鍛えられています。
対峙する超巨大蟻も、キリュウから何かを感じたのか、松明の火が照らし出す地点から徐々に暗闇へ動きます。
キリュウは仕掛けずに構えたままです。
超巨大蟻はしりじりと後退し、暗闇の中を回り込みます。
そこから一気にキリュウに襲い掛かります。
まさに虎のような速度です。
待ち構えていたキリュウは3歩踏み出します。
互いにすれ違ったのは一瞬でした。
キリュウは見事に巨大なあごをかわしていたのに対し、超巨大蟻は後ろの右足を斬り捨てられています。
キリュウがすかさず振り返って攻勢に出ました。
猛然と踏み込み繰り出された一撃が、超巨大蟻の右あごを吹き飛ばしました。
超巨大蟻は、キリュウの剣を振り切った後の隙をめがけて神経毒を持つ触覚を突き出しますが、キリュウの動きに乱れはなく、返す刃でふたつの触覚を斬り捨てました。
ギギギギイギギギギギギ……
唸り声とともに、超巨大蟻の赤い目がさらに光ります。
すると奥の闇から何か大きな物体が飛来してキリュウの背後を襲いました。
半身の態勢でかわそうとしましたが、物体もその動きに合わせて空中を曲がり、キリュウの身体に激突しました。
キリュウが吹っ飛びます。それほどの威力でした。
「へー、これが念力の使い方ってやつか」
キリュウはすぐに立ち上がり、剣を構えました。その口からは血が流れています。
飛来した物体は後方に控えていた巨大蟻の1匹です。超巨大蟻の念力に操られて飛んできたようでした。飛来した巨大蟻はキリュウの漆黒の甲冑に真正面から激突し、頭が割れて死んでいました。
ギギギギギギギギギ……
超巨大蟻の唸り声に合わせて、今度は2匹の巨大蟻が声も出さずに飛んできます。
「ふーーっ」
キリュウは呼吸とともに2歩踏み込むと、飛んでくるその2匹を空中で両断します。
今度は一度に5匹の巨大蟻が立て続けに飛んできました。
「往生際が悪いな。お前の力量じゃ、俺は倒せねえよ」
キリュウはその巨大な剣を振ると、一度に3匹の巨大蟻を両断し、さらに踏み込んで残り2匹を一撃で両断しました。
「おいおい、今度は何をしよってんだ」
キリュウが目前の光景を見て、舌打ちします。
自らが流す青い血で汚れ果てた超巨大蟻の頭上には囚われているケリーの姿がありました。念力で浮かび上がらせているのです。
「あの勢いで飛ばされたんじゃ、あの女は頭が割れて死んじまうぞ」
斬り捨てるのは簡単ですが、受け止めるのは正直難しそうです。
さらに3匹の巨大蟻がケリーの近くに浮かび上がっています。
1匹がキリュウに飛んできます。
キリュウは容易に真っ二つにして避けます。
すると超巨大蟻はケリーの右足をあごで貫きました。
赤い血が地面に降り注ぎます。ケリーはどういうわけか意識を失っているようで身動きひとつしません。
「避けるなってことか……」
キリュウがそう言って奥歯を噛み締めました。
1匹が飛んできます。
キリュウは剣の構えを解いてその衝撃を正面から受けました。
激しく背後に吹き飛びます。
あばら骨が何本か折れたような感触がありました。
血を吐きながらキリュウが立ち上がります。
もう1匹が飛んできます。
「ヨーク!!!」
キリュウが叫びました。叫びながらも踏み込みます。
「わかってるよ!!」
ヨークがそう答えて速射で2本の矢を放ちました。矢は見事に超巨大蟻の両目を貫きます。
念力が解けて、飛んでいた巨大蟻は地に落ちました。
キリュウはその身体を蹴って上空に飛びあがると、
「うりゃああああ!!!!」
そのまま巨大な剣を撃ち込み、超巨大蟻の身体を両断しました。
滝のように青い血が流れます。
断末魔さえあげさせぬ一撃でした。
そしてキリュウは、そのあごに右足が突き刺さっているケリーを救い出すのでした。
今日は屋根の雪下ろしで2時間かかりました……
2週間前にやったばかりなのに。本州もそろそろ雪が降るようですね。
明日も午前3時にお会いしましょう。




