第1章 30・攻城戦
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第1章 30・攻城戦
ホーリーやウィン姫がシグナリ族の蟻塚周辺で、ガミジン族10万を迎え撃っている頃、ガミジン族の蟻塚には、別隊が到着していました。
率いるは黒風党の弓使いヨーク。続くは「ブラバス」の異名をもつ黒き破壊者キリュウ。党首のヤン。参謀役のヒューイ。そしてシグナリ族の巨大蟻7千匹です。
ホーリーたちの思惑以上に早く到着したのは、シグナリ族がホーリーの召喚した薬でパワーアップしており、進む速度も上がっていたからです。ヨークたちはその背に乗ってここまで辿り着いたのでした。
ガミジン族の蟻塚には、トリミング王国からさらってきたウィン姫の侍女ケリーを囮に、5万の兵隊蟻が待ち伏せをしていました。
女王蟻をはじめ幼虫や子ども蟻、卵などはすでにこの蟻塚を撤退し、シグナリ族の蟻塚への巣替えのため出払っています。
巣に残った5万のガミジン族の兵隊蟻の使命は、侵略者にある程度のダメージを与えてから、わざと撤退し、ガミジン族の蟻塚を人間が征服したという事実を作り上げることです。
この時、蟻塚全体の指揮を執っていた将軍蟻は、今後続くであろう人間との戦争を考えて、侵略者の8~9割は討ち取ってから撤退しようと考えていました。
つまり、そこまでの損害を与えるまでは戦い続けるということです。
蟻塚の入り口に配した兵は1万。
敵勢力に強力な魔導士がいることが事前に判明していたので、ガミジン族側もこの数で防ぎきれるとは思っていません。
対するヨーク側は、ホーリーから預かってきたフェロモン入りのスプレーをいくら吹きかけても効果が無いことで戸惑っていました。このフェロモンは女王蟻のものと同質で、他の巨大蟻はその命令を忠実に実行するはずなのです。
しかし、実はホーリーが召喚した魔法具は、その場にホーリーがいないと効果を発揮しないのです。これはシグナリ族の蟻塚を出発する際には誰も知らない事実でした。
「どうしようかな。これ、効き目がないんだけど」
ヨークが煙草を吸いながらぼやきます。
ヒューイは腕組みをしながらしばらく思案し、
「どういう理由で魔法の効果を発揮しないかは私にもわかりません。もしかするとあちらでホーリー殿に何かあったのかもしれません」
「何かって?死んだ、とか?」
「わかりませんし、確かめようもないことです。ここはホーリー殿の魔法に頼らず攻め込むしかありませんね」
「まあ、数じゃ少し劣るような気もするけど、なんせシグナリちゃんたちはパワーアップしてるからなー。正面からの力攻めで何とかなるか」
指揮を執るヨークがそう判断しました。
「正面に4千、左翼に3千、右翼に3千といった配置の鶴翼の陣じゃの。正面から攻めると左右から挟撃される陣形。まさか巨大昆虫たちの群れが陣を敷けるとは驚きじゃの」
ずれた眼鏡を直しながら老齢のヤンが感心しながら言いました。
「どうする?ヒューイ参謀長。東と西に兵を分けて同時に攻める?」
ヨークが尋ねます。ヒューイは自らの唇を左手で触れながら考え始めました。ヒューイが悩むときの癖です。導かれる解答はだいたいが正答でした。
「いや、この際、真正面から攻めましょう。通常、鶴翼の陣に対して正面から攻めることは誤った選択ですが、何せこちらにはキリュウ殿という最高の持ち駒があります」
そう答えてヒューイはニヤリと笑いました。
巨大な剣を肩に担いだキリュウは顔色一つ変えず、
「俺は構わないぞ。ただし、一番槍はシグナリ族に譲るように言い含められてきている。この4匹を借りて、俺がまず先頭をいこう」
ホーリーたちが最初に出会った4匹のシグナリ族です。囮になった仲間を救出しようとしてガミジン族の待ち伏せにあい、重傷を負ったところをホーリーたちに救われたのでした。薬の効果で身体の力は増大しています。
「鶴翼の陣を圧倒するのは、敵が想定する以上の突破力です。そして迅速な速度。キリュウ殿に斬り込んでいただき、そこに全員が全力疾走で続きます」
ヒューイの指示に全員がうなずき了承しました。
漆黒の甲冑姿のキリュウが4匹の中で最も大きな巨大蟻の背に乗ります。
「そんじゃ、始めようか。遅れをとるなよ、いくぜ!!」
キリュウが叫ぶと4匹が全力で駆け始めます。目指すは中央に位置する4千の陣です。
「よーし、僕たちも頑張っていきますか!」
ヨークが弓を掲げて全軍出陣の合図を出します。残ったシグナリ族7千あまりと、その背にヨーク、ヒューイ、ヤンが乗って蟻塚を目指します。
力の増強したシグナリ族7千の進軍は地を揺らします。
大きな月がガミジン族の山のような巨大な蟻塚を美しく照らしていました。
入り口を守る兵隊蟻たちの一匹がすぐに異常に気が付きました。
敵襲来の鳴き声を発します。
「遅せえよ!!」
敵が備えるより早くキリュウたち4匹が敵陣に突撃します。
キリュウを乗せていない3匹がまずガミジン族の兵隊蟻に襲い掛かり、前足で敵の頭を踏みつぶします。
シグナリ族の先鋒が一番槍をつけたことを確認したキリュウは剣を構え、疾駆するシグナリ族の巨大蟻の背から疾風の如く、剣を振るいます。
瞬く間に20近くのガミジン族がその頭を斬り捨てられ吹き飛びました。
その勢いに押されて中央の陣が縦に割れます。
立て直そうとするところにヨークたち7千のシグナリ族が襲い掛かりました。
ガミジン族中央の4千の陣は完全に崩れ、突破されました。そうなると左翼、右翼に広がっていた残りの6千は動きをとるのが難しくなります。
敵が右往左往している間にキリュウらはガミジン族の蟻塚の入り口を突破し、その中への突入に成功したのでした。
そのままヨークたち7千も突入します。
「入り口にシグナリ族を千ほど残して、外の六千を封じましょう。入り口の狭さから考えれば十分な数です」
ヒューイがすかさず指示を出します。
ヤンがここから向こうの巨大蟻はここに残るようにと、ジェスチャーで伝えました。
「なんだ?あの無数の穴は?」
ヨークが周囲の土の壁を眺めて声をあげました。
そこは大きな空洞で周囲は壁に囲まれています。右奥に先に続く門がありますが、閉ざされていました。
「これは、まさか、枡形!?」
ヒューイが周囲の造りを確認して驚きの声をあげました。
「枡形?何それ?」
他のメンバーには伝わっていません。
「と、いうことはあの無数の穴は、狭間では!?」
ヒューイからどんどん知らない単語が飛び出すので、ヨークもキリュウも首をかしげています。
「初めて蟻塚に入りましたが……これは完全に城ですね。これを落とすのは容易じゃないですよ……」
ヒューイがひとりで納得しているので、キリュウが尋ねようとしたとき、ヒューイの言う「枡形」「狭間」とは何のかを身をもって知ることになりました。
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なんでだろー?なんでですかね??




