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第1章 27・溢れる涙

第1章 27・溢れる涙


 「チィッ!あやつめ、また抜け駆けか!」

そう叫び、ウィン姫は首を落とした超巨大蟻バ・アントから飛び降りました。

 颯爽と着地し、駆けるつもりでしたが、バランスを崩して膝をつきます。


 「姫様、お怪我が!」

そこに王国軍将校ラムサスが駆け寄ります。

 「このような傷たいしたこともない。 ナターシャ、ナターシャはどこだ……」

ラムサスを振り切って立ち上がり、愛犬の名前を呼びます。が、いつもならすぐに駆けてくるナターシャの姿はどこにもありません。

 

 「ナターシャ……」

そう呼ぶウィン姫の息が荒くなり、フッと横に倒れました。間一髪、ラムサスが抱きかかえます。


 「姫様、こ、これは!?」

ウィン姫の顔色が真っ青なのを確認し、ラムサスが深刻な表情で尋ねました。明らかに疲労感だけではありません。


 ウィン姫の答えを聞く前に、

「ど、毒……」

ラムサスがその症状に気が付き、ウィン姫の左腕の傷口に口を当てます。そこから血と共に何かを地面に吐き出しました。


 「やつめ、触覚に毒を持っていたとは……不覚であった……」

そう呟くウィン姫の意識はもう失いかけています。すでに全身に超巨大蟻バ・アントの毒が回ろうとしていました。



 一方、ホーリーはレーザー砲で、主力である巨大蟻アントの群れ8万の左翼を襲撃していました。

 手元のスマホに映された地図マップを確認しながら、赤い光線レーザーを放ちます。地図マップ上の青い点周辺を攻撃しているのです。

 さらに混乱に乗じて潜入したナターシャが深緑の宝玉を探し出す計画でした。


 ギギギギギギギ……


 巨大蟻アントの悲鳴と赤い光線レーザーで飛び散る四肢、吹き飛ぶ地面。

 一瞬で何千匹という巨大蟻アントが死んでいきます。


 (マリエッタ、おかしいよ。こいつら抵抗してこない。どうして?)


 ホーリーは頭の中でスマホアプリのマリエッタを呼びます。


 【すぐに答えがわかります。改めて確認します。決して情に流されることのないようにお願いいたします】


 (すぐに答えがわかるって……あれ、なんだ?)


 赤い光線レーザーで吹き飛ぶ炸裂音が聞こえてこなくなりました。

 確かに赤い光線レーザーは発射しています。


 夜の暗闇は月に照らされていましたが、立ち上る砂煙で視界が遮られていました。


 (何かいる……)


 砂煙の向こうに何かがいます。ホーリーは背筋が凍りつくような感覚に襲われました。


 (な、なんだ……?)


 不安にかられ、レーザーを一点に集中します。砂煙に吸い込まれていく赤い光線レーザー……しかし手ごたえがないのです。


 砂煙が晴れてきました。


 同時にやや月にかかっていた雲も晴れました。


 月光の下に、遥かに巨大な蟻がいました。


 ウィン姫が戦っていた超巨大蟻バ・アントよりもさらに大きな体躯。腹が異常に膨らんでいました。破れていますが、背には羽があります。


 「マリエッタ!女王蟻クイーンか!?」

ホーリーはそう叫びました。叫びながらもレーザーを発射し続けます。しかし赤い光線レーザー女王蟻クイーンに当たる手前でかき消されていました。


 【ホーリー様、そうです。あれがガミジン族の女王蟻クイーンです。よわい300年と言われています】


 300年もの長きに渡り、何億という卵を産み、何千という女王蟻選別を通過してきたという生きる伝説レジェンドです。


 【ウィン姫と一騎打ちを繰り広げているのは、おそらく女王蟻クイーンの最も信頼の厚い将軍蟻です。こちらは紛れもない女王蟻クイーン巨大蟻アントLV152です。スキルの念力サイキックは限界値を突破しLV95.これはすべての攻撃を遮断する魔法盾マジック・シールドとなっています。出力180ワットのレーザー砲をもってしても突破することはできません。強力な結界が張られているのも同然です】


 「それじゃ、このレーザー砲じゃ倒せないってこと?」

ホーリーは絶望にかられたような声をあげました。



 【ご安心くださいホーリー様。倒す方法があります。そのまま女王蟻クイーンを避けて、左翼の巨大蟻アントを狙うのです。一斉に薙ぎ払ってください。地図マップ上の黄色の点はナターシャですので、必ずその場所と宝玉の場所は避けるようにしてください】


