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第1章 23・2万の軍勢

第1章 23・2万の軍勢


 100年前に巨大昆虫ムシら他種族800万の軍勢を、たったひとりの人間が一撃で退けたという伝説があります。その人間のお陰で今日のギミリスト連合国、つまり人類は存続できたのでした。


 人間は他種族にとっては「餌」でしかありませんでした。か弱く、それでいて絶品のご馳走です。ただ、稀に力を持った人間もいます。他種族と互角に渡り合える人間です。もちろんその数は圧倒的に少ないものですが……。


 そして、このか弱き人間の中から、ごくごく稀に、何百年に一度ほどの割合で、異常な強さをもった者が現れます。その力は他種族をことごとく凌駕するものだったと伝承には残っていました。


 眉唾だと信じる者も少ないこの話が、この世界の伝説です。


 伝説の人間が現れると、世界のパワーバランスが大きく崩れるだけでなく、混乱と混迷、虐殺と殺戮の暗黒の時代が訪れると言われていました。


 女王蟻クイーンの不安はただひとつ。


 それは、伝説の人間の登場でした。


 もし、今、この先に待ち構えている人間がそうだとしたら、10万の軍勢などなんの脅威にもならないでしょう。ここにいる幼虫も卵も、そしてガミジン族自体が滅ぶことになるのです。

 3000年の歴史を誇るガミジン族が自分の代でついえることになるのかもしれないと考えると、返す返すも、なぜ早く人間たちを滅ぼしてしまわなかったのかという後悔に女王蟻クイーンは襲われます。


 すべては、巨大蟻アントの国を統率するスピナ族が、かたくなに人間への姿勢を曲げないこと。これが原因でした。


 『同族での戦いはいくらでもするがいい。その代り、人間の領土を侵すことは固く禁ずる』


 100年前に締結された和平条約を守ることを、スピナ族はじめ多くの部族が最優先してきました。

 結果、食料に乏しくなっても、人間を襲うことをせず、同種の巨大昆虫ムシを襲ったり、同族の巨大蟻アントの蟻塚を襲い、その幼虫や卵を食べることで命を繋いできたのです。


 シャナムの国をはじめ、ガミジン族のように隠れて人間を餌にしてきた例もありますが、あくまでもコソコソとばれないようにしてきたのです。時には威圧して生贄として捧げさせたり、物々交換の交渉条件として僅かな人間を差し出させ、食べてきました。


 すべての人間を餌にし、絶滅させれば、伝説の人間など現れることもなくなり、種族が滅ぶ心配もなくなる。いくらガミジン族がそう提唱しても、その話に耳を傾ける部族は少数でした。圧倒的な軍事力を有するスピナ族の意向に逆らえなかったからです。


 人間界を攻める口実がほしい。


 その一念で、今回の策略を実行に移しました。ガミジン族の3000年の長きに渡って築き上げてきた伝統ある蟻塚を放棄してまでです。

 人間の女ひとりを囮とし、自分たちの巣を攻めさえ、蟻塚が崩れ去る。

そんな人間に侵略された事実があれば、必ず日和見の部族や巨大昆虫ムシたちを動かすことができます。

 その勢力は、スピナ族の軍事力を遥かに凌ぐことになるでしょう。

 

 巨大昆虫ムシたちの国を指揮する発言権を、ガミジン族は有することになるのです。


 よほどのことがない限りこの計画が頓挫することはないはずでした。


 しかし今、唯一、恐れていた事態が起ころうとしています。


 伝説の人間が本当に存在するのであれば、この作戦は見破られ、逆手に取られるかもしれないのです。

 そうだとすれば、ガミジン族は自ら滅亡への道を歩んでいることになります。



 先陣の2つの部隊が、シグナリ族の蟻塚入り口に殺到します。


 入り口にはひとりの人間。トリミング王国の地下下水道地帯で、精鋭一万をあっさりと撃退した人間でした。


 兵隊長たちはその脅威を把握していましたが、ここまできて尻尾を巻いて逃げ出すわけにはいきません。

 兵隊蟻の使命は、己の命をなげうってでも種族繁栄のために尽くすことです。例え、万の死骸を積み上げようとも、この蟻塚は占拠しなければならない。その想いだけです。


 突撃以外の選択肢はないのです。


 2部隊、8千の巨大蟻アントがあごを震わせながら、地面を揺らし、ひとりの人間に襲い掛かります。溢れ返る圧倒的な質量が大波となって人間を覆い尽くします。


 すると、その人間から何かが放たれました。


 それはガミジン族の目のような赤い光の線でした。


 見たこともない赤い光の線が、先行する巨大蟻アントたちに向けられます。


 途端に大地が震え、地面の土や岩と一緒に巨大蟻アントたちが天高く吹き飛びました。すぐに雨のようにその残骸が降り注ぎます。落ちてきた巨大蟻アントたちは、みな細切れのバラバラな状態です。


 赤い光はどんどん2部隊を襲います。


 至る所で土煙と巨大蟻アントの青い血が巻き上がっています。陣形はもうバラバラです。降り注ぐ血の雨を縫って、それでも兵隊蟻は進んでいきます。

 しかし赤い光は正確に近寄る巨大蟻アントたちをバラバラにしていきました。


 2部隊の兵隊長ともに死を覚悟し、残った兵隊蟻と突撃をかけます。

 少しでも隙を作れれば、背後の3部隊が急襲する予定でした。


 しかし、背後からも戦闘の喚声が聞こえ始めたのです。


 伏兵でした。


 左右から3部隊に襲い掛かっています。数はわかりません。


 さらに、赤い光の線は2部隊だけでなく、背後の3部隊にも襲い掛かります。


 2万の大軍は見る間にその数を急激に減らしていきます。

 しかし誰も撤退の指示は出せません。

 どの兵隊長も認識しているからです。


 生き残るためにはここを突破するしかないことを。



 激闘と呼ぶには、一方的な殺戮の嵐。


 2万の軍勢は陣を崩され、敵が誰でどこにいるのかもよくわからず、徹底的に殺戮されていきました。


 強烈な殺意を込めた唸り声を発するだけの抵抗しかできず、仲間たちは死んでいきます。

 

 5匹の兵隊長も他の兵隊蟻同様の憂き目に遭って、無残な亡骸を晒していました。


 

 わずか10分あまりで、巨大蟻アント2万の軍は壊滅しました。


北海道は今日もまた雪ですねー。

今年はどうやら多そうですね。

また、明日の午前3時にお会いしましょう!


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