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第1章 32・決死隊

第1章 32・決死隊


 「またもや枡形ますがたですね。全員で突入しても被害が増すだけです。ここは決死隊を募って奥の門を破るより他に方法がありません」

やせっぽっちのヒューイがそう提案しました。


 暗闇の中、松明の火に照らされ、それぞれの表情が浮かび上がります。

 ヨークは松明の火に煙草を近づけて吸い始め、余裕はある様子です。

 ヤンは高齢ですし、息を切らしながら額は汗だくです。眼鏡は曇っています。

 キリュウは頬や首筋に狭間さまからの攻撃を受けて傷ついていましたが、かすり傷のようでまるで気にもとめていません。


 「俺がこの剣で突き破る」

キリュウがそう言うと、さっさと室内に入ろうとします。それをヒューイが一端制して、

「さすがにひとりでは完全に狙い撃ちです」


 するとシグナリ族から5匹が前に出ました。それぞれ傷を負っていますが、キリュウ同様に気迫で痛みを抑えています。どうやらヒューイの話が伝わっているようでした。決死隊への志願です。


 「僕も行くよ。ただ的にされているのもしゃくだしね」

ヨークが松明を置きました。弓は両手を利用するので、松明を持っていられないのです。

 さすがのヨークもこの暗闇の中で見えない狭間を狙い撃つことはできないでしょう。


 「そこのタイミングは参謀長にお願いしますよ」

ヨークはそう言って速射に備えて矢を確認します。矢の数も残り10本あまりに減ってきていました。


 「よし、それじゃ行くぜ!」

キリュウの声が響きました。松明を手に一気に駆けます。

 5匹のシグナリ族もそれぞれ松明を頭に巻き付けて駆けだしました。方向はバラバラです。目指すは奥の門。ヨークは最後に出ました。


 太い針が発射され、暗闇を割く音が幾つも重なります。


 門を目指し駆ける速度についていけずに無数の針が地面に刺さります。

 特にシグナリ族は虎のように駆けて、あっという間に門に辿り着くと、交互に門に身体からだをぶつけていきました。


 狭間からの攻撃が門前に集中します。


 待機しながら門への衝突を繰り返すシグナリ族の背に無数の針が突き刺さります。


 「うぉおー!!!」

キリュウが先ほどと同じように刃を平らにして猛然と突きを放ちました。


 「チッ!さっきよりも頑丈な門だ!一撃じゃ無理か……」

巨大な剣の先は門に突き刺さりますが、門の耐久力のほうが上でした。


 四方の狭間からの集中攻撃がキリュウを襲います。

 剣を振るって何本かは弾き返しますが、肩口に1本、右の太ももに1本突き刺さりました。額を襲った針は寸前で避けましたが、額が割けて血が飛び散ります。


 その間にもシグナリ族が門への衝突を繰り返しました。


 1匹は飛来した針で頭を貫かれ倒れています。

 もう1匹も背中に20本以上の針を受けて力尽きました。


 「ヨーク!!」

室外で待機しているヒューイがそう叫んで、松明を枡形の天井めがけて投げました。


 天井周辺が松明の火で照らされます。

 大量の狭間が一瞬だけ見えました。


 「あんまり調子に乗られてもね、こっちは連合国相手に戦っている黒風党ブラームだよ。なめてもらったら痛い目みるぜ」

そう言い放つと、ヨークはすでに暗闇に包まれている天井周辺に速射します。7本の矢が闇に吸い込まれ、悲鳴が響き渡りました。


 「一緒にぶちかまずぞ!!」

キリュウの言葉に合わせて残りのシグナリ族も呼吸を整えます。


 2mほど離れて、一気に突撃します。


 降り注ぐ針が1匹の身体を貫き、地面に縫い付けます。


 残った2匹もかなりの針を受けていますが、門に激突しました。

 キリュウも同時に強烈な突きを放ちます。


 門が音をたてて破れました。


 「よし!!みんな急ごう」

ヒューイが室外の残りのシグナリ族に声をかけ、破れた門を目指します。


 そこへ狭間から降る針が容赦なく浴びせられます。


 20匹ほどのシグナリ族が倒れました。


 全員が全力で駆けて門を突破します。


 門の先はまだ暗闇が続いていました。決死隊に志願し、門を突き破ることに成功した2匹のシグナリ族も力尽きて倒れていました。


 「見事な戦いぶりだったぜ」

キリュウが息を引き取ったその2匹にそう声をかけました。決死隊5匹のお陰で、わずか25匹ほどの損害で2つ目の枡形を突破できたのです。


 松明を照らし、先を急ぎます。


 もうかなりの距離を登ってきていましが、ゴールが見えてきません。


 「分かれ道か……ヨーク、どっちだ?」

キリュウが尋ねます。ヨークは松明の火で手元を照らして地図を確認しました。事前にホーリーからこの蟻塚の道筋が描かれた紙を預かってきています。


 「どちらの道の先にも大きな広間があるなー。人質が囚われている可能性はどっちにもあるみたいだね」

ヨークはそう言うと肩をすくめました。


 シグナリ族の兵隊蟻たちの数も3千あまり。それをさらに分けることになります。

 敵はまだこの先に3万近くはいるはずです。


 「片方を潰してから、もう片方に向かうしかねえだろう。この兵力を分散させたら各個撃破されちまう」

キリュウの提案は最もです。


 「そうですね。それが賢明でしょう。どっちに進むかヨーク殿が決めてください」

ヒューイもそう言って同意します。


 「僕が決めるの?ただ右手に向かうとさらに分かれ道があるだよね……そうすると頂上か……やっぱり怪しいのは右かな」

ヨークはそう決めて、右の通路を進んでいきます。


 「ほらね、また分かれ道だ。じゃあ、これを左に行こう」

ヨークの指示に従ってどんどん進んでいきます。傾斜が厳しくなってきました。


 「で、最後の門と…。この先が本丸のはずだけど」


 ヨークたちの目前に今までで一番大きく頑丈そうな門が現れました。



そろそろ第1章も終盤ですね。

はやく第2章に入りたいです!!

毎日読んでくれている皆様ありがとうござます!!

初めて読んでいる方も今後もよろしくお願いしますね!!

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