 マリエッタの指示に従って立ちふさがる女王蟻クイーンを避けて、その左奥の巨大蟻アントの陣を狙います。


 「マリエッタ、何かおかしいよ。さっきは暗闇でよく見えなかったけど、あそこにいるのは巨大蟻アントじゃない」


 【ホーリー様、時間がありません。撃ち込んでください】


 女王蟻クイーンの背後の集団は、巨大蟻アントの幼虫ばかりです。

 見渡すと、他にも卵を抱きかかえて自らの身体からだを盾にしようとして動けぬ兵隊蟻ばかり。子どもの蟻たちは怯えて自らの触覚を震わせて鳴いています。


 「だから抵抗してこないのか……マリエッタ、僕に子どもたちや幼虫たちを殺せと言っているの!?」

ホーリーのレーザー砲を持つ手が震えています。急激に高まる罪悪感と込み上げてくる怒りと悲しみ。

 

 【女王蟻クイーンは今は動けません。背後の仲間を守るために自らが盾となっているのです。ホーリー様、撃ってください。情には流されぬとおっしゃったはずです。このままでは時間切れになります。ガミジン族の蟻塚を攻めた味方の多くが死ぬことになります】


 「くっそー!!!」

ホーリーはわめきながら左奥を狙ってレーザー砲を発射します。


 しかし赤い光線レーザーはまたも途中でかき消されました。


 【右奥も狙ってください。攻撃を分散させるのです】


 マリエッタの指示に従い、ホーリーは右奥にも横に薙ぎ払うようにレーザーを発射します。


 ほとんどのレーザーがかき消されるなかで、最も右端を狙ったレーザーはそのまま通過して、そこにいた幼虫たちを撫で斬りにしていきます。


 ギギギギギギギッギギギギギ……

 

 女王蟻クイーンの咆哮が夜空一杯に響き渡ります。


 【もう一度左奥へ】


 左奥めがけて横に薙ぎ払うと、先ほどよりも多くの範囲にレーザーの攻撃が届きました。兵隊蟻たちが抱えた卵ごと両断されていきます。


 【今です。結界が広範囲にわたり過ぎ、薄くなっています。女王蟻クイーンを狙ってください】


 「……」

ホーリーはもうなんと叫んでいいのかわからなくなっていました。自分の行いが善なのか悪なのかも。それでもホーリーは女王蟻クイーンに狙いを定めてレーザーを発射します。


 ギギギギギギギギイギギイイギ……


 女王蟻クイーンの大きく膨らんだ腹を赤い光線レーザーが貫きました。


 青い液体が地面に飛び散ります。右足も切断されて、女王蟻クイーンは傾いて倒れました。衝撃で地面が揺れます。


 【左奥、右奥に撃ち分けてください】


 「ま、まだ、まだやるの、マリエッタ?」


 【ホーリー様、情を捨てるのです】


 ホーリーが左、右と横に薙ぎ払っていくと、もうさえぎるものはほとんどありません。

 どんどん幼虫や卵が切り刻まれ、吹き飛んでいきます。


 それでも女王蟻クイーンは自分の周辺に隠れる子どもたちを守ろうと、必死の思いで念力サイキックの盾を張ります。女王蟻クイーンの力が急激に低下しているからなのか、確実に結界の範囲が狭まっています。


 女王蟻クイーンの周辺以外の左翼のほとんどが死に絶えました。


 ウォーーーン!!


 ナターシャの遠吠えです。


 ナターシャの姿が見えました。口には確かに何かを咥えています。


 【深緑の宝玉に間違いありません。ナターシャが戻り次第、残りを一掃してください。女王蟻クイーンはまだ動けません。今ならば楽にとどめを刺せます】


 ナターシャの帰還を確認し、ホーリーはほっとしながらも、こども蟻や幼虫の万を超える遺骸から目を背けることはできませんでした。


 何かが自分の胸の奥を切りつけます。

 

 ホーリーの両目からは涙が溢れ出ていました。


今日の北海道も雪は凄かったー。

昨日も雪かきをしたのに、今日も同じ分だけ積もりました。

Ahoo …… でも午前3時に更新しますよー!!

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