第1章 25・たったひとつの打開策
第1章 25・たったひとつの打開策
(マリエッタ、ウィン姫と相手の分析はどう?勝てそうかな)
ホーリーは頭の中でスマホアプリのマリエッタに尋ねました。
【以前お伝えした通りにウィン姫はLV78の魔法剣士マスターです。防御力が120から105に下がっていますが、その分、速さが88から95に上がっています】
胸当てを外して下着同然の格好になったのが原因でしょう。
(相手はどれくらいの強さ?)
【巨大蟻LV88、生命力65 体力100 攻撃力85 防御力95 速さ52 知力31 魔力50 神経毒の特殊能力をもっています スキルは念力LV24です】
(比較するとどうなの?ウィン姫の方が上?)
【相手の巨大蟻は相当な強さです。王国軍正規騎士50人分に匹敵します。ただ、ウィン姫の戦闘能力は人間のLVを遥かに超越しています。計算上では75.8%の確率でウィン姫の勝利です】
わずか14歳の少女がそこまで強くなれるとはとても信じられません。マリエッタの分析を聞いても、ホーリーの不安は拭いされませんでした。しかも問題は他にもあります。
(召喚した装備の残り時間を教えてもらえる?)
【ワープ専用小型車は残り召喚ターンが15分です。TORの医療薬が残り40分。女王蟻のフェロモンスプレーが残り65分。THELのレーザー砲が残り100分となっています】
(しかも車は故障したままなんだよね。そうするとガミジン族の蟻塚まではどのくらいの時間がかかるの?)
【小型車の現在の最高速度を維持できたとして40分ほどです。しかしエンジンの状態は悪化していますので、60分以上かかる可能性もあります。どちらにしてもあと15分で召喚ターンですから目的地までは車では到達できません】
(でもマリエッタ、その計算でいくと、シグナリ族の7千匹やヨークさんたちはまだガミジン族の蟻塚には到着していないことになるね)
【おそらくまだだと思われます。ただもう間もなくでしょう】
(この一騎打ちが終了して、残りを全部一層してから徒歩でガミジン族の蟻塚に向かうとなると、100分どころじゃ済まないってことだよね)
【ガミジン族の蟻塚に到着した頃には、すべての魔法具は召喚ターンをむかえてしまっていることでしょう】
(フェロモンスプレーどころか、このレーザー砲も使えないってことか……参ったな、どう考えても間に合わないよ……ガミジン族の蟻塚にはまだ5万近くの巨大蟻がケリーさんを囮にして待ち伏せしているっていうのに……)
【ガミジン族の作戦通りですと、ある程度戦った後に、兵隊蟻たちはわざと巣を捨ててこちらに撤退してくるつもりでしょう。あくまでも人間に蟻塚を襲撃されたという事実を残しておきたいわけですから。それでもギリギリまで抵抗してくるでしょうから、こちらの兵力の8割近くは死傷することになります】
(僕がその場所にいないからフェロモン入りのスプレーも効果がないからね……。出来る限り損害を抑えたいな、何かいい手はない?)
【……実はひとつだけ打開策があります】
(あるんだ!それを先に言ってよマリエッタ。どうすればいい?この一騎打ちは妨害したほうがいい?)
【この策を成功させるためには条件があります】
(条件?改まって何だい?)
【ホーリー様が情けをかけないことです】
(はあ?情けをかけない……まあ、それどころじゃないからね。容赦なくいくよ)
【でしたら、ぜひ実行に移していただきたいことがあります。一騎打ちの最中で構いません。敵陣に攻撃を仕掛けます】
(うわー、それはウィン姫が後で烈火のごとく怒りそうだな。一騎打ちに水を差したとかなんとか言って……)
【直接的に一騎打ちの邪魔をするわけではありませんから問題ないのでは】
(だと、いいんだけど。それで、敵陣を攻撃してどうするの?敵陣を殲滅して、一騎打ちのウィン姫だけを置いてガミジン族の蟻塚を目指すとか?)
【おそらく敵陣を壊滅させた時点でワープ専用小型車の召喚ターンになります。そうなるとどんなに急いでも間に合いません。ガミジン族の蟻塚に到着した頃には、あちらの戦闘の決着はついていることでしょう】
(いや、それじゃ、意味ないよ。なのに敵陣を急いで攻撃する意図は何?)
【私が示す地図をご覧になっていただきたいのですが……】
ホーリーがポケットからスマホを取り出し、地図を確認します。
【以前にお伝えした通りです。青い点があります】
(そう言えば、トリミング王国の地下でそんな話をしていたね。青い点は……なんだっけ?)
【宝玉の場所を示しています。深緑の宝玉です。効果はスマホの充電の他にアプリのバージョンアップです。新緑の宝玉の効果は召喚できる魔法具の数をひとつ増やすことができるのです。蟻塚の青く深くに隠されていたのが、今回の巣替えでここまで運ばれています】
(えー!!ラッキーじゃん。しかも凄い効果。じゃあ、召喚できる数は4つまでだったのが5つまでになるの?)
【そうなります。そうすれば直ちにワープ専用車を召喚し、ガミジン族の蟻塚に向かえばあちらの戦闘開始に間に合います】
(凄い。ナイスアイディアだよマリエッタ。それでいこう!何でそんないい案をもったいつけてたの?)
【ホーリー様のご覚悟が必要だからです】
(覚悟?大丈夫、どんなことがあっても情けなんてかけないよ。情けは人の為ならずって言うしね)
【青い点の位置を確認してください。かなり左翼側です。この周辺をレーザー砲で一掃します。ただ青い点の近くは絶対に外してください】
(え!?どうして?)
【レーザーの威力で宝玉ごと破壊しかねません。あくまでも周辺を攻撃し、隙をみて宝玉を奪います】
(隙をみて奪う?レーザー砲を使用しないで?)
【ここは犬の敏捷性を利用しましょう】
犬とは、ウィン姫の愛犬ナターシャのことです。
(僕が攻撃している間にナターシャに宝玉を奪わせるの?)
【はい。以前使用した深紅の宝玉の破片をお持ちのはずです。それを見せて、同じ物を探させます】
確かに二つに割れた深紅の宝玉は何かに使うことがあるかもしれないと、ポケットに入れて持ってきています。
【時間がありません。決断を急がれた方がよろしいかと】
ホーリーは、主人であるウィン姫を心配そうに見つめてじっとしているナターシャを見ました。
確かに悩んでいる時間はないのです。ここはナターシャの力に頼るしかありません。
ホーリーは深紅の宝玉の破片を取り出して、ナターシャを呼びました。
文章評価、ストーリー評価いただいている方々、本当にありがとうございます。
継続への意欲UPになっています!!
……もしよろしければご感想もいただければ……ずうずうしいですね笑
明日もぜひ午前3時にお会いしましょう!!




