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第1章 31・狭間と枡形

第1章 31・狭間と枡形


 ホーリーたちとは別隊のヨークたちが、ガミジン族5万が守る蟻塚への突入に成功し、第1の間で進撃を止めました。

 

 そこは3mの高さはあるL字型の空間でした。

 奥には先に進む門があり、堅く閉ざされています。

 周囲を取り囲む土壁は厚く、四方八方どちらの壁を確認しても無数の小さな穴が開いています。大きさはちょうど手の平ぐらいでしょうか。

 窓のような大きな穴も見上げると幾つかあります。そこから月光の光を取り込んでいて、視界は思ったよりも良好です。


 入り口近くではシグナル族千匹が守りを堅め、外から戻ろうとする6千匹のガミジン族を抑えています。入り口が狭いので、多勢の利は活かしにくく、十分守りきれそうです。


 すると、なにか空を切る鋭い音がしました。

 L字型の第1の間の中でです。


 ギギギギギ……


 シグナリ族の1匹が呻きました。

 見ると背中に太い針のようなものが突き刺さっています。かなりの威力で飛んできたようで、腹を貫通し、地面まで達しています。


 空を切る鋭い音が立て続けに聞こえてきました。


 キリュウがその巨大な剣をわずかに動かし、飛来してくるものを弾きます。


 キーン!!


 金属音がして、飛来した物体は地に突き刺さりました。


 見渡すと5匹のシグナリ族が突き刺されて地面に縫い付けられています。


 ここに至り、キリュウもヨークも、ヒューイが言う「狭間さま」の役割を理解しました。正体不明の敵がそのわずかな隙間から槍のように太い針をかなりの速度で撃ち込んでくるのです。

 しかもこのL字型の空間には身をかわす場所もありません。


 完全に周囲を囲われて狙い撃ちされている状態です。

 

 城にはこのような場所が幾つもあります。敵を一か所に集中させて叩く場所です。一般的に「枡形ますがた」と呼ばれる防御システムのひとつです。


 飛来する針の数が増えてきます。


 ヒューイはその長槍で見事に弾き返していました。


 ヨークは紙一重で避けると、そのわずかな隙間の狭間めがけて矢を放ちます。

 狭間の奥の敵に命中したようで、鋭い悲鳴が聞こえてきました。

 間髪入れずにヨークが速射します。

 7か所の狭間に仕損じることなく命中し、悲鳴が続きます。


 シグナリ族の1匹が、先に進むための門にぶつかっていきました。


 ガン!!!


 強い衝撃で、地面がやや揺れましたが、門はそれ以上に丈夫にできているようで、へこみもしていません。

 それでもその1匹は門への突撃を繰り返します。


 その間も狭間からの攻撃は続き、針に突き刺さり身動きがとれなくなるシグナリ族が続出していました。


 門に突撃を繰り返していた1匹のシグナリ族も集中攻撃を受けて、身体からだに8本の針を撃ち込まれていますが、他の仲間よりも頑丈にできているようで、貫通されてはいません。青い血を吹き出しながら懸命に門に突進していきます。


 「よくやった。ここからは俺に任せろ!」

漆黒の甲冑姿のキリュウが、背に8本の針を受けたシグナリ族を制して、門の前に立ちます。集中攻撃で8本の針が飛んできましたが、素早い剣さばきですべてを叩き落とします。


 「うぉおー!!!」


 獣のような咆哮とともに、キリュウがその巨大な剣の刃を地面と平行に寝かせて、渾身の力で門に突きを放ちます。強烈な踏み込みで地面が震えました。

 剣は見事に門を割き、突きの突進の威力そのままに身体ごと門を砕きました。


 「お前が門の耐久力を削ってくれたおかげだ」

そう背後のシグナリ族に笑顔で声をかけましたが、8本の針を受けたシグナリ族はすでに絶命していました。


 「よし、入り口を封鎖しているもの以外は先に進むぞ!」

ヨークが進軍を指示します。


 門の先はもはや漆黒の暗闇の世界です。


 キリュウをはじめ、ヨークやヒューイ、ヤンが松明に火をつけて辺りを照らします。


 道は斜面になっていて蟻塚の上に進めるようになっていました。


 進軍の途中で、天井と壁が崩れ、後方を進んでいたシグナリ族200匹あまりが下敷きとなりました。そこにガミジン族の伏兵5千が襲い掛かります。


 完全なる白兵戦です。


 キリュウとヒューイが舞い戻り、陣を立て直します。キリュウの剣撃はまさに竜巻のような勢いで、伏兵のガミジン族の首をみるみる刎ねていきました。そのお陰でシグナル族も態勢を整えて、攻勢に転じます。


 伏兵は撃退しましたが、下敷きになった巨大蟻アントを含めシグナリ族も2千の損害です。


 休む間もなく先を進むと、また門です。

 木を組んで作っているにしては頑丈です。鉄のように硬くなる特殊な土を混ぜ込んでいるからでしょう。


 先頭をいく2匹のシグナリ族が衝突を何度も繰り返し、門を破壊しました。


 「また枡形ですね……」

ヒューイが唸ります。


 門の先はまた大きな空間になっていて、先ほど同様に四方を壁に囲まれ、それぞれの壁に無数の狭間が作られています。今度は松明の火で照らさなければ確認できません。

 闇の中から針が飛んでくるのです。


 右奥にはまたも頑丈そうな門。

 

 ここまでで残ったシグナリ族は3千を下回っていますし、傷を負っているものも少なくはありません。

 この枡形でさらに損害を受けると、全滅に近い数になってしまうのです。


 囚われているケリーの居場所もわからぬままです。


 「さてと、どうしたものですかね……」

黒風党ブラームの参謀役であるヒューイは、左手で自分の唇に触れながら考え始めました。いつものヒューイの癖です。鋭い眼光で、松明の火に揺れて見える奥の門を見つめています。


第1章もそろそろ終盤です。はたしてケリーは救出されるのか。ウィン姫の容態はいったいどうなるのか。

毎朝3時に更新中です。ご感想お待ちしております!!

